2018年10月27日 (土曜日)

電子マネーによる賃金の支払

某氏からのメールの中に,電子マネーによる賃金の支払いに関する話題があった。

直観的に,「労働基準法の適用の関係で大丈夫か?」と思った。

労働基準法の第24条第1項は、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる」と定めている。

このただし書の部分は、主としてストックオプションの場合,あるいは,退職金等の小切手による支払の場合を想定したもので,どのような場合にも適用されるものではない。

ところで,「電子マネーによる賃金支払」の場合,その電子マネーがどのようなものであるかが明確に定義されており,かつ,当該電子マネーの券面額全額について確実な担保が準備されており,単なる支払手段としてその電子マネーが使用されるのでなければ,同等基準法第24条第1項に違反することになると考えられる。

しかも,電子マネーの種類によっては,通貨との交換が禁止されているもの,または,通貨との交換に制限のあるものがあり,そのようなものは通貨による支払と均等な賃金の支払であるとは認められないので,やはり違法となる。つまり,電子マネーによる支払を受けた後,直ちに,全額を通貨と交換できるのでなければならない。

電子マネーに適用される資金決済法は,電子マネーを「通貨」ではなく,支払手段の一種として位置付けているので,労働基準法第24条第1項の適用の問題が直接的に発生する。

しかも,資金決済法に定める発行保証金の額は,発行額の全額ではないので,決済手段としての電子マネーの券面額の全額について担保が確保されていないことが法律上明らかとなっている。要するに,券面額の賃金が確実に支払われていると認めることが(常に)できない。

以上を総合すると,全ての賃金の全額についての電子マネーによる賃金支払は,原則として違法かつ無効である。

また,労働者の過半数代表との協議により可能であるとの解釈を採る場合であっても,労働者が現金または銀行口座への振込を選択的に指定できるものとの労働協約が存在しない限り,違法かつ無効であると解すべきである。

電子マネーは,私企業が発行するもので,ゲームの「子ども銀行券」と同じく,中央銀行による国家的な担保のない単なる電子的な符号の一種に過ぎない。その符号と通貨との交換が円滑に機能している間は一見すると通貨のように見えるかもしれないが,所詮は電子的な符号の一種に過ぎないし,通貨との強制的な交換を常に可能とする法制度は(理論上も現実問題としても)存在し得ない。

このことは,紙の約束手形と通貨との交換を常に強制するような法制が(理論上も現実問題としても)成立不可能であることと全く同じことである。

そのような法制を構築すると,国家財政は,確実に,かつ,瞬時にして破綻する。

以上は,「実力説」を知らない者には理解し難いことかもしれない。

しかし,「無知は罪である」との格言があることだけは知っておくべきだろう。

(余談)

非常に細かい話しになるが,電子マネーを通貨に交換する際には必ず手数料がかかる。その手数料額分を付加した金額が支払われない場合,賃金の一部未払いがあるという解釈はあり得る解釈だと思う。

この問題は,銀行口座振込の場合でも必然的かつ不可避的に生ずる。

しかし,これまで,ちゃんと議論されてこなかったようだ。

第三者である銀行が手数料を受け取る場合,社会的に甘受しなければならないものとして適法または違法を論ずる余地はある。

しかし,当該電子マネーを当該労働者の使用者自身が発行しているような場合,その電子マネーを通貨と交換するための手数料が同一の使用者の利益になっているという点が利益衡量上で考慮すべき事情の構造として根本的に異なっているということを理解すべきだろうと思う。

(余談2)

どのような仕組みになっているか,どのように決済されるか,発行者は誰か等の問題はあるが,ある要素の組み合わせが存在する場合,銀行法上の問題も生ずることに留意しなければならない。

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2018年8月28日 (火曜日)

米国:法律事務所間の汚い奪い合い

下記の記事が出ている。

 Lawyers sued for impersonating rival firm online to steal clients
 Register: 27 August, 2018
 https://www.theregister.co.uk/2018/08/27/lawyers_impersonating_rivals/

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2017年12月 6日 (水曜日)

株式会社イエローハットに対する景品表示法に基づく措置命令

下記のとおり公表されている。

 株式会社イエローハットに対する景品表示法に基づく措置命令について
 消費者庁:平成29年12月1日
 http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_
171201_0001.pdf

これによると,新聞折り込みチラシ等の上では通常店頭販売価格からかなり値引きした値段でセールをするように表示されていたけれども,実際には表示どおりの値引きになっていなかったようだ。

