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2023年11月 3日 (金曜日)

英国Bletchley AIサミット:Rishi Sunakの発言

下記の記事が出ている。

 AI summit: Education will blunt AI risk to jobs, says Rishi Sunak
 BBC: 2 November, 2023
 https://www.bbc.co.uk/news/uk-politics-67296825

分析してみると,(1)簡単な仕事はAIのほうが迅速・適切に処理できるので,AIに置き換わる,(2)失業を防ぐため,教育活動によって人間の能力を向上させ,AIよりも人間による処理のほうが優れている分野の職業に従事させる・・・というような論理骨格になる。

しかし,この主張は,以下の理由により,荒唐無稽に近いと判断した。

(1)人間の教育には時間がかかるが,同じ期間内における技術発展は,AIによる開発の相乗効果により,はるかに急速かつ高度である。換言すると,教育内容を受容し,スキルや知識を習得する能力はAIの方が高いので,人間はどうやっても劣後する=失業のリスクを解消できない。

(2)国家システムとしての教育は,統一された教育内容が存在すること,それらの教育内容は相当程度にレベルの低い者であっても学習可能であることを必須の前提としている。そのように定式化された教育内容を先行的に学習してしまう能力はAIの方が高いので,その教育内容の受容・習得において,人間はどうやっても劣後する=失業のリスクを解消できない。

(3)高度な教育内容を迅速かつ円滑に受容・習得するためには,生来の高度な脳構造が存在していることを必須としている。そのような脳構造は,遺伝子によって決定されてしまっており,教育による育成は不可能なことだ。つまり,教育制度によって人間の知的能力を全体的に高めることはできない=失業のリスクを解消できない。

以上の理由により,世界規模で大規模失業が発生することが避けられないので,人々は暴力によって現在の社会と国家を破壊するしかなくなる。その結果,人々は,暴力によって情報システムを破壊し,AIエンジニアや政治家を皆殺しにし,殺し合い,その後は,武力において優勢な者が支配者となり,戦国時代に戻ってしまうことを避けられないと考えられる。

かつて,元ラック代表者だった三輪信夫氏がDDoS攻撃の説明のために『北斗の拳』を引用したことを今でも鮮明に記憶しているが,AIによる失業が拡大するようになると,リアルに『北斗の拳』の世界が現出してしまいそうだ。
情報システムやそれを支えるインフラが破壊されてしまうので,電子的な仕組みとしてのAIは機能しなくなり,映画『ターミネータ』の世界は到来しない。
ただし,有機体を含むものとしての「cybernetics」としてのAIの一種である人工生命体(アンドロイドやミュータントなど)は残るので,そのような人工生命体に食われて人類が滅亡してしまうという未来は十分にあり得る。

唯一の解決策は,世界規模でAIを禁止することだけだ。

「いま禁止しなければ,大量失業による人々の暴徒化によって,比較的近未来にAI研究者やAIエンジニアとその家族が皆殺しというようなことになる危険性がある」ということ,仮にそうならないにしても,上記に述べた(1)~(3)の理由の応用として,「現在のAIエンジニアの(基本的には世界の全体像を見渡さない部品製造業的な)知識や能力を学習する能力もAIのほうが高いと考えられるので,近未来において死滅的に失業してしまう職種の筆頭にAIエンジニアがあり得るということ」を迅速かつ自律的に学習できないのであれば,そのように迅速かつ自律的に学習できない者は,AI研究者やAIエンジニアとして要求される必須の基礎的知能が具備されていないということを自分自身で証明していることになるだろう。

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一般に,こういうことを書くと評判が悪くなってしまうのが通例だし,誹謗中傷の的となってしまうこともあるので,こういうことに関し,賢い人は,完全に理解していても何も言わないし何も書かない。だから,結果的に,悪貨が良貨を駆逐してしまうことにもなる。

私は,老化による劣化のため,あと何年生きていられるか,あと何年調査研究を続けられるか全く予想できない状態になっているので,世評等を気にすることなく,あえて書くことにした。

一般に,高校で成績優秀というだけでは大学法学部に進学できない。大学法学部で成績優秀というだけでは大学院や法科大学院に進学できない。生来の能力差と事後的な学習内容を基礎とする選別が実施される。

法科大学院で成績優秀というだけでは司法試験に合格できない。司法試験に合格したというだけでは,実際に法律職(裁判官,検察官,弁護士など)に就職できない。生来の能力差と事後的な学習内容を基礎とする選別が実施される。法律職に就くことができても,職業上の大きな成果をあげることができるかどうかはわからない。本人の努力の継続が不可欠なので,それを欠く場合には,優れた人材だと評価されることはない。そして,運の要素が大きすぎる。運に恵まれなければ,よい仕事を担当することができない。

大学院で成績優秀というだけでは大学法学部教員に就職できない。世間の様々なしがらみや運が作用するところが大きい。大学法学部教員の職に就くことができても,立派な論文等を大量かつ迅速に生成できるかどうかはわからない。それを決定するのは,生来の能力と本人の継続的な努力の蓄積だ。独創的な研究を遂行できる能力をもつかどうかは遺伝子が決定することなので,教育や訓練によって育成できない。そして,生来の能力があっても,(資金調達と関係することを含め)運に恵まれなければ研究成果を正規の研究業績として公表することができない。

以上のような非常に高度なレベルに属する知的能力における遺伝子の支配は,(例えば,オリンピック競技やワールドカップ競技における上位入賞者のような)非常に高度なレベルに属する運動能力における遺伝子の支配と完全に同じ種類のものであり,教育や訓練によって解決できる問題ではない。

逆に,生来の遺伝子が優秀であれば,学歴・学位・職歴等とは完全に無関係に,(独学として)自律的な学習と派生論理の自動生成を脳内で継続的に遂行し続けること,そして,学術論文の書式や表現パターンを機械的に学習し,自律的に分類・整理した上で頭脳に収納してしまうことにより,当該分野における既存のどの学術論文よりも優れた独創的な学術論文を書けるようになることは可能である。

このことは,(平凡なレベルではなく,高度に専門的なレベルの能力である限り)全ての知的能力について言えることだと思う。

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一般に,(単純な確率論と効率性を基準にして測定した場合)自律的学習型システムは,直近かつ高頻度の入力によって一定のパターンを学習する。

一般に,AIシステムの開発において,直近かつ高頻度の入力は,その開発行為それ自体によって与えられる。それゆえ,当該AIシステムは,真っ先に,そのシステムを開発しているAIエンジニアの語彙,入力及び修正のパターン,使用頻度の高い論理やモジュール等を学習してしまうことになる。

だから,AIシステムによってそのスキルや知識などを真っ先に学習されてしまい,AIの方が人間よりも優秀になってしまう可能性が高い職種は,外ならぬAIエンジニアということになる。

『北斗の拳』のケンシロウのような顔をした(自律的な学習により自動生成された)アバターがAIエンジニアの前に出現し,「お前はもう・・・」と冷酷に宣告する日が来るかもしれない。

(補遺)

このアバターの比喩は,生成AIが著作権制度の破壊者であることを明示している。現在でも相当程度まで破壊されてしまっているが,このままでいくと,数年を経ないで,文化的所産によって収入を得ている産業が全て壊滅するだろうと予想される。
これは,知的財産権の分野の研究者や弁護士の責に帰すべきところが極めて大きい。

「人間(自然人)がやったとすれば違法行為となることを自動処理で生成した場合,やはり違法な処理結果となる」という極めて簡単なことがわからない研究者や弁護士は,生体脳の機能に何らかの致命的な欠陥があるかもしれないと自己評価することが許される。

 

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