2025年10月25日 (土曜日)

DACS:AIの時代における透明性,公正性及びクリエーターの権利の尊重に関する共同声明

下記のとおり,共同声明が出ている。

 Our joint statement calling for transparency, fairness and respect for creators’ rights in the age of AI
 DACS:Posted on 16/10/2025
 https://www.dacs.org.uk/news-events/joint-statement-on-creators-rights-in-age-of-ai

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私は,基本的に賛成だ。

世界各国の著作権法制に完全に精通していないAI関連企業の経営者及びAI関連組織の代表者は,特に米国流のフェアユースしか知らない者は,ちゃんと勉強すべきだ。それらの人々は,自分のことを非常に優秀だと宣伝しているので,1週間もあれば世界中の全ての著作権制度に精通することなど簡単にできることだろう。

しかし,現実にはそのような経営者などいるはずがない。

そこで,各国とも,例えば,当該企業や研究組織の前年度における全世界の総売上高を上限とする行政上の制裁金制度を早急に導入すべきだと考える。
そのような制裁金による国庫収入は,零細であるために訴訟を起こすこともできないクリエータに分配すればよい。

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基本は簡単だ。

人間がやってはいけないことは,AIシステムが自動実行することも許されない。

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学習することそれ自体は,一般的には,各人の自由かもしれない。

しかし,企業秘密のようなアクセスが禁止されている知的財産権にアクセスすることは禁止なのでそもそもそれを学習することが許されない。

また,人間による学習の場合,脳内の記憶能力に限界があるので,著作権侵害の程度・範囲にも自ずと制限が称する。ところが,理論上では無限に記憶領域を拡大できるコンピュータシステムでは,たった1人のAI企業の経営者によって世界中の著作物がシステム内に格納され,潜在的に著作権侵害の状態でスタンバイするという状態が発生する。

つまり,AIによる知的財産権の侵害による潜在的な影響度は,個々の人間による場合とは全く比較にならないほど大きなものであり,いわば全人類を死滅させる文化的な生物化学兵器のようなものだと言える。

立法者は,そのことを正確かつ冷静に理解し,この問題に対応するため,適切に立法すべきだ。

 

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2025年10月 5日 (日曜日)

法と情報雑誌69号(第1分冊)

法と情報雑誌69号(第1分冊)を作成し,Web上で公表した。

 法と情報雑誌69号(第1分冊)
 http://cyberlaw.la.coocan.jp/Documents/LawandInformationMag_No69A.pdf

この号には「規則(EU) 2023/2854(データ法) [参考訳] 」が含まれている。

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2025年9月11日 (木曜日)

AIエージェントの違法なふるまい

AIエージェントが実際にはどのような処理をしているのかの詳細を知ることは不可能または困難なことだ。

AIエージェントのふるまいの適法性の検証も難しい。特に利益相反の有無の検証は,関連する利害関係者の利益の詳細に関する情報を得ることがほぼ不可能と考えられるので,検証しようがない。著作権侵害の場合に関しては,一定の範囲内で自動処理を組込むことが可能かもしれないが,そもそもAIシステムの圧倒的大部分において著作物であるコンテントの処理に関し,正確な権利者情報や出典情報,裁判管轄地情報等のメタデータが存在しないので,著作権侵害がないことの検証の自動処理も頓挫する可能性が高い。

それでいて,利用者のエージェントである以上,そのAIエージェントに何か違法なふるまいがあり,誰かに対して損害を発生させた場合,そのAIエージェントサービスの利用者が行為者となり,不法行為法上の法的責任を負うことになる。

他方,日本国の製造物責任立法は信じがたいほど時代遅れのものなので全く話にならないが,例えば,EUの法令では動産だけではなくアプリケーションソフトウェアの提供のようなサービスの場合にも製造物に関する証明責任の軽減を定める法令がある。
それゆえ,日本国のAIエージェントのベンダは,EU域内でサービスを提供する場合,EUの法令が適用される。日本国の製造物責任に関する知識だけでは完全に無力だ。

このようなことは,例えば,「適法に行為する」という当たり前のことを全然知らない企業経営者がAIシステムを開発したり導入したりすると,当然の結果として発生する。
そのような場合おいては,もともと経営者として不適格なのに経営者になっているので,何が起きても自業自得としか言いようがない。

 

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2025年8月28日 (木曜日)

生成AIの生成物は独自の著作物となるか?

