船木義勝氏(みちのく考古学研究会代表)からお手紙と論文を頂戴した。
直接の面識はない。
お手紙によると,朝鮮半島にある白頭山の関係を調べていたら,このブログ内にある下記の記事をたまたま目にしたのだそうだ。
朝鮮半島:白頭山(長白山)の歴史上の火山活動等に関する資料
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/natural_disaster/2012/08/post-ac88.html
船木氏は,明治大学の出身で(考古学専攻),現在,北東北古代集落遺跡研究会を組織し,白頭山の火山灰が住民に与えた影響等について研究しているとのこと。
そして,船木氏は,私が白頭山苫小牧火山灰(B-Tm)に関する資料を集めているのではないかと推測し,船木氏の論文を含め,貴重な論文多数を送ってくださった。一気に全部読み終えたのので,この記事を書いている。
船木氏の論文としては,下記のものが含まれていた。
火山噴火災害と「天慶出羽の乱」・秋田考古学55号23頁(2011)
「堀と土塁」結界表現の諸相-青森市高屋敷館遺跡の基本的考察-・秋田考古学53号23頁(2009)
白頭山 (長白山) 10世紀噴火がもたらした「天慶出羽の乱」 ・みちのく考古学40周年論集28号(2011)
これらの論文の中には,私が長年疑問に思っていた歴史上の謎の一つ「平将門はなぜ朝廷に歯向かい,反乱を起こしたのか?」を考える上で非常に参考になる記述も含まれている。
船木氏は,私が法学部の教授でありながら,火山や地震に関しても興味をもっていることにとても驚かれたようだ。
もちろん,東日本大震災がなければこのブログが生まれることもなかっただろう。
大地震によって自宅の一部が破壊され,部屋の中はめちゃくちゃ,大事に育てていた貴重なランを何鉢か失ってしまった。
そのショックはちょっと表現の方法がない。
電気もガスも使えない状態の中で震えながら,食料やガソリンも欠乏し,不安な夜を幾晩過ごしたことだろう。それでも,巨大津波に襲われた地域の方々と比較すれば,ずっと安全な状態だったかもしれない。しかし,福島第一原発が爆発した。
以後,私は,あまり遠慮しないでものを言い,書くようになった。
それ以前の時点でも原発や地殻変動のことなどには強い興味をもっていたし,自分なりに調べていた。しかし,福島第一原発事故以前の時点では,原発に対して批判的な言動や,巨大地震・巨大津波の可能性を示唆するようなことをちょっとでも口にすると,たちまち冷や飯食いにされてしまうのがオチだった。私も人の子であり,そんなに立派な人間ではないので,そういったことについては慎重に発言を避けていた。
しかし,大震災と原発事故の発生によって,何かがふっきれたような気がする。
現在,私は,「所与の前提」が本当に確実なものであるのかということに強い興味をもっており,そのような疑問を検証するために適していると考える素材を選んで論文を書いている。今年は,大きな論文を4つ書いた。
情報セキュリティの世界では,常識の一つとして,情報システムを格納する施設や設備の物的安全について述べられるのが普通だ。しかし,そこでいう物的安全性の前提となる「地球」それ自体について,自分はどれだけのことを知っているのだろうか?
プレート理論は知っている。しかし,プレートそれ自体について,疑問の余地がないくらい完全に知り尽くされているのだろうか?
ここでも「所与の前提」の確実性に疑問が生ずる。
疑問が残る以上は,誰がどうやっても「確実な管理策」など構築できるはずがないではないか!
そうした基本的な問題全てに目を瞑り,だらだらと何となく仕事を続けてきたのが現実の日本の姿なのだろうと思う。稀にまともなことを発言する者があっても,確実に冷や飯食いとなり,世間から葬り去られる・・・
私は,あと何年生きていられるのかわからないが,生きている間は,こうした問題について真正面から取り組み続けたいと思う。
地殻変動に関する研究は,地球に生きる生命体の一種であるヒト(ホモサピエンス)の一員として,当然,誰でも徹底的にしなければならない研究のひとつだと信じている。ただ,人にはそれぞれ向き・不向きがあるし,好奇心の対象は各人ばらばらなので,私の問題意識を他人に押し付けるわけにもいかない。
けれども,たとえ一人ぼっちであったとしても,私は,現在のような生き方を続けようと思う。
そうしなければ真理に近づくことなどできない。
私が後世の人々に残すことのできる「何か」があるとすれば,それは,「そのための努力をし続けた愚か者がいた」という事実を示すことくらいなものだろうと思っている。
以上が,船木氏の疑問に対する回答だ。
船木氏から送っていただいた論文はどれも非常に優れたもので,とても勉強になった。
更に勉強を重ねたいと思う。
論文を送ってくださった船木氏には心から感謝したい。
日本は,日本だけで孤立しているのではない。丸い地球の上で繰り返される作用・反作用の中で,大きく・小さく揺れ漂いながら存在している。漂っているだけなのかもしれないが,私を含め日本人が現にその上で生きている。
そして,人間が人工的に想定している国境とは全く無関係に,地球はやはり丸く,連続している。他国と自国とが物理的に相互に無関係であるなどということはあり得ない。
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