EUにおけるデジタルIDの考え方
任意であることが重要であり,強制してはならない。現時点において,このことは,EUの基本的人権(デジタル権)の一部となっている。
今後,GDPRとの関係を含め,欧州委員会との間で協議の対象となることはあり得る。
***
法律論はともかくとして,現在の政治家は超老人が多いけれども超エネルギッシュ人間ばかりなので,現実に日々の生活の中で苦労している圧倒的多数の普通の高齢者の現状を理解できない。世間とは相当にずれたところにおり,お金に苦労することのない浮世人のようなものだ。
現実に存在している大半の高齢者は,電子的な仕組みを適切に使用できないし,現在使用できていても老化による劣化によっていずれ全く使用できなくなる。
つまり,紙を廃止してデジタル化を強制的に推進しても,そのような政策がいずれ破綻することは100%確実だと断言できる。
しかし,もしそうなっても誰も責任をとらない。何万人もの運転者の生命の危険に直接にかかわるデータ偽装が問題となっているのに誰も責任をとろうとしないダイハツと同じような体質をもっている。要するに,田舎の旦那衆の寄り合い以上のレベルにはないのだ。
ただし,他方において,デジタル化されたデータの名寄せが完了し,保険証と結合することによって回避を不可能とすることの利益を最大限に享受できるのは,税務当局だと断言できる。目下世間の耳目を集めている巨額の脱税や類似の違法行為を見逃すべきではないことは当然のことなので,この点に関しては,私は反対しない。
しかし,日本国の国民の半数近くが老化により劣化してしまう時代においては,当の本人がデジタルIDを適切に管理できなくなってしまうので,某国の工作員によって,何万人もの日本国民が「なりすまし」により乗っ取られてしまうことが相当程度の確度をもって予想される。
このことは,サイバー国防上の最重要な検討課題の一部を構成している。そのことは,これまで,講演等の際に繰り返し述べてきたとおりだ。
サイバー国防は,総力戦なので,自衛隊だけが活動主体なのではない。国民各自が任意に講じることのできる方法としては,EUと同様,デジタル権の一部として,ネットとの接続を切断する権利(disconnection right)を確立することだと考えられる。
このことの検討は,個人のデジタル権の一部としてだけではなく,サイバー国防上においても急務だと断言する。
そして,ネットとの接続を切断を実行しても使用できる道具,または,サイバー攻撃によって公衆通信回線が使用不能になっても使用できる道具,それは,紙の証明書にほかならない。
***
誤解を招かないために,より精密に述べておくと,EUの現段階におけるデジタル権の一部としてのネットとの接続を切断する権利は,形式的には,労働環境において人工知能に支配されない権利としての性格が強い。
しかし,この権利は,私見である「デジタル情報化されない権利」と同様,普遍的な権利の一部であるので,労働関係の文脈以外にも当然に拡大されることになると予想される。
| 固定リンク
コメント