生成AIのアウトプットそのものではなく生成AIの補助を得つつも(例,背景部分のベタ塗り処理の自動化のようなあくまでも付随的な部分の自動処理),基本的には人間の脳と手により新たに生み出された作品である限り,その作品が著作権法の定める著作物である得ることに関しては,異論がないと思われる。

生成AIのアウトプットそれ自体の著作物性に関しては議論があるが,(私の「処理主義」の理論に依拠することなく,通説である「意思主義」の理論に立脚する限り)人間の創作物とは言えない純粋に自動性に生成されたアウトプットや人間の指揮命令と無関係に生成されたアプトプットは,自然現象の一種であり,人間が創作した作品ではあり得ないので,「創作物」ではあり得ず,従って,著作権法によって保護される「著作物」または「実演」等にはなり得ない。

そのようなアウトプットが既存のどのデータとも異なる新規のものである場合,模倣でも二次利用でもないことになる。
しかし,そのようなアウトプットは,自然現象の一種である以上,現行民法上では無主物の一種ということになり,それゆえ,無主物先占の理論によってものごとを解決することになる。
そのように解する場合でも,単なるデータとしてのアウトイプットを保護する法令が存在すれば権利が原始的に発生するというだけのことであり,そのような法令が存在しないときは,誰の権利にも服さない「単なるデータ」ということになる。

生成AIのアウトプットがコラージュの範疇に属するものである場合,(米国ではともかくとして)日本国の国家主権が及ぶ範囲内においては,マッドアマノ氏の作品をめぐるモンタージュ写真事件の最高裁判例は現時点でも有効なので,新たな著作物として成立することはなく,他人の著作物の改変または模倣に過ぎないということで既に確定しているので,このようなタイプの問題に関しては議論の実益が乏しい。

生成AIのアウトプット著作権法の定める二次利用による派生物(編集物,翻案物,翻訳物等)である場合,現行の著作権法の関連条項に従っている場合に限り,当該条項が定める法律効果の範囲内で,新たな著作物として保護を受け得る。
著作権法の定める法律要件を満たさない場合,著作物のない単なるデータに過ぎない。

例外は,営業秘密として保護されることがあり得る場合のみと考えられるが,営業秘密は不正競争防止法上の権利であり,著作権法の定める権利の一種ではない。

生成AIのアウトプットが著作権法上の引用に該当するためには,著作権法に定める引用のための法律要件をすべて満たしている必要があるが,現実にはそうではない。
ほぼ全てのGPTアプリやGPTサービスからのアウトプットは,正当な引用とは認められず,違法である。このことは,既に何度も主張しているとおり。加えて,著作権法の定める人格権の保護も考慮しなければならない。
その観点からは,例えば,Google検索の「要約」なるものは,ほぼ常に,引用の要件を満たさず,かつ,著作者人格権を侵害する違法なアウトプットであるので,全て削除されるべきであり,要件を満たさない仕様である限り,サービスの提供それ自体を全部廃止すべきである。
適法であるためには,その資料を学習し,模倣または引用したのかを,出典を明記すべきである。
LLMによる学習対象となる既存のデータが1つしかないときは,その単一の資料を無権限で模倣・改変して自動生成された生成物を公衆送信可能化していることになるので,適法行為になることがない。絵画作品等では現実にそのようなことが起こり得る。写真の創作物性に関しては,通説によれば(←私見は通説に反対),自然物である山河を撮影したような写真であっても構図のとり方に創作性があれば著作物であると解している。そうすると,構図のとり方を学ぶだけで違法行為であることになるが,そのような考え方は,アイデアそれ自体を保護するのと同じことになるので認められない。構図のとり方ではなく,当該写真を描画作品として印画紙上またはデジタル媒体上に固定化したことに創作性の淵源を見出すべきである。

まとめると,著作権法の定める法律要件を充足しないアウトプット,基本的には,全て違法な模倣物または改変物である。

有料のサービスにおいて,法理論的には著作権がないアウトプットを著作権のあるものとして課金する行為は,詐欺行為となる。
それが故意ではなく過失による場合であっても,刑事上で詐欺罪として処罰されることはないにしても,民事上は不法行為に基づく損害賠償請求の原因となり得る。
世界中の全ての事業者は,間違って詐欺行為となってしまわないように,善良なる管理者の注意義務をもって事業を遂行しなければならない。

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なお,日本国の著作権法は,立法それ自体が完全に間違っており,基本的な国際条約における「works」を「著作物」としていることが人々の頭脳を劣化させている。「works」は,全て「作品」と置き換える法改正が必要なのだが,あまりに多数の箇所の改正が必要となるので,いったん廃止し,全部書き換える法改正を実施すべきだ。

このことは,これまでも何度も主張してきたことなのが,日本国の何人かの学者(法学研究者)等は私見に反対。英語を読み理解する能力がないせいではないかと推測される。法学研究者ではない学者に関しては,著作権法に関して無知なので,議論してもはじまらないと理解し,全て無視している。

 

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2025年7月17日 (木曜日)

機密がなくなる世界?

