2019年1月10日 (木曜日)

訳語

かなりの苦労を重ね,多数回にわたる関係者との意見交換を踏まえつつ,EUの個人データ保護法令の参考訳の精度を高めてきた。

結果として,従来存在していた訳語(正確には,当該用語の理解)に多数の誤りがあることを自信をもって述べることができる段階に至ることができた。伝統的な「国際法」を基盤とするEU法研究は根本的に誤りであり,あくまでもEUの基本諸条約,EUの法令,構成国の国内法令及び欧州司法裁判所の判例法を基盤とする比較法研究としてのEU法研究でなければならない。

これまで重ねてきた研究成果は,紙媒体の「法と情報雑誌」のみで提供してきた。2018年12月で通巻30号となった。法と情報雑誌は,国立国会図書館に納本しているほか,残部がある限り,法と情報研究会の公開研究報告会の会場において,無償で配布している。

紙媒体の雑誌のみで配布しているのは,それに収録されている参考訳の中にまだ研究途中の中間報告的なものが含まれており,その段階でWeb公表すると,それが確定訳であるとの誤解を招き,未確定段階の状態のもののままで流通してしまう危険性があるからである。

その分野の専門研究者であれば,私の参考訳を読み,参考とした上で,自らの判断により,私の見解が誤りだと判断する部分については自己の見解に基づき適宜取捨選択した上で,更に研究を進めることができるであろう。しかし,専門研究者でない読者は,そうではないかもしれない。

しかし,法情報学を標榜する研究者として,それに適するまでに精錬度を高めたものについては,その研究成果をWeb上でも公表すべき時機が近づいてきていると判断した。

当面の予定としては,昨年採択された規則(EU) 2018/1725の参考訳を法と情報雑誌の4巻1号(通巻31号)に掲載して刊行した後,時機をみて,Web上でも公開することを考えている。

この規則(EU) 2018/1725の参考訳は,欧州委員会からの提案書と法案の翻訳及び関連するEDPSの意見書等の文書の翻訳から始め,関連するEUの多数の法令を翻訳し,関連する構成国の法令及び欧州司法裁判所の判例法も可能な限り調査し,各種資料を読んで考え,改正前の規則(EC) No 45/2001と関連する論文を書いて自分の理解を確認しながら研究を重ねてきた上での研究成果物である。

なお,紙媒体の「法と情報雑誌」は,今後も継続して刊行するが,その中からWeb公表しても良い段階まで精錬されたと判断したものについては,適宜,Web公開する方針に改めようと思う。

この段階に至るまでの間,私の研究を見守り,雑誌の印刷費を含め研究資金の確保のために御助力を賜った方々には心から御礼を申し上げる。

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2018年11月16日 (金曜日)

井上寿一『機密費外交 なぜ日中戦争は避けられなかったのか』

奥付の発行日は2018年11月20日と印刷されているのだが,たまたま書店でみかけたので購入し,早速読んでみた。

 井上寿一
 『機密費外交 なぜ日中戦争は避けられなかったのか』
 講談社現代新書(2011年11月20日)
 ISBN-13: 978-4065138519

この書籍は、小山俊樹氏の研究業績に負うところの非常に多いものであるとはいえ,一般向けに分かりやすく書かれた書籍である。

某社の高校向け社会科教科書によって「脳が歪められた」という自覚のある人には特にお勧めの書籍だと言える。その自覚が正しいということを確認し,納得できるだろうと思う。

今後,この分野の研究が更に広がることを期待する。

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2018年11月 1日 (木曜日)

Andrew V. Edwards, Digital Is Destroying Everything: What the Tech Giants Won't Tell You About How Robots, Big Data, and Algorithms Are Radically Remaking Your Future

下記の書籍をざっと読んだ。

 Andrew V. Edwards
 Digital Is Destroying Everything: What the Tech Giants Won't Tell You About How Robots, Big Data, and Algorithms Are Radically Remaking Your Future
 Rowman & Littlefield (2018)
 ISBN-13: 978-1538121757

日本国内においても既に類書が多数あるけれども,ここまで徹底的にネガティブな見解を貫徹している書籍はそう多くないと思う。その分だけ誇張の部類に属する要素が含まれていることに留意しながら読まなければならない。

経済界と一部の研究者にとっては,「敵だ」と感ずる内容かもしれない。

しかし,現在の状況を単純に延長した場合,この書籍に書かれている近未来像は十分にあり得る近未来像なので,突飛な本でもとんでも本でもないと思う。

より合理的な思考を構築し続けるためには,より明確なアンチテーゼを常に吸収し,考察する努力を継続する必要があり,そのような努力を怠る経営者や研究者は,必ず(比較的短期間の間に)衰滅する。

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2018年10月31日 (水曜日)

大山喬平・三枝暁子編『古代・中世の地域社会-「ムラの戸籍簿」の可能性』

下記の書籍を読んだ。

 大山喬平・三枝暁子編
 『古代・中世の地域社会-「ムラの戸籍簿」の可能性』
 思文閣出版(2018年9月20日発行)
 ISBN-13: 978-4784219469

非常に勉強になった。

良書だと思う。

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2018年10月16日 (火曜日)

ENISA: Annual Report on Trust Services Security Incidents 2017

下記のところで公表されている。

 ENISA publishes annual report on trust services security incidents 2017
 ENISA: October 8, 2018
 https://www.enisa.europa.eu/news/enisa-news/enisa-publishes-annual-report-on-trust-services-security-incidents-2017

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2018年9月25日 (火曜日)

法と情報雑誌第3巻の正誤

正誤表を更新しました。お詫びして訂正します。

  http://cyberlaw.la.coocan.jp/Documents/Correction%202018.pdf

なお,法と情報雑誌に関する最新情報は,引き続き下記のサイト上で掲示します。

  http://cyberlaw.la.coocan.jp/index2.html

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2018年9月21日 (金曜日)

竹花和晴『グラヴェット文化のヴィーナスの像:旧石器時代最大の美と知のネットワーク』

下記の書籍を読んだ。とても勉強になった。

 竹花和晴
 グラヴェット文化のヴィーナスの像:旧石器時代最大の美と知のネットワーク
 雄山閣(2018年6月25日)
 ISBN-13: 978-4639025795

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2018年9月 5日 (水曜日)

Regenbogenとは?

