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2025年11月30日 (日曜日)

法とコンピュータ学会第50回記念大会

昨日(2025年11月19日),早稲田大学小野記念講堂において,「法とコンピュータ研究 半世紀の歩み」と題する記念大会が開催された。

私自身は,ビル・ゲイツとほぼ同年齢であり,30歳の頃からコンピュータによるデータ処理という法的課題と取組み,裁判官在任中から多数の論文を書き,主として判例タイムズ誌上において公表した。そのことに関しては,故倉田卓次氏に大きな恩がある。そして,1993年にそれらの論文をまとめた『裁判実務とコンピュータ』を刊行した。
約40年間,このような法的課題と付き合ってきたと言える。

法とコンピュータ学会は,既に退会している。その原因は,非常に親しいごく数名の方しか知らない。
当時理事長だった野村豊弘先生からは随分と慰留されたが翻意しなかった。
野村豊弘先生には大変お世話になっており,特に,フランスにおける伝統的な民法教育がどういうものであったかということ,そして,動植物における系統分類学の基本に精通することが法学研究の基礎であるということを教えていただいたという学恩がありながら,誠に申し訳ないことしたと思っている。

さて,今回の研究大会では,法とコンピュータ学会の会員ではないけれども元理事も担当した研究者として招待講演という位置づけにより,丸橋透教授との対談形式により講演を行った。

与えられたテーマは,「プラットフォームと法-誰のための?」。

丸橋透先生から依頼を受け,もし断ったらどういうことになるかという説明を聞いた上で,受諾することにした。
丸橋透先生には様々なことで大変お世話になったので,基本的に断ることができない。

この講演内容の記録化に関しては,事前に事務局からビデオを公開して良いかという問合せがあったので,録音内容からの文字起こしのために使用することは許諾するが,それ以外の目的のために使用することは許諾しないと回答してある。

AIにより(様々な違法な目的のために)改変された内容の画像,動画,音声等があっという間に流通してしまう時代なので,どの組織・団体においても,そもそも録画・録音を禁止することが重要であり,万が一にも録画・録音の類が流通した場合には,当該流通させた者を業務妨害罪により長期間服役させるような仕組みを整えることが重要だと考える。基本的に禁止されているのであれば,録画・録音の類が流通しているというだけで,直ちに,その違法性が推定されることになる。

何でもかんでもネットで流通させることは「知識の窃盗集団」を利するだけなので,良くない。

この講演内容は,後日,整理・推敲した上で,法とコンピュータ誌上で掲載されることになる。

対談の中で,丸橋透先生から「誰のための?」という副題の種明かしをするように示唆を受けたが,明確な種明かしはせずに実質にそれに相当する説明を行った。
その種明かしは,下記のところでより明瞭に示唆されている。

 スパイに身も心も捧げる行為
 Cyberlawブログ:2025年11月18日
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2025/11/post-fd22ee.html

対談の中では,最近のEU,米国,カナダの立法動向に関する話題にも触れた。
米国の現大統領の動静や中国政府の動向等が非常に流動的な状態にあるので,来月には全く別の政治的・経済的状況になっている可能性がないわけではないけれども,丸橋透先生と共に,現時点におけるベストの見解を示すことができたと思う。
丸橋透先生から質問があったので,(特に若年の)児童に対するSNS及びGPTの禁止・抑制に関する世界動向とその理由についても述べた。

インフラとしてのプラットフォームが独占的地位を確立すると,人類全体に対する最大の脆弱性要素となってしまうので,全人類によるリスク管理が必要になる。つい最近の事例も含め,その例証となり得るような大事故が連続して起きている。

結局のところ,かつて,IBMによる極端な独占と集中の弊害が非難され,MicrosoftやAppleのような超分散型のスタンドアロンPCや業務用の中規模ネットワークとワークステーションが台頭したけれども,それらの企業が離合集散を繰り返しながら,結局は,かつてのIBMと同じような立場を確保してしまっているので,結局のところ,初期の頃にMicrosoftやAppleからIBMに対して発された非難がそのままMicrosoftやAppleに妥当するような状況となっている。

野心と欲望を全面的に是認すると,誰がどのようにやっても,結局同じことになるという「性悪説」が基本的に正しいということを,人類は,約50年かけて実証してきたのだと言い得るかもしれない。

EUの規則(EU) 2022/1925(デジタル市場法)に関しては,細かな解説をしている時間的な余裕はないと判断していたので,その参考訳の解説の中で事前にやや詳しく解説を書き,EUの関連法令及び日本国の関連法令との対応表のようなものを作成して収録しておいた。講演の中では,基本的には,その対応表を読んでほしいということだけを述べた。

 法と情報雑誌70号(第1分冊)
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2025/11/post-24085c.html

いずれにしても,(会場に参加していた各分野の方々の顔に泥を塗るような話題や表現は,私の認知症の症状によるものとして,全部ぬるぬると避けた上で)言うべきことは一応全部言ったと判断した。

この大会を実行するに際し尽力のあった事務局の方々には深く御礼申し上げる。

***

現在の私は,サイバー分野におけるEU法の読解と参考訳の作成にかなり多くの時間を割いている。かつて椙山敬士先生から御教示を受けたことが契機となり,EU法の読解と可能な限り精密・正確な訳文の作成に真面目に取り組むようになった。
この講演の中でも椙山敬士先生に御礼を述べた。

一般に,学者は,誰か先人からの示唆によって啓発され,先人の業績に敬意を表しつつそれを理解し,新たに自分自身の脳機能構造を構築し,誰にも負けない脳神経回路網を創生することによって生きている。
それは,全く符号化されておらず,符号化されることもない経験の一種として記憶されている部分を含むので,AIによって模倣できない。エンジニアが模倣できたと思ったとしても,そのエンジニアが馬鹿だからそう思うというだけのことであり,原理的にその模倣は不可能なことだ。

私は,自分自身の重大な転機の原因となる示唆を与えてくださった先人には敬意を表する。

***

あくまでも一般論として,AI関連のエンジニアの中には,基本的な教養が十分に具備されていない者が存在する。それらの者は,創生の本質を全く知らない。それゆえ,先人の努力や貴重な成果に対して敬意を表する必要性も理解できない。

そのような無教養なエンジニアやCEOが存在することそれ自体が,人類全体に対して敵対的な状態になっていることさえある。

だから,そのような者のほぼ全員が,大規模かつ自動化されたパイレーツマシンとしてのLLMを基礎とするAIシステムの開発に従事・関与することによって巨額の報酬を得ようとする傾向がある。それは,必然であるとも言える。

彼らは,仏教でいうところの餓鬼の世界の中に居住している。

 

 

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