最近のAIの機能の強化+データ処理能力の増大により,デスクトップ画面の様子を把握し,ユーザの行動を推論してしまう機能が普及し始めている。

私の経験によると,その機能の使用を停止に設定しても全く無視されるので,明らかに各国の個人データ保護法(特にGDPR)に違反している。

しかし,誰も批判しない。その原因は不明だが,現在の情報法やサイバー法の研究者やその分野を専門とする弁護士の多くが馬鹿であるか大企業の腰巾着であるかのどちらかになっているのかもしれない。

そのようなAI機能をフル稼働させている大企業の中には,例えば,中国人のエンジニアがいっぱい勤務しているのが普通なので,自動的に収集されたデスクトップ上の要素情報は,その情報のほぼ全部がリアルタイムで中華人民共和国のサイバー軍または諜報当局に流れているとしても全く不思議ではない。

そのようになってしまっている結果,人々のプライバシーは,もうない。
近い将来,例えば,特定の誰かと秘密で合おうとしようとしていると,AIシステムは,「既に学習済のプロファイルによれば,そのお相手の方は***が大好きだから,あなたが一緒に食事しようとしている店ではなく,***という店の方がうまくいきますよ」と勝手にアドバイスしてくるような時代がやってくることになるだろう。
つまり,このような仕組みは,仕組みそれ自体がほぼ全面的に違法なものなのだ。

単なる個人だけではなく,例えば,目下ホットになっている参院選においても,競争相手の政党の行動に関するプロファイルを勝手に生成し,押し売り的にアドバイスしてくるAIボットが既に存在しているかもしれない。情報をもらうことに喜ぶことはできるけれどもどうしてそのような情報が収集されるのか,同じメカニズムによって自分達の陣営の情報も収集されプロファイルされているのではないかというような疑問をもたない政党は,簡単に言えば無能だと言える。

それだけではなく,知的財産権,特に,営業秘密,非公開特許,非公開著作物は,機密性が喪失しており,機密のものとして保護されない状態となっている。そのことを指摘できない知的財産法学者は,馬鹿だと認定するしかない。

同様に,軍の機密情報や公安当局の機密情報を含め,国家の機密情報が機密のものとして保護されない状態となっている。そのような状態を放置していることは,国家機密の保護と関連する各法令の違反行為となるので,その関係者を処罰する必要があるかもしれない。

もっとも,そのような仕組みは通信回線というリソースを大規模に消費する。
ところが,通信回線というリソースはそんなに簡単に増加させられないので,アッという間に輻輳の問題が発生し,AIを使用するとトラブルと通信途絶しか発生しないという状況に陥る可能性はかなり高い。

一般に,もともとAI企業は,巨額の税金と企業資金を投入して構築され続けてきた社会インフラの利益を盗み取ることによって成立しているので,倫理も法秩序もない単なる海賊の一種に過ぎない。
そのことを知らないで海賊の手下として雇われ,AIの導入が進むと「24時間働くAIを導入するので,人間は要らない」といってゴミクズのように捨てられてしまう現代の若者が可哀そうだ。

労働基準当局は,(その対象企業が名うての悪徳企業として著名な企業である場合には特に)決然たる態度で臨むべきだ。

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勤務先である明治大学法学部の関連科目では,そのようになってしまう歴史上・社会上・政治上・経済上の基本的メカニズムに関しても教えてきた。ただし,理解できた学生がどれだけいるのかはわからない。

その明治大学法学部を2026年3月をもって定年退職するので,若い人たちに対してのようなことなどを教える機会もなくなり,単なる「爺さん」になる。

 

 

 

 

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2025年4月28日 (月曜日)

AIツールの利用に伴う情報セキュリティ上のリスク

下記の記事が出ている。

 Security Experts Flag Chrome Extension Using AI Engine to Act Without User Input
 infosecurity magazine: 25 April, 2025
 https://www.infosecurity-magazine.com/news/chrome-extension-ai-engine-act-mcp/

