2017年2月19日 (日曜日)

季刊考古学138号 特集:弥生文化のはじまり

帰宅途中の電車の中で下記の雑誌を読んだ。

 季刊考古学138号 
 ISBN: 9784639024606
 http://www.yuzankaku.co.jp/products/detail.php?product_id=8334

古代に興味のある人であれば誰でも興味津々の話題だと思う。

どの論説も非常に参考になるもので,とても勉強になった。参考文献としてあげられている専門文献等を更に読んで勉強を深めようと思う。

(余談)

従来のような「全部朝鮮からの渡来人」のような単純過ぎ,かつ,特に明確な客観的な裏付けのない考え方は100%否定される・・・というのが現在の学術上の到達点だと考えるし,考古学の成果を前提とする限り,この結論が変更されることはあり得ないと思う。

私見では,古代の日本列島には現在のサモアの人々と同じような文化圏が土台にあり,そこにベトナム中部~中国南西部経由でわたってきた青銅器文化をもつ人々が支配階級として乗っかり,更に後代になって,鉄器文化をもった北方系の人々が朝鮮半島を通り過ぎて一気に南下してきたと考えるのが妥当ではないかと思う。しかも,青銅器文化は東アジアで独自に発展したものというよりも現在の中欧~東欧~北欧を含め,ユーラシア全体の大きな流れの中で理解すべきものだと考えている。特に中央アジアのバクトリアとその周辺の諸族との関係については,先入観や固定観念のようなものを全て排除して素直な目で見直すべきであると考えるし,考古学ベースの歴史学では既にそのような傾向を濃厚に示すようになってきている。

現代社会に形成された歪んだ民族主義のようなものは,遺伝子学上でも考古学上でも全く支持されないので,これまた廃棄されなければならない。「民族など存在しない」という前提で,生態学の知見を応用し,それぞれの環境に適応するために生活習慣や言語習慣等が細かく分化し,特化したものとなって,それが「民族」だと錯覚されてしまったまま今日に至っていると考えるのが妥当だと思う。客観的な種としての民族は存在せず,一定の文化現象だけが存在していると理解するのが正しい。

ダーウィンの理論の正しい理解によれば,環境に適応した最適化に向けて生物種が進化すると,個々の環境の相違に対応して種々様々な分化と多様化が発生するのが当然であり,「ある特定の社会システムに向けて単一的に最適化するように進化する」といったような唯物史観的な考え方が成立する余地は全くない。事実,生態学における研究成果は,本来の意味でのダーウィンの見解を支持するもので,単一的に最適化することはあり得ないという結果を明確に証明している。それを無理に(人為的に)単一的に最適化させようとすれば,「多様性」というフェールセーフ機能が損なわれてしまう結果,種としての人類は滅びることになる。

良いことも悪いことも,特定の環境条件の下での評価に過ぎないので,環境条件が変化すれば良いことと悪いことの判断基準も大きく変動することになる。その意味で,種々雑多な人々が日々いがみあいながら暮らすことのできる社会が最も幸福度の高い社会だということになるのではないかと思う。

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ゼミ生の投稿論文が優秀賞

私のゼミでは,ゼミ生に論文を書かせ,雑誌に投稿することを義務づけている。卒業論文の代わりになる論文を共同で作成させるということを目的としている。

楽して卒業してもろくなことがないので,苦労しても学生の間に学べることは学んだほうが良いと考えているし,自分の考えをまとめて文章にする訓練もさせておいたほうが良いと考えている。

学生達は,前期(春期)に各自で研究した成果をまとめたレポートをもとに,後期(秋期)では1本の論文にまとめなおすという共同作業をし,それを通じて,社会に出てからの共同作業のための練習をする。

私は,指導教員として,内容に不満足な点があっても口出ししたり添削したりは一切せず,よりよく考えるためには何を調べ,何を読むべきかについてアドバイスだけ提供するという方針でやってきた。

2016年度の投稿の審査結果について本日の教授会で報告があり,ゼミ生の投稿論文が優秀賞に選ばれたことを知った。

学生たちの研究成果を認めてもらうことができ,私の責任を果たすことができた。素直に嬉しい。

  自動車の自動運転に関する法的問題-製造物責任の観点から-
  唐亀侑久(ゼミ長)
  井上優哉
  馬場健志郎
  須藤美有(春期のみ・秋期はスウェーデン留学)

この論文は,法学会誌に掲載される予定。

(余談)

