MetaのAIシステムに収集されたデータは削除できないとの指摘-EUの関連法令に違反の可能性
下記の記事が出ている。
Meta uses “dark patterns” to thwart AI opt-outs in EU, complaint says
ars technica: June 7, 2024
https://arstechnica.com/tech-policy/2024/06/meta-to-train-undefined-ai-tech-on-facebook-users-posts-pics-in-eu/
一般に,開発者の立場にたってみると,「自分が学習したんだから,削除する義務などない」ということになりそうだが,自然人の脳内の記憶とコンピュータシステム内の記録保存(strage)とは異なる。
それゆえ,EUの個人データ保護法令でも日本国の個人情報保護法令でも同様に,収集されたデータの削除を求める権利を認めている。
このことは,今後のAI法においても同じとなる見込みであり,個人データについては,AIシステムであろうとなかろうと,とにかくコンピュータによって自動処理されるデータに対しては削除の権利がある。EU法においては,いつでも同意を撤回できる権利を定めているので,このことが一層明確となっている。
加えて.AIシステムによって(法定の除外事由なく)違法に収集され,自動的に複製や改変等の処理が実行されている第三者の著作物に該当するデータだけではなく,適法に収集されたデータであっても,(自然人が暗記した第三者の著作物の内容を生体脳の外に表出するときは,公正な引用の方式によらなければ違法になるし,許諾なく翻案・編集・改変することは全く認めらていないのと同様),生成AIによる処理結果としての出力は,(出典の明記を含め)「公正な引用」の要件を完全に満たさなければならず,その他,著作権法に定める全ての要件を満たさなければならない。
このようなことを他の分野における違法・適法の要件も加えて考えてみると,現在の大規模学習モデル(LLM)は,もし適法に運用しようとすれば,最初から成り立たないやり方だという意味で,本質的に違法なやり方である可能性が高い。
(全く無条件という意味で)自由に収集や改変等が可能なのは,(いかなる法令を適用した場合でも)完全にパブリックドメインとなっているデータだけだ。
また,そのようなあまりにも当然の大前提を全く無視し,LLMには法的問題が全くないという前提で論説を書こうとする弁護士や法学者等が存在する。
しかし,当該の論者が事理弁別能力のない病理的な状態にあるときは治療行為が必要なので除外するとして,それ以外の場合においては,(著作権法違反行為等の)違法行為の教唆行為または幇助行為に該当し得ると解される場合があり得る。
そのような場合には,関連する権利者団体は,断固とした処置をとるべきである。
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