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あくまでも一般論としては,MicrosoftのOfficeとIME,Google検索,各種自動翻訳サービスを含め,生成AIツールは,(サービスによっては,エンドユーザが「禁止」または「停止」に設定していてもお構いなしに)エンドユーザのキーストロークやエンドユーザが開いたファイルの内容等を自動的に記録し,学習するAI自動学習機能を具備している。それらは,ハッキングツールとして知られるキーロガーよりもずっと悪質であり,違法性が顕著だと言える。

そして,そのような仕組みは,アンインストールしてもすぐに自動的に復活してしまうことが珍しくない。

かくして,生成AIの普及により,世界中の個人データ保護及び知的財産権保護,電子認証と電子決済というデジタル社会の基本的な法制度,国防,警察,国家安全保障という国家主権上の基本機能の全てが瓦解することになる。

それらが瓦解した後は,当該生成AIサービスの提供者である大企業も(国防上の保護,情報セキュリティ上の保護及び知的財産権の法的保護を受けることができなくなっており,かつ,安全な電子通信が確保されなくなってしまうので)必ず経営破綻することになる。そのような経営破綻があれば,それによって,当該企業の株式や証券等と関連する資産の価値は(それが何百兆円と評価されたものであったとしても,その評価は単純に主観的な期待値に過ぎず,実体経済とは全く無関係のものなので)直ちにゼロになる。

ところが,米国,中国,日本,EUの主要国を含め,世界の国々の大概の政治家は,目先の利権のことしか考えないので,最終的にはサイバーテロやサイバー侵略行為によって自分自身が殺される原因をつくっているかもしれないということに気づくことができない。
サイバーテロが成功するような環境においては(電子的な防御や監視の仕組みが機能しなくなるので)物理的なテロも非常に容易になる。サイバー侵略行為が成功するような事態の下にあっては(電子装置と連動した精密な防衛行動が完全に不可能になるので)原始的な方法による物理的な侵略行為も非常に容易になる。要するに,白兵戦を実行できる動員可能な歩兵の数によって勝敗が決する時代に戻る。

また,AIの研究者は,(全員がそうだとは言わないが)基本的に社会的責任や法律上の義務に関しては無関心なので,自分自身の研究活動が社会を崩壊させつつあることを認めない。

更に,上記以外の国々の中には,国家戦略として,積極的にそのような関連の各種工作活動を行ってきた疑いのある国が存在する。

しかし,世界の国々が全部破綻するまで何も変わらないのだろうと思う。

そうやって全部破綻したとしても,(世界の幾つかの独裁国を除き)そのように破綻させた当の責任者である政治家や関連企業経営者等が死刑になることはまずない。

 

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2025年4月16日 (水曜日)

知的財産を保護するための法制度がなくなる?

下記の記事が出ている。

 ジャック・ドーシーが「すべての知的財産法を撤廃せよ」と発言してイーロン・マスクが同意
 Gigazine:2025年4月14日
 https://gigazine.net/news/20250414-jack-dorsey-delete-ip-law-elon-musk/

彼らは,トランプ政権が「アメリカ第一主義」を掲げて復活を推進している米国産業を破壊したいのだと思う。

それらの企業の中には,金融,製鉄,自動車製造,航空機製造,クラウドコンピューティング,ICTサービス,ハリウッドなどのエンターテイメント産業,情報セキュリティ産業を含む。

なぜなら,これらの産業は,特許権,意匠権,商標権,営業秘密,著作権,データベースの権利のような知的財産権を保護することなしには成立しないからだ。それらの知的財産権を廃止した場合,知的財産権が存在しなくなるので,権利侵害を理由とする訴訟により侵害行為に対抗することができなくなる。
例えば,中国は,損害賠償や刑罰を恐れることなく,米国企業の知的財産を無料でどんどん自由に使用できることになる。
そのような知的財産の中にはAI関連のデータセットやモデルも含まれるので,米国が何兆円もかけて構築したシステム,データセット,モデルなどがそのまま模倣されたとしても,(知的財産権制度が存在しないので)少なくとも知的財産権の侵害行為にはならないことになる。

ジャック・ドーシーは,「自分の利益だけは守られる。自分以外の者には権利はない」という超利己主義を基礎とする古代の独裁者的な思考をする遺伝子の持主なのではないかと想像される。