優秀賞を受賞すると,副賞として一定の金員が授与される。

その資金は,大澤芳秋氏という篤志家の方からの寄付金によっている。何ともありがたいことだと思う。

入賞し,賞金を受けることについて,学生達の努力と事情を知らない人々からは「賞金で宴会でもやるのか」とからかわれることがある。

しかし,この賞金は,学生が受領すべきもので,私はただの1円ももらっていない。

事情を全く知らないのに,一体どういう神経をしているのか,自分の著しく低劣なレベルで他人を評価してほしくないと思うのだが,人間関係を重視し,「この金額では,銀座で豪遊は絶対に無理です」と言って笑って済ませることにしている。

しかし,今回の学生は,内外の文献を調べるために,受賞により得る金額よりもはるかに高額の支出を既にしている。

「本当に学問をしたいのであれば,身銭をきっても学問をする」というのが学問の本来の姿なのだが,学生にそれを強いてしまっているのは私の資金不足によるものなので,学生にはすまないと思っている。

そういう事情があるので,受賞により得る賞金を考えても,今回の論文作成の収支決算は,明らかに大幅な赤字になっていると私は評価している。

その学生達の経済的な負担は,受賞という名誉によって購われたことになるだろう。

どの学生も協力してこの論文を仕上げたのだが,特にリーダーとして頑張り続けた学生は,非常に成績優秀であり,かなり著名な良い企業に就職が決まっている。きっと,その企業において,大いに活躍してくれることだろうと思う。

受賞した論文の内容や論理の運びかたについては,私なりの意見がある。私のレベルで評価すれば,資料の選択や内容の理解等に問題がないわけではない。もし私が同じテーマで論文を書いたとすれば,かなり様子の異なるものとなったことだろう。

しかし,そういうことはどうでもよいことだ。

私は,学生の自主性を尊重する。

学生が自分で必死になって調べ,考え,大学生としてやることのできるベストを尽くしたのだから,それだけで十分に立派なことだと思う。

今回受賞した学生達が更に精進と研鑽を重ね,満足すべき人生を自分の手で掴むことを心から祈る。

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2017年2月18日 (土曜日)

考古学ジャーナル 2017年2月号(694号)

三省堂本店で下記の雑誌を購入して読んだ。

 考古学ジャーナル 2017年2月号(694号)
 特集:食文化と考古学-縄文時代の動物遺体-
 http://www.hokuryukan-ns.co.jp/magazines/07journal/j2017_02.html

日本国の動植物に関する具体的な記述の中で最も古い記述は『魏志倭人伝』の中にある。しかし,文字しかない。そのため,従来の学者の多くは,現代の山野でみつけることのできる動植物等を前提にものごとを考えてきた。やむを得ない面はある。

しかし,近年の考古学における解析技術の発展にはすさまじいものがあり,これまでよくわからなかったことが続々と解明され続けている。

今回の考古学ジャーナルの特集記事も,そういう意味で非常に貴重なものの一つと言えるだろうと思う。

雑感としては,日本の哺乳動物に関する限り,その多くが外から繁殖目的で移入されたものが野生化したものではないかとの感を強めた。

動物だけではなく,植物もそうだ。

日本では,人里付近にしか棲息しない動植物がやけに多すぎる。

そういうものを「野生動植物」として法的に保護すること,特に刑罰で処罰することは,憲法違反に該当し得る。強いて言えば,動物愛護法の適用の可否が問題となるのであって,自然保護とは無関係のことだ。

文系・理系を問わず,これまでの通説や先入観のようなものを全部捨て,科学的に証明可能なものを確定し,そうでないものはあくまでも推論として立論するという科学的な立場を重視すべきだろう。少なくとも,特定の政治的イデオロギーによって学術全体をゆがめてきたこれまでの姿勢は完全に改められなければならない。これまた時代のなせるわざとでもいうべきものではあるが,間違いは間違いとして認める潔い態度がなければ,学術であるとは言えない。

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2017年2月17日 (金曜日)

藤瀨禎博『九州の銅鐸工房 安永田遺跡』

大学からの帰路,電車の中で下記の書籍を読んだ。

 藤瀨禎博
 九州の銅鐸工房 安永田遺跡
 新泉社(2016/12/10)
 ISBN-13: 978-4787716347

非常に読みやすく,必要なことが全て書いてあって,とても勉強になった(ただし、銅剣に関しては、朝鮮半島からやってきたのではなく,日本列島から朝鮮半島に渡ったという可能性も検討すべきだと考える。)。