過日,ある書籍に関するAmazonのネット書評に「Regenbogen」というハンドルネームで参考になるコメントが書かれているということを某氏から教えていただいた。その某氏によれば,このRegenbogen氏とは,夏井教授のことではないかとの風評があるとのこと。

しかし,Amazonにおける私のハンドルネームは全く別のものであり,しかも,過去長い間,Amazonに書評を書きこんでいない。

とんでもない誤解があるものだと思い,Amazonのサイトにアクセスして読んでみた。

そのRegenbogen氏の「原文にあたるべきだ」との旨の意見には私も全く賛成であり,異論はない。

(私が作成・公表している訳を含め)どんな訳であっても,所詮,訳は訳なので,正確を期すべき場合には,原文を丁寧に精読する以外に良い方法がない。

ちなみに,当該の書籍を三省堂の本店でみかけて立ち読みしてみたのだけれども,費用対効果(?)を考慮し,個人所有書籍としては購入しなかった。

それにしても,Regenbogen氏とは一体どなたなのだろうか?

「Regenbogen」とは,ドイツ語で「虹」のことを意味する。

英語では「rainbow」となる。

かつて『レインボー戦隊ロビン』という作品があったが,その作者(石ノ森章太郎氏)ではないということだけは確実だ。映画『オズの魔法使』でジュディ・ガーランドが歌っていた「虹の彼方に」とも関係はなさそうだ(笑)

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2018年9月 2日 (日曜日)

新保史生編『JIS Q 15001:2017 個人情報保護マネジメントシステム 要求事項の解説』

過日,日本規格協会から下記の寄贈を受けていたのだが,新保先生からの寄贈ではないかと推察していたところ,8月31日に開催された法と情報研究会の会合の折に新保先生から直接にその経緯を伺うことができた。新保先生が全部自費により著者購入した上で,知人等に寄贈したものということを確認できた。ありがたく頂戴することにした。

 新保史生編
 JIS Q 15001:2017 個人情報保護マネジメントシステム 要求事項の解説
 日本規格協会(2018年7月31日)
 ISBN-13: 978-4542306776

一部に極めて悪質なデマを流布する者があるようだが,遺憾なことだと思う。この種の書籍では,印税収入はほぼゼロである。

この書籍で解説されている改正JISは,事実上,新保先生が1人だけで夜も寝ずに苦心して準備作業をし,関係する国際組織との根回し等も行ってきたものだ。ところが,知っている人はよく知っている経緯により,当初案とは異なる不純な要素が混入することになった。その当時における新保先生の落胆が著しく,はたから見ていて気の毒としか言いようがなかったのだが,私としてはこの作業に何も関与しているわけではなく,特に意見をはさむような立場にもなかったので傍観するしかなかった。

あくまでも一般論としては,「商人(あきんど)」というものは,営利のためには何でもやるえげつないものであるし,それに加担する「悪徳代官」のようなものは時代劇にだけ存在しているのではなく,現実にどの国のどの時代にも存在する。

しかし,新保先生は,そんなに弱くないので,今後,更に飛躍されることであろう。

なお,この分野におけるJISの専門家は新保先生だけであり,今回改正されたJISを正確に説明できるのも新保先生だけと言っても過言ではないので,肩書きにその旨を付す資格をもつのも新保先生だけだと評価しているが,現実には逆になっていることがなかなか興味深い社会の深層を表現しているのではないかと思う。

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2018年8月29日 (水曜日)

論文の価値

下記の記事が出ている。

 Social science has a complicated, infinitely tricky replication crisis
 ars technica: August 29, 2018
 https://arstechnica.com/science/2018/08/why-do-only-two-thirds-of-famous-social-science-results-replicate-its-complicated/

論文の数だけを評価基準とすることの愚は誰でも知っている。

それと同時に,優れた論文を多数公表することがいかに難しいことかについても,誰でもよく知っている。

それだからこそ,優れた論文を多数公表できる研究者は高く評価されるべきだと思う。

しかし,問題は,当の論文の真価を正確に評価可能な研究者が実際にはかなり乏しいということだ。特に,最も先進的な課題に関しては,当の論文を発表した者以外には全く理解できないことがしばしばある。このことも周知のことであり,特に数学や理論物理の世界ではそれが著しい。

他方において,全く無価値な論文を「無価値である」と評価することには様々な社会的困難が伴うことがある。

それゆえ,総合的に言えば,常に,世界的に有名な雑誌に掲載された論文が多いというだけでその論文投稿者が本当に優れた人材であるかどうかを確実に判定することはできないという結論になる。

当の論文が世間によって認められるかどうかは,かなり偶然的な要素によることが実際には多いが,それ以上に,内容を全く伴わない肩書きや経歴のようなものだけで内容まで評価されてしまうことのほうが多いから世間の評価なるものも全くあてにならないということを容易に知ることができる。

というわけで,真に創造的な研究者は,常に「孤高」であり続けるしかないというのが実情だ。

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