知的財産の国際的な移動では,物品の国際的な移動があるわけではないので関税が賦課されるわけでもない。

Amazon,Google,Microsoft,Apple,そして,巨大なデータベースをもつ大手AI企業は,真っ先に倒産するということになるかもしれない。

このような愚かな言説(←主張者が本当に知能の低い人間または完全に無知な人間である可能性は否定されないのだが・・・)が横行するのは,トランプのせいだ。

知的財産権は,物体ではない。そのような権利があると仮定して,相互に保護するという約束しか存在しない。もともと権利は存在しないものであり,その存在を仮定する約束とその約束の履行を確保するための法制度(国家権力)が存在するだけだ。このような考え方は,非常に古い時代から「名目説」として広く知られている。権利が存在しなくても,約束を守る国家が多数である限りは,権利が存在するのと同じ状態が現出することになる。

トランプは,国際法は存在しないということを誰の目にも明らかにした。古代ローマ帝国以来の「約束は守られるべし」との格言も全部反故にした。武力による制圧だけを基礎とする古代の独裁者的な君主と同じような発想しかできない。

かくして,自由貿易のための国際的な約束は消滅してしまい,そのような約束を基礎とする知的財産権保護のための約束(協定)も反故にされてしまった。

これらの者のせいで米国の産業界が全面的に崩壊した場合,無職となった者や無資産者となった者らから(恨みに起因する報復のために)雇われた仕事人によってジャック・ドーシーとイーロン・マスクがあの世に行く日が来るかもしれない。

そのようなリスクが顕在化しても,たぶん,トランプは,彼らを守ろうとはしないだろう。

なぜなら,トランプは,自己に欠点や失策があることを絶対に認めない遺伝子をもつ人間だからだ。その属性は,スターリンの属性というよりはポルポトの属性に近い。

かつて,トランプは,自分に大統領をやらせればウクライナの紛争をすぐに解決してみせると豪語していた。
しかし,いつまでたっても解決できない。プーチンよりも能力がかなり劣るので当たり前の帰結なのだが,そのようなことは絶対に認めない。
今では,戦争が終わらないのはセレンスキーのせいだと主張してウクライナを責めている。もっとも,プーチンからの指示・命令によりトランプがそのようにゼレンスキーを非難している可能性(茶番である可能性)は否定されない。

トランプは,憲法を守るための官僚制度と議会を破壊し,憲法による縛りを撤去した上で,古代の君主のようになりたいのだと思う。

その手本として,ロシアの憲法体制を破壊して終身の大統領になっているプーチンが存在している。

トランプは,「プーチンにできたことが自分にはできないということはおかしい」と考えているのに違いない。

 

[追記:2025年4月16日15:50]

関連記事を追加する。

 

 イーロン・マスク率いるDOGEが全米労働関係委員会の内部システムにアクセスし機密情報を抜き出した詳細が内部告発により明らかに、監視ツールを無効化して痕跡を削除しロシアのIPアドレスからアクセスが急増するなど滅茶苦茶
 GIGAZINE:2025年4月16日
 https://gigazine.net/news/20250416-how-doge-take-sensitive-nlrb-data/

 

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2025年3月26日 (水曜日)

AI crawlers

下記の記事が出ている。

 Open Source devs say AI crawlers dominate traffic, forcing blocks on entire countries
 ars technica: 2025年3月26日
 https://arstechnica.com/ai/2025/03/devs-say-ai-crawlers-dominate-traffic-forcing-blocks-on-entire-countries/

 

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2025年2月16日 (日曜日)

TRIPs協定の時代は終わったかもしれない

一般に,理念だけでは社会は動かない。

社会を動かしているのは(武力に支えられた強制力という意味での)現実の国家権力であり,それを支える資金力だ。

知的財産権の法的保護や仮想通貨等のデジタル財産の法的保護は,保護対象がもともと観念的なものであり現実に存在している物的財貨とは異なるものなので,それが法的な権利であることを国家が強制しなくなれば何もなくなってしまう。つまり,もともと「無」であり,全ての種類の(経済上の)投資と同様,将来的に(現実の国家権力によって強制力が付与されている)通貨と「交換できるかもしれない」という主観的期待を現時点で主観的に金銭評価した価値量の観念しか存在しない。このことは,関連参考訳の解説の中で何度も述べてきたことだ。

