2019年2月10日 (日曜日)

信義則

民法の基礎として習う事項の1つだ。

しかし,初歩的な概念ではなく,無数の事例を知り,人生の中で苦楽を味わい,それからやっとわかる概念だ。

だからこそ,基礎的な概念の1つであると言える。

「基礎的である」ということは「幼稚である」とか「初歩的である」という概念とは根本的に矛盾するものだ。それゆえ,どんな職業のいかなるプロでも,常に「基礎」を理解し,体得するための鍛錬を欠かすことがない。逆に「基礎」の重要性を感じ取ることのできない者は,どのような分野においても必ず破綻する。

「信義則」は,英語の表現で「good faith」という法概念と同じまたは近いと理解されている。たぶんそうだろうと思う。

日本国において,明治維新の頃にそのような概念が輸入された際,日本国には武士道があった。だから,比較的容易に導入できたのではないかと思う。

そうではない文化をもつ領域では,そもそも全く理解されないかもしれない。

「風土」に関する和辻哲郎の見解は,細部の例証の部分はさておき,基本的には正しい。

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2019年1月10日 (木曜日)

訳語

かなりの苦労を重ね,多数回にわたる関係者との意見交換を踏まえつつ,EUの個人データ保護法令の参考訳の精度を高めてきた。

結果として,従来存在していた訳語(正確には,当該用語の理解)に多数の誤りがあることを自信をもって述べることができる段階に至ることができた。伝統的な「国際法」を基盤とするEU法研究は根本的に誤りであり,あくまでもEUの基本諸条約,EUの法令,構成国の国内法令及び欧州司法裁判所の判例法を基盤とする比較法研究としてのEU法研究でなければならない。

これまで重ねてきた研究成果は,紙媒体の「法と情報雑誌」のみで提供してきた。2018年12月で通巻30号となった。法と情報雑誌は,国立国会図書館に納本しているほか,残部がある限り,法と情報研究会の公開研究報告会の会場において,無償で配布している。

紙媒体の雑誌のみで配布しているのは,それに収録されている参考訳の中にまだ研究途中の中間報告的なものが含まれており,その段階でWeb公表すると,それが確定訳であるとの誤解を招き,未確定段階の状態のもののままで流通してしまう危険性があるからである。

その分野の専門研究者であれば,私の参考訳を読み,参考とした上で,自らの判断により,私の見解が誤りだと判断する部分については自己の見解に基づき適宜取捨選択した上で,更に研究を進めることができるであろう。しかし,専門研究者でない読者は,そうではないかもしれない。

しかし,法情報学を標榜する研究者として,それに適するまでに精錬度を高めたものについては,その研究成果をWeb上でも公表すべき時機が近づいてきていると判断した。

当面の予定としては,昨年採択された規則(EU) 2018/1725の参考訳を法と情報雑誌の4巻1号(通巻31号)に掲載して刊行した後,時機をみて,Web上でも公開することを考えている。

この規則(EU) 2018/1725の参考訳は,欧州委員会からの提案書と法案の翻訳及び関連するEDPSの意見書等の文書の翻訳から始め,関連するEUの多数の法令を翻訳し,関連する構成国の法令及び欧州司法裁判所の判例法も可能な限り調査し,各種資料を読んで考え,改正前の規則(EC) No 45/2001と関連する論文を書いて自分の理解を確認しながら研究を重ねてきた上での研究成果物である。

なお,紙媒体の「法と情報雑誌」は,今後も継続して刊行するが,その中からWeb公表しても良い段階まで精錬されたと判断したものについては,適宜,Web公開する方針に改めようと思う。

この段階に至るまでの間,私の研究を見守り,雑誌の印刷費を含め研究資金の確保のために御助力を賜った方々には心から御礼を申し上げる。

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2018年12月10日 (月曜日)

大学入試における男女差別問題

いろいろと報道されている。

いろんな意見がある。

しかし,「**女子医大」等の名称が名称それ自体として「差別的だ」という意見はないし,女性だけの学校等を「差別的だ」という意見を耳にする機会は滅多にない。

また,レストランには女性専用メニューがかなり多数存在するが,「差別的だ」という意見を耳にしたことがない。

非常に興味深い現象だと思っている。

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2018年11月26日 (月曜日)

法学部は滅びるか?