類似の例は,全国の様々な業種の宣伝広告においてみられる。

消費者は,表示を信頼して購買の判断をするしかないので,その表示に意図的な誇張がある場合には,判断を誤らせる違法な行為として行政処分を受けることになる。

(余談)

一般書店で販売されるものである限り,法律書も消費者向け商品の一種であることに異論は全くない。

そして,表示された著者名と実際の著者とが全く異なっている場合,それは,消費者向けの商品の表示に不正があるものとして,景品表示法違反行為となる。

具体例としては,非常に有名で権威あるものとされている某著作権法注釈書などをあげることができる。

なお,私が述べているのは,著者として表示されている場合のことだ。

例えば,共同で編纂された書籍に監修者と著者とが併記されており,監修者の意見に基づいて,著者がその意見に同意して文章の表現等を修正した上で公刊する行為は,無論,正当な行為となる。

むしろ,「名ばかり監修者」であり,実際には監修行為を全く何もしていない場合,景品表示法違反行為(悪質な場合には刑法に定める詐欺罪に該当する行為)となる危険性があると言える。

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株式会社シーズメンに対する景品表示法に基づく措置命令

下記のとおり公表されている。

 株式会社シーズメンに対する景品表示法に基づく措置命令について
 消費者庁:平成29年12月5日
 http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_
171205_0001.pdf

これによると,値札等に「40%オフ」等と記載されていたけれども,実際には40%の値引きが行われて居なかったようだ。

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2017年11月22日 (水曜日)

Googleはモバイル利用者の位置情報を常時監視?

下記の記事が出ている。

 Google admits tracking users' location even when setting disabled
 ZDNet: November 22, 2017
 http://www.zdnet.com/article/google-admits-tracking-users-location-even-when-setting-disabled/

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2017年7月28日 (金曜日)

『旧約聖書』のカナン人は現在のレバノン人?

下記の記事が出ている。

 Genetic evidence suggests the Canaanites weren’t destroyed after all
 ars technica: July 28, 2017
 https://arstechnica.com/science/2017/07/genetic-evidence-suggests-the-canaanites-werent-destroyed-after-all/

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2017年6月23日 (金曜日)

Uberの一連の事件から得られる教訓に関するニューヨークタイムズの記事

下記の記事が出ている。

 Uber’s Lesson: Silicon Valley’s Start-Up Machine Needs Fixing
 New York Times: June 21, 2017
 https://www.nytimes.com/2017/06/21/technology/uber-start-up-lessons.html

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2017年5月13日 (土曜日)

消費者庁:コスモ石油販売株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令

消費者庁のサイトで,下記のとおり公示されている。

 コスモ石油販売株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について
 消費者庁:平成29年5月12日
 http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_
170512_0001.pdf

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2017年3月29日 (水曜日)

ボルゲス先生からの郵便物

本日は,ちょっと雑用があり,大学に出た。郵便ボックスに行ってみると,ボルゲス先生から大型の郵便物が届いていた。開封してみると,過日の会合の際の会食の御礼状と書籍が入っていた。下記の書籍だった。

 Georg Borges
 Verträge im elektronischen Geschäftsverkehr: Vertragsabschluß, Beweis, Form, Lokalisierung, anwendbares Recht
 Nomos (2008)
 ISBN 978-3-8329-2803-2
 http://www.nomos-shop.de/Borges-Vertr%C3%A4ge-elektronischen-Gesch%C3%A4ftsverkehr/productview.aspx?product=9677

1000頁以上もある大作で,電子契約に関する法律問題について網羅的に検討した結果がぎっしりと書かれている。ドイツ語なので,辞書をひきひきではあるが,少し読んでみた。

内容的には,インターネット上での電子契約を主体とする問題について述べている部分が多い。このような検討を踏まえた上で,ロボットの法人格の問題へと検討が進んだのだろうと思う。インターネット上での自動処理,そして,それを支える技術の進歩とりわけ人工知能技術の応用という流れを素直にとらえれば,法解釈論として当然検討されるべき事柄が順に全て検討されている。

素晴らしい力作だと思う。

ボルゲス先生には他にも最近の著作があるので,購入して読んでみようと思った。

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2016年10月 1日 (土曜日)

Facebookのネット花屋ビジネスはどうして頓挫したのか?

下記の記事が出ている。

 A tough sell: why Facebook's e-commerce dream failed to take flight
 Guardian: 1 October, 2016
 https://www.theguardian.com/technology/2016/oct/01/facebook-businesses-online-shopping-chatbots

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