その根幹部分が崩れつつある。

そのことは,米国の現代の世界的経済支配の根幹部分を壊すことにもなる・・・ということをトランプ氏もマスク氏も理解していないと想像される。

TRIPs協定の時代は終わったかもしれない。

 

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2025年1月31日 (金曜日)

DeepSeek問題

下記の記事が出ている。

 DeepSeek Exposed Database Leaks Sensitive Data
 infosecurity: 30 January, 2025
 https://www.infosecurity-magazine.com/news/deepseek-database-leaks-sensitive/

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一般に,生成AIにおける自動学習の仕組みは,関連法令の適用を無視して個人データや(営業秘密を含め)第三者の知的財産権のあるデータなどを自動取集し続けることが不可欠のものとしており,そのようにして収集したデータを記録保存しているデータベースは,他者の個人データや(営業秘密を含め)知的財産権のあるデータの集合体となっている。このようにまるごと全部収集することは,ホエーリングと呼ばれたことがあった。
それゆえ,そのデータベースが何らかの方法でコピーされると,その中に記録保存されていた他者の個人データや(営業秘密を含め)知的財産権のあるデータもまるごと全部コピーされることになる。

目下話題となっている生成AIの自己増殖とは,予めそのように設定してあるシステムにおいて,アクセス可能な別の処理系の探索と発見,発見された処理系の自動分析,自動分析された結果に基づいてチューニングされた自動的なインストールまたは移植のことを意味するのだが,そのような設定が行われているところでは,自動的な移植先が仮想敵国の軍当局や諜報機関等によって管理されているシステムやライバル企業のシステムであることがむしろ普通であるかもしれず,その意味で,自分から国家機密や企業秘密や個人の秘密をどんどん敵国やライバル企業等にまるごと全部提供してしまう「馬鹿機能」であると断定できる。

これを避けるためには,トマス・ホッブズが言うとおり,(当該システムの管理者や利用者を含め)「自己以外は全て敵」とみなすシステムでなければならず,そのようなシステムは,誰にも管理できず,誰にも利用できないシステムであらざるを得なくなる。システムの管理担当者や利用者の中には,一定確率で,必ず仮想敵国の工作員やその手先が含まれている。実は,開発責任者や開発会社の代表者自身が敵国の隠れたエージェントであり,当該システム開発の本拠地の政府や指導者を騙し続けているということもあり得る。特に,当該の者が特定の仮想敵国内に大規模な営業拠点をもっていたり,巨額の投資をしている場合には,そのようなことが十分にあり得る。

過去の歴史をつぶさに調べてみると,政府や国家指導者と極めて緊密な関係にあった者が実は敵国の工作員だったという実例は,無数に存在する。このことは,司馬遷『史記』の時代から少しも変わっていない。

しかし,ここで述べたようなトマス・ホッブズのいう意味での「自己以外は全て敵」とみなして,誰からもアクセスできないようにされているタイプの生成AIシステムは,現実には存在しない。

つまり,生成AIは,いつまでたっても「究極の馬鹿」の状態から脱することができない。

***

自動インストール先であるシステムが仮想敵のシステムであることを当然の前提にした上で,当該仮想的システムのセキュリティシステムによってブロックされないようにするための巧妙な手口を用いて潜伏し,徐々に特権レベルを上昇させながら当該仮想的のシステムの中で支配者となり,当該システムの制御(root)を完全に奪ってしまうような自動化された機能をもつ生成AIモジュールを自動インストールした場合,そのような自動インストールに成功した生成AIシステムは,かつてコンピュータウイルスと呼ばれたものと基本的には何も変わらないことになる。要するに,サイバー犯罪条約に定める違法な機器(=日本国刑法上では不正指令電磁的記録)であり得ることになる。

情報犯罪者は,実行行為者としては自然人であることを要しない。犯罪収益や機密情報の入手(奪う犯罪類型),あるいは,相手方システムや重要データの破壊(壊す犯罪類型)に成功すればそれで良く,そのことによって得られる成果が自然人に帰属しなければならないという必要性は,最初から全くない。

利得を意図する自然人のサイバー犯罪者というモデルをデフォルトとして理解することはやめるべきだと考える。

 

[追記:2025年2月6日]

関連記事を追加する。

 Cybercriminals Eye DeepSeek, Alibaba LLMs for Malware Development
 infosecurity: 5 February, 2025
 https://www.infosecurity-magazine.com/news/deepseek-alibaba-llms-malware/

 

 

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