表紙にも用いられている銅鐸(鋳型からの復元品)の紋様には特に注目したい。

上方にある人の顔のようなものは,饕餮(とうてつ)だろうと思う。

その表情は、三星堆遺跡(中国四川省)から出土した青銅像の造形と酷似しているように思う。

下の左側にあるトンボのようなものは,実は龍であると思われる。青龍だろう。

トンボのヤゴは,龍と同じく水辺に棲み,その姿と獰猛な生態はまさに龍だ。そして,成長すると羽化して天に昇る。オニヤンマの悠然たる飛行の姿を知っている人であれば,まさに昆虫の龍に相応しいということを納得できるのではないかと思う。

豊葦原千五百秋瑞穂國の瑞穂については諸説あり,私見もあるが,仮にこれをトンボのことだと解するとすれば,本当は青龍の自負があるけれども日本書紀編纂当時の中国(唐)との関係では東夷として行動しなければならなかったため,「瑞穂」とへりくだった表現を採用したのかもしれないとも考えられる。

下の真ん中にある水鳥のようなものは,朱雀であると考えられる。

下の右側にある亀は,玄武であると考えられる。

上のほうにある饕餮(とうてつ)は,おそらく白虎が四神獣の中で最も強く真の王者であるということを示すのではないかと考える。

饕餮(とうてつ)が白虎を兼ねているとの仮説が正しいとすれば,当時の支配者は,西方からやってきたことになると考えることができる。

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夏井高人「EUの行政機関に適用される個人データ保護規則における基本概念-個人データ保護条約及びEU一般個人データ保護規則との関係を含めて-」

下記の論説が刊行された。

 夏井高人
 EUの行政機関に適用される個人データ保護規則における基本概念
 -個人データ保護条約及びEU一般個人データ保護規則との関係を含めて-
 法律論叢89巻2・3号181~245頁

目次構成は,下記のとおり。

 1 はじめに
 2 欧州連合(EU)における個人データ保護法制の基本的な枠組み
 2.1 保護法益
 2.1.1 プライバシーの権利
 2.1.2 情報の自由
 2.1.3 個人データの侵害
 2.1.4 矛盾と解決策
 2.2 法的枠組み
 2.2.1 個人データ保護条約ETS No.108及び追加議定書ETS No.181
 2.2.2 個人データ保護指令95/46/EC
 2.2.3 行政機関個人データ保護規則(EC) No 45/2001
 2.2.4 一般個人データ保護規則(EU) 2016/679
 2.2.5 ネットワーク及び情報システムの安全性に関する指令(EU) 2016/1148
 2.2.6 欧州における個人データ保護のための法制度全体の関係
 2.3 行政機関個人データ保護規則への反映
 3 個人データ保護の基本原則
 3.1 原則
 3.1.1 欧州評議会閣僚委員会の決議
 3.1.2 個人データ保護条約ETS No.108第5条
 3.1.3 個人データ保護指令95/46/EC第6条
 3.1.4 行政機関個人データ保護規則No 45/2001第4条
 3.2 データ主体の権利
 3.2.1 個人データに関する情報へのアクセスの権利
 3.2.2 個人データの訂正を求める権利
 3.2.3 個人データの処理の停止を求める権利
 3.2.4 個人データの削除を求める権利
 4 権利の制限
 5 第三国への個人データの移転
 6 データ主体の情報の自由(可搬性)
 7 まとめ

なお,法律論叢は,明治大学法学部の事務室で購入することができる。

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2017年2月13日 (月曜日)

American Spies

下記の記事で紹介されていた。

 American Spies: how we got to age of mass surveillance without even trying
 ars technica: February, 2017
 https://arstechnica.com/tech-policy/2017/02/american-spies-how-we-got-to-age-of-mass-surveillance-without-even-trying/

Amazonのサイトで検索してみたところ,まだ発売されていないようで,予約受付中になっていたので,早速予約することにした。

研究費が枯渇していて苦しいのだが,どうにか頑張るしかない。

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2017年2月 9日 (木曜日)

鈴木 滋「米国自由法―米国における通信監視活動と人権への配慮―」など

下記の論説を読んだ。とても勉強になった。

 米国自由法―米国における通信監視活動と人権への配慮―
 国立国会図書館調査及び立法考査局
 海外立法情報課長 鈴木 滋
 外国の立法267号6~17頁 (2016)
 http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9914660_po_02670003.pdf?contentNo=1

