EU:AI法案の第3読会における議決
下記のEur-lexのデータとして2024年5月21日に行われた議決に関する情報が提供されている。
Document ST_10199_2024_INIT
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=consil%3AST_10199_2024_INIT
この時点では,EUのAI法(AI Act)はまだ成立していない。それゆえ,EUの規則(Regulation)としての番号もまだ決まっていない。
一般に,法令の番号は,他の法令と識別するための識別子(identifier)なので,番号が付されていない法案文は,(成立している法令という意味での)法令ではない。逆から言えば,正規の番号が付されているかどうかを確認することにより,まだ法案文の段階なのか法令として成立しているのかを識別することが一応可能だと言える。
ある報道によると,AI法が発効するのは来月(2024年6月)とのことなのだが,不確実な報道なので何とも言えない。ただ,欧州議会及び欧州委員会が,5月21日に理事会において議決された内容を精読・理解するためにはそれ相応の時間を要することだけは確実だと言える。
あくまでも理屈の問題としては,欧州議会が欧州議会として理事会の議決に納得しなければ,欧州議会の長(President)が署名することもないので,AI法が成立することもない。
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日本の一部マスコミは,EUの国家体制及び立法手続をまだ学習していない。「生成AIを導入したほうがまだましな記事を書けるのではないだろうか?」と言いたいところなのだが,国会図書館のサイト内にある解説にも一部誤りがあるので,やむを得ない面がある。
なお,「3者合意によりAI法が成立」と理解していた人々は,そのように教えている法学者や弁護士のせいでそうなってしまったというようなことがあり得る。自分もそうならないように,更に勉強を重ねなければならないと思った。
ちなみに,AI法案の3者合意(2023年12月)によって合意した内容の中には「通常の立法手続」に従ってEUの規則(Regulation)を制定するとうことも含まれているので,AI法案に関しては,特別の手続によることなく,通常の立法手続に従ってAI法案の制定手続が進められている。
この間,極めて多数の誤りの訂正が重ねられてきたので,当初の立法提案書の内容のとおりの内容でAI法が制定されると予定して考えるのは危険なことだ。全文精読し直し,理解し直さなければならない。
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