« ZkTeco | トップページ | モバイル契約の際の本人確認方法としてマイナンバーカード使用義務化? »

2024年6月18日 (火曜日)

EUの法令が「成立」したと言えるための絶対条件

EUのAI法案に関し,マスコミを含め,非常に多数の者が誤った情報提供をし続けている。

EUの規則(Regulation)及び指令(Directive)が成立するためには,EU議会の承認議決だけでは足りない。理事会が承認し,EU議会の代表(President)及び理事会の代表(President)が署名したときに法令として内部的に成立する。その後,法令番号が付され,EU官報上で公示された時点で外部的にも成立することになる。

AI法案の三者合意の際に前提とされた正文案に極めて多数の誤りがあるため,その訂正作業が延々と続けられている。EU議会による承認の際に前提とされた正文案にも多数の誤りがあったため,更に訂正の作業が続けられている。この訂正作業が終了し,EUの構成国(Member States)の首脳が同意しなければ,理事会による承認へと進むことができない。現在のところ,訂正作業が完了したとの情報は入手できていないので正確なところが分からないのだが,もし6月中に訂正作業を完了できなければ(夏休みがあるので)9月にずれ込む可能性がある。

そして,正式な法令番号が定められなければEU官報上で公示できない。法令番号が決まっていないために公示されていない法案は,法案なのであって,法令ではないので,発効することもない。発効しなければ適用されることもない。

日本国における立法手続しか知らない者は,基本的なところで理解を誤ってしまうことになるので,この問題に関して発言することを控えるべきだと思っている。うかつに発言すると,「こいつは無知だ」と誤解される危険性がある。

この法案が成立しているのかどうかを調べる方法は簡単だ。EU官報上でEUの法令番号を付された正文が公示されているかどうかを確認し続けるだけで足りる。

ちなみに,最終的な正文は,訂正作業完了後のものとなる。それゆえ,へたに先走って条項の解釈に関する論説等を書くと,正式に公示された後になってから,「どこにそんな条文があるんだ?」との辛辣な突っ込みを受けるリスクはある。

更にちなみに,EUの法令に関しては,正式に公示となった後にも複数の訂正文(corrigendum)が公示された例が多数ある。

 

|

« ZkTeco | トップページ | モバイル契約の際の本人確認方法としてマイナンバーカード使用義務化? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« ZkTeco | トップページ | モバイル契約の際の本人確認方法としてマイナンバーカード使用義務化? »