下記の記事を読んだ。

 法科大学院の興亡と大学法学部の盛衰
 社会科学者の随想:2015年01月20日
 http://blog.livedoor.jp/bbgmgt/archives/2015-01-20.html

私は,法学部全部が滅びることはないと予想する。

しかし,無為無策では必ず滅びる。

私としては,明治大学法学部及び大学院の中に情報と関連する法分野の専門家を育成するコースを構築すべきだと考え,諸々の制約の中で最善の努力を尽くしてきたつもりだ。

それらの制約の中で最も大きな制約は,教員の「定員」の問題だ。諸般の事情により増やすことが困難なので,少数精鋭で頑張っており,performanceとしては日本国内ではダントツであることは言うまでもなく,世界的にも稀な存在となることを達成している。最近,その手のグラフを見かけなくなったが,もし単純に業績数だけでグラフを作成するとすれば一目瞭然となるであろうし,内容を重視して比較検討しても同じ結果となる。

理想的には,教員の定員と科目数の増加を求めたいところだが,もしそれが実現すれば(総定員の純増は考えにくいので)他の科目の定員を圧迫することになることから,決して無理押しはしない。

上記の記事の最後のほうに某受験予備校の責任者の発言が引用されている。私もそうだと思う。「何を学ぶのか?」が明確ではないものでは勝負にならない。

私は,自分にやれることしかできないので,「情報社会の法」に関する専門的な素養をもつ若者の育成に集中し続けようと思う。

一般に,当該分野において真に実力があり,優れた論文を書き,勉学意欲のある若者に対して正しく充実した教育を提供でき,必要に応じて英語でも十分にやりとりできる教員は,現実にはかなり稀な存在だ。

しかし,幸いなことに,明治大学法学部の「法と情報コース」の担当教員は,それらの条件を全て満たしていると考えている。

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2018年8月 9日 (木曜日)

EU:会社法指令(EU) 2017/1132

以前,南保勝美先生から教えてもらいながら1か条も読んでいなかったのだが,私の専門分野と非常に大きな関係のある条項を含んでいることが判明したため,会社法指令(EU) 2017/1132(OJ L 169, 30.6.2017, p.46-127)の全体をざっと読んだ。

 Directive (EU) 2017/1132
 https://eur-lex.europa.eu/legal-content/en/TXT/?uri=CELEX:32017L1132

これは,全体として行政法の一種だと思う。

しかし,商法(会社法)ではないという意味ではない。

そもそも,商法は,公法の一部である行政法の一種として理解されるべきものだ。

その意味で,公法と私法の分別は,実は,あまり意味がない。

学術分野を細分化するようなコード化は,もっと意味がない。

学術分野を細分化しようとする試みは,日本国の法学だけではなく,日本国の経済活動全体に対して致命的な打撃を与える有害行為であると考える。

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2018年8月 8日 (水曜日)

EU:Digital Education Action Plan

下記のところで公表されている。

 Digital Education Action Plan - COM(2018) 22 final
 https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=COM%3A2018%3A22%3AFIN

しかし,既に手遅れではないかと考えられる。

EUだけではなく,世界中でそうだ。

これからの時代は,従来とは全く異なる精神構造(または,ニューロンの配置)をもった人々の割合が増えるという前提でものごとを考えなければならない。

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2018年6月10日 (日曜日)

実務家・・・

ある方面から「実務家」を大学教員としてもっと採用すべきだとの声がある。

単に「天下りをもっと受け入れろ」との要求に過ぎないとの声もあるし,そうであるのかもしれないが,もし,正当に評価されるべき能力や経験をもつ「実務家」であることを必須の前提とした上で,そのような者の能力や経験を大学教育の中で活かすべきだという主張であるとすれば,それはそれで一応正しい見解であり得る。

問題は,当の「実務家」がどのような実務家であるかに尽きる。

単なる「大学秀才」のようなタイプの人材は,実務の世界においても全く役にたたないので必要がない。そのような者を大学に押し付けて人事上の清算をしようとするのであれば,もってのほかというべきだろう。

理想的には,業務の種類を問わず,通常は遊んでばかりいるように見えても,余裕で他人の何倍もの仕事を短時間で済ませてしまい,明確な実績を積み上げているようなタイプの実務家であれば,一応,その能力を推定しても良いのではないかと思う。

ただし,その仕事の「質」の問題は残る。例えば,その実務家が裁判官である場合,単に判決の数だけではなく,その上訴率や破棄率も十分に考慮に入れられなければならない。現実問題として,事件処理数は十分であるように見えても,実際には事実認定力や証拠の読解能力が実質的にゼロに近いような裁判官や,当該事件の解決のために必要な専門知識を極めて短時間の間に,またたくうちに吸収・咀嚼・応用することができるような優れた能力を全く欠く裁判官は存在する。

行政官の場合,論説や解説書のようなものを多数著作しているように見える場合であっても,実際には,組織としてそのような論説や解説書を作成するのが普通であり,また,その作成に際して関連分野の専門家に一部下請けをさせたり,専門論文等の一部をコピペしたりして作成することも多々ある。それゆえ,当該行政官が実際には何文字を実質的に書いたのかを精査してみなければ,当の者の実際の能力を測定することができない。このことは,企業の上級幹部のような場合でも同じである。