 【アメリカ】情報自由法(FOIA)の改正案
 海外立法情報課長  鈴木 滋
 外国の立法267-1号2~3頁 (2016)
 http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9929053_po_02670101.pdf?contentNo=1

スノーデン事件が法制度及びその運用に対して与えた影響に関して正面から書いている学術論文はそんなに多くない。貴重だと思う。

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2017年2月 2日 (木曜日)

松原有里「親子会社間IT(情報通信)サービス取引をめぐるクロスボーダーな消費課税と欧州VAT指令(2006/112/EC)の関係-Skandia America (USA)事件(Case C-7/13)を中心として-」

下記の論説を読んだ。

 松原有里
 親子会社間IT(情報通信)サービス取引をめぐるクロスボーダーな消費課税と欧州VAT指令(2006/112/EC)の関係-Skandia America (USA)事件(Case C-7/13)を中心として-
 EU法研究2号87~110頁(2016)

EUのVATについては,日本語の良い文献資料が乏しく,その関連の事項を調べていて苦心したことがある。

この論文は,副題にあるSkandia事件判決とCredit Lyonnais事件判決を素材としつつ,EUの法令中にしばしば出てくる「主たる拠点」の確定方法に関し,非常にわかりやすい図を交えながら詳細な検討を加え,問題点とその社会・経済的な背景にまで言及するもので,学術論文としての有用性が著しく高い。

とても勉強になった。

この論説に書かれていることを参考にしながら,更に勉強しようと思う。

(余談)

松原氏の論説では,司法裁判所の「Advocate General(AG)」の従来の訳語「法務官」を用いている。

「法務官」で間違いとは言いにくいが,どうもしっくりこない。なぜなら,日本語としての「法務官」は,刑事司法を担当する刑事法務当局(Judicial authorities)のことを意味する語と解するのが普通だからだ。しかし,司法裁判所のAGは,法務当局とは無関係の独立した存在であり,かつ,訴追官でも論告官でもない。

法と情報雑誌2巻1号(通巻7号)に掲載の丸橋透先生の論考にもあるとおり,司法裁判所規則の条項に定めているAGの職務・権限・責任を完全に踏まえて,「独立弁論官」とするのが妥当と考える。

私自身は,司法裁判所のAGについて,「独立弁論官」という訳語を用いることにする。

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2017年1月31日 (火曜日)

Linnet Taylor, Luciano Floridi & Bart van der Sloot (Eds.), Group Privacy: New Challenges of Data Technologies

下記の書籍が届いたので,仕事を中断してざっと読んだ。

 Linnet Taylor, Luciano Floridi & Bart van der Sloot (Eds.)
 Group Privacy: New Challenges of Data Technologies
 Springer (2017)
 ISBN-13: 978-3319466064
  http://www.springer.com/us/book/9783319466064

問題意識は,従前から指摘されてきたもので,『電子商取引法』(勁草書房)の第3章(分担執筆)で既に指摘しているものだ。すなわち,「個人」の本質にかかわる問題を取扱っている。

それだけであれば特に目新しいものではないのだが,現実の問題としてどのような場面において従来のような単純な個人データ保護のアプローチでは失敗してしまうのかについて,主として欧州における状況を前提とした上で,具体例としてはビッグデータにおける要素解析を中心にとりあげながら,多角的に検討しており,勉強になる。

Floridiの分担執筆部分では,一般的な定式化を試みた上で,一般データ保護規則GDPRの適用のための解釈論としての試みが展開されており,非常に興味深い。私個人としては,GDPRの解釈論もさることながら,理事会決定2009/936/JHA及び理事会決定2009/936/JHAの問題点をより深く認識するために役立った。

また,本書では参考文献等の記載が充実しており,更に深く研究したいと考えている研究者にとってはレファレンスとしての有用性の高い書籍となっていると思う。

個人データやプライバシーと関連する分野の研究者であれば,一度は目を通しておくべき書籍だと評価することができる。

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2017年1月29日 (日曜日)

三輪和宏・林かおり「ドイツとイタリアの生殖補助医療の制度」

国立国会図書館のサイトで,下記の論説が公開されている。

 三輪和宏(国立国会図書館調査及び立法考査局主任調査員 総合調査室)
 林かおり(国立国会図書館調査及び立法考査局 国会レファレンス課)
 ドイツとイタリアの生殖補助医療の制度
 レファレンス792号33~59頁(2017)
 http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_10265298_po_079203.pdf?contentNo=1

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