米国:連邦政府の全ての部局にAI担当主任官を設けるように大統領が指示
下記の記事が出ている。
Biden orders every US agency to appoint a chief AI officer
ars technica: March 29, 2024
https://arstechnica.com/tech-policy/2024/03/why-every-federal-agency-must-now-appoint-a-chief-ai-officer/
一般に,AI技術の専門家はAI技術と関連する政策担当者にはなれるかもしれないが,AI政策の担当者にはなれない。
一般に,AI技術を統治するためではではなく,国家のAI政策を統治するためには,そのための深く鋭い洞察力と可能な限り幅広い一般教養をもち,かつ,公平に判断できる知的能力をもち,特定のAI関連企業との間で特定の利害関係をもっていないことを不可欠の条件とする。
一応の目安としては,受験勉強をしているわけでもなく,遊んでいるようにしか見えないのに簡単に有名大学に進学したり,非常に難しい国家試験に簡単に上位合格したり,日常茶飯事的に容易に高度で斬新な内容の専門論文を作成・公表してしまうようなタイプの者でなければ,そのようなAI統治に必要な知的資質を期待することはできない。
ただし,そのような能力は,行政官としての調整能力とは異なるものなので,調整機能を担当する補佐職が存在しなければその能力を十分に発揮することがないという本質的な限界はある。意思決定者の指示・決定に従って調整力を発揮できることを不可欠の資質とする行政官としてではなくブレーンとして機能すべき資質の一種であると言える。
一般教養は,過去の書籍を全て読み理解するだけでは得られない。そのような普通の人から見れば遊んでいるようにしか見えない行動であっても,膨大な量の事実そのものから帰納法によって新たな法則を獲得するという長年にわたる努力の継続によってのみ獲得・蓄積される。
普通の人から見れば単に遊んでいるようにしか見えない行動そのものが,実は,そのような者にとって極めて重要な知的栄養源または知的補給源になっているのだ。
一般に,好奇心と探求心が特に強い者は,あることに興味をもつと,納得が得られるまで当該の事柄を探求し尽くすし,そのために必要な関連知識全部を同時に吸収して自分自身の知的栄養の一部にしてしまうのだが,そのような好奇心と探求心があること,そして,そのような好奇心と探求心を満足させるためにありとあらゆる知的能力を駆使し,そのような知的能力を駆使するために必要な行動計画をたて,実施し,自己評価と見直しができることが必須の要求事項となっている。
ちなみに,好奇心や探求心の対象が他人のプライバシーである場合(特に社会の中で枢要な立場にある者のプライバシーである場合),報復として殺されたり社会から追放されることはあり得るし,相手が普通の一般市民の場合でも民事・刑事の法的責任を負う結果となることはあり得る。
それゆえ,一般に,そのような面においても賢い者は,特定または不特定の人間(特に現在生きている人間)を自分の好奇心や探求心の対象とはせず,人間とは関係のない自然の産物や過去の出来事などにその対象を求めるものだし,人間に対して好奇心や探求心をもつ場合であっても,自分の理解と納得が得られればそれでおしまいとし,自分の知見を外部に対して表明することは厳に慎む。そうやって合理的にリスク管理をするものだ。
だから,そのような人材は,大学の工学部等では育成できない。
また,日本国においては,国家機関,地方自治体等の公的機関でも,民間企業でも,当該組織における組織構造と権限分配が少しも明確ではない(←非常に多くの場合,そもそも明確な権限分配と責任分配が全くない)のが普通なので,結局,どうやってもうまくいかないかもしれない。
その結果,日本国は,AI立法においてもAI統治においても,世界中の最劣等国になってしまうおそれがある。
ペリー来航の時と同じような時代の変化が目の前にあるのに,それに対応すると失職してしまう危険性またはリスクがあるため,(企業の従業者であれ公務員であれ)徳川幕府の旗本的なメンタリティの持主である人々は,(自分自身に対し)何か変化を求めたりすることはない。
現実に存在する大部分の人々は,既得権にかじりつき,可能な限り働かないで可能な限り多くの俸給を得たいということだけを考えがちだ。好奇心も探求心もなければ,そして,好奇心と探求心を支える十分な体力と時間と資金がなければ,結局,そうなるのが普通だ。
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