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2025年2月24日 (月曜日)

法と情報雑誌63号

法と情報雑誌63号を作成し,Web上で公表した。

 法と情報雑誌63号
 http://cyberlaw.la.coocan.jp/Documents/LawandInformationMag_No63.pdf

この号には規則(EU) 2024/2847(サイバー回復力法) [参考訳] が含まれている。

 

[追記:2025年3月6日10:55]

誤りが発見されたので,修正版と置き換えた。

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2025年2月19日 (水曜日)

平凡な思考と非凡な思考

電子計算機は,単純な計算の繰り返しのような単純な仕事に関しては,非常に優れている。

それゆえ,既存の符号列とのマッチングのような場合を含め,探索木の網羅的な探索のための計算処理のような場合には,人間では決して達成できないような速度,量,網羅性をもって計算処理できる。しかも,(人間とは異なり)記憶領域を増設可能なので,1個のシステムによって複数の人間の記憶量を合算したような既存の符号列を記録保存しておき,そのような符号列を対象に網羅的な探索を実行することが可能となる。

これは,平凡な思考のレベルにおける「思考もどき」の一種であり,例えば,本当はとても頭が悪いのに優れた家庭教師や受験予備校による徹底した反復訓練により正解のある形式的問題の解を示す符号列への探索という脳機能だけは確保されている者の「思考もどき」と似ている。しかし,それは「思考」ではなく,パブロフの犬と同様の「反応」または「反射」の一種に過ぎない。

生成AIが処理可能なのは,このレベルまでだ。つまり,本質的に模倣マシンでしかあり得ない。模倣対象が存在しない検討課題に関しては,平凡な人間がそうであるのと同様,常に処理不可能または誤作動に陥る。

生成AIを設計・構築・運用しているエンジニアは,例えば,哲学のような分野の超越的な天才と評価可能なレベルの知能をもつ者ではないので,そもそも「思考する」ということが何なのかを全く分かっていない。「知能」の本質を知らず,「訓練」によって模倣機能を強化することだと,平凡人の脳レベルで仮説をたてているだけになるので,本当は「知能」のことを全く知らないと言える。

普通のエンジニアがプラトンの能力をもつシステムを開発することはできない。なぜなら開発者であるエンジニアは,プラトンの思想内容をほとんど理解できていないからだ。同様に,生成AIシステムは,仏陀になることもできない。なぜなら開発者であるエンジニアは,仏陀の教えの神髄を全く知らないからだ。知らない対象に関しては,模倣することができない。

それゆえ,私は,「人工知能」という概念は成立し得るけれども,「人工知能」の実装はただの1つも存在していないという意味で,現時点で存在している生成AIを「知能」の機能をもつ電子計算機の一種として扱うことには反対している。

とはいえ,社会の中に存在する仕事の大部分は,実は,(知的作業ではなく)単純作業の反復だけで構成されているので,そのようなタイプの仕事を電子計算機で置き換えることは(理論的には)可能な範囲内にあると言える。

しかし,大概の場合,(メンテナンスやシステムの更新のための諸費用や電力のための諸費用・産業廃棄物関連の諸費用,そして,どの会社も同じシステムを利用することによる「打消し」の効果の結果としての当該業界における競争力の均等な喪失という不可避の問題を解決するための莫大な開発投資が新たに発生し続けるとに起因する諸費用を含め)AIシステムを利用するコストよりも人間を雇って仕事させた方がかなり安いので,そのあたりのことをよく考えないで生成AIに飛びつく経営者や為政者は「思考」ができていないのだと言える。そこにあるのは,時流に遅れまいとする心理現象に起因する「反応」または「反射」の一種に過ぎない。

***

一般に,イレギュラー処理によって非凡な思考に類似するような現象が発生し得ることは否定できない。

しかし,処理結果の正確性または妥当性を評価するエンジニアが平凡な頭脳しかもっていない場合,「当該イレギュラー処理の結果が本当は真理に近く,イレギュラーではない処理を遂行するためのシステムの基本設計が根本的に誤っているので,全部破壊して最初から全てやり直すべきだ」という発想に至ることは不可能だ。

ほぼ全ての場合において,生成AIを開発する側のエンジニアは「教義は正しい」という信念から抜け出ることができないので,目の前に,例えばガリレオのような天才がいても,異端として火あぶりにしてしまうことしか考えられない。

一般に,凡人は非凡な者をつくり出すことができない。

一般に,非凡な者は,教育や訓練によって生成される存在ではない。

そして,非凡な者をつくり出すことができるのは,教師やトレーナーのような人間ではなく,血統でもなく,運命または神だけだ。

 

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2025年2月16日 (日曜日)

TRIPs協定の時代は終わったかもしれない

一般に,理念だけでは社会は動かない。

社会を動かしているのは(武力に支えられた強制力という意味での)現実の国家権力であり,それを支える資金力だ。

知的財産権の法的保護や仮想通貨等のデジタル財産の法的保護は,保護対象がもともと観念的なものであり現実に存在している物的財貨とは異なるものなので,それが法的な権利であることを国家が強制しなくなれば何もなくなってしまう。つまり,もともと「無」であり,全ての種類の(経済上の)投資と同様,将来的に(現実の国家権力によって強制力が付与されている)通貨と「交換できるかもしれない」という主観的期待を現時点で主観的に金銭評価した価値量の観念しか存在しない。このことは,関連参考訳の解説の中で何度も述べてきたことだ。

その根幹部分が崩れつつある。

そのことは,米国の現代の世界的経済支配の根幹部分を壊すことにもなる・・・ということをトランプ氏もマスク氏も理解していないと想像される。

TRIPs協定の時代は終わったかもしれない。

 

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2025年2月 4日 (火曜日)

英国:世界標準を目指すAI行動準則

下記の記事が出ている。

 UK Announces “World-First” AI Security Standard
 infosecurity: 3 February, 2025
 https://www.infosecurity-magazine.com/news/uk-announces-worldfirst-ai-standard/

 

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