そういうわけで,単に「実務家」であるというだけで所期の効果をあげることができるという保証はない。現実には,優れた人材というものはどこでも極めて希少なので,どこでも引っ張りだことなっている。このことは,将来においても変わらない。そして,一般的には,当の本人に(家族の介護などの)特殊事情でもない限り,離職など考えられない。そのような特殊事情は,何らかの機会に本人が口にすることでもない限り,他人からは全く知ることのできないものであるのが普通だ。だから,非常に優れた人材の場合,どうして離職したのか,誰にも本当のことはわからない。

大学の人事担当者は,そういうことを熟慮した上で,教員人事というものを考えるべきだと思う。

ただし,正規に大学院を卒業し,学位を得ているというだけで当該の者が優れた人材であるという保証もまた全くないということも忘れてはならない。

当該の者の実力は,当該の者自身による実績の積み重ねによってのみ,正確に測定され得る。

それゆえ,若い世代の研究者(研究者志望者)には,「学者というものは書いてなんぼの世界だ」と口を酸っぱくして教えるようにしている。ただし,そのあとは当の本人の問題なので,無理やり論文を書かせるようなことはしない。

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2018年5月23日 (水曜日)

英国:個人データ保護のための適切な手立てを講じなかったとして,Greenwich大学に対し,12万ポンドの制裁金

下記の記事が出ている。

 Ahead of GDPR, UK fines University of Greenwich £120,000 over data breach
 ZDNet: May 22, 2018
 https://www.zdnet.com/article/ahead-of-gdpr-uk-fines-university-of-greenwich-120000-over-data-breach/

日本国の大学において,データ保護責任者を設置しているところはほとんどないのではないかと思われるが,検討すべき時期に来ているのだろうと思う。

特に,欧州からの留学生や研究者の交換を促進している大学においては,EU並みの個人データ保護の体制を整える必要があると考えられる。

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2018年4月18日 (水曜日)

ちょっと驚き

明治大学では,情報関連の講義を担当するほか,「法と情報コース」のコース主任としてコース科目の企画・運営の仕事もしている。

2018年度は,法学部の情報関連科目の受講希望者の数が例年よりもかなり多く,驚いている。

原因はよくわからない。

しかし,更に気合を入れてコース運営に努めたいと思う。

***

受講者の数が多い場合,当然のことながら,受講者の資質・性格・能力等にかなりのばらつきが出てくることになる。

私が伝えたいと思う内容を受容する能力や程度にも相違があることだろう。

しかし,可能な限り,受講してよかったと思ってもらえる講義としたい。

例年よりも力を入れてレジュメも作成し,提供しようと思う。

理想的には,レジュメなしに,講義内容を受講者が自分の頭でまとめてノートをつくるのが最も良く,大学4年間にそのようなノート作成の努力を積み重ねていれば,就職活動においても,就職した後においても,基本的に困ることがほとんどないはずだ。けれども,現実には全ての学生にそれを期待できない状況にあることは否定できないので,レジュメを作成する。

受験予備校の授業のように余りにも丁寧過ぎる授業は,受講者のサバイバル能力を大幅に劣化させてしまう最大の原因になるので,私は,基本的に反対だ。社会人になると,誰も丁寧に教えてくれることなどあり得ない。自分の責任で,自分の力で生きていかなければならない。だから,彼らに対してサバイバルのための考え方の基本を教え,彼らが社会人になったときに生きるためのノウハウを少しでも伝授することも教員としての大事な仕事の1つだと考えている。

一般的には,講義内容が分からなければ積極的に質問し,決して安くはない学費を1円でも回収しようとガツガツする学生が好ましい。ただし,良い質問をするためにはそれなりにしっかりと予習し考えておかないといけないので,単なる思い付きだけでは良い質問をすることもできない。

***

大学院では,今年の5月25日に適用(施行)されるEUのGDPRの解説・比較法的検討・関連法情報の入手を骨子とする講義科目も提供している。

今年は,社会人の聴講希望者もあるので,目いっぱい気合を入れて授業と取り組みたいと思う。

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2018年4月13日 (金曜日)

SOFTIC:判例ゼミ2018

SOFTICにおいて,下記のとおり,一般向けセミナーが開催される。

 SOFTIC:判例ゼミ2018
 http://www.softic.or.jp/semi/index.html

SOFTICの関係の諸先生方とはかねて(公私にわたり)交際があるので,講師陣の質が非常に高いということを保証できる。

ただし,過日,SOFTICで講演をした際には,椙山敬士先生から飲みに誘われていたのだが,たまたま多忙のためお断りするという失礼をしたままになっている。そのお詫びのしるしに,いずれ,こちらからお誘いしようかと思っている。

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