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2023年10月19日 (木曜日)

ライドシェアの個人情報保護

ライドシェアの議論がある。

現在,(法人タクシーと個人タクシーのどちらの場合でも)タクシー事業者は,個人情報取扱事業者として個人情報保護法及び関連法令の適用を受け,法律の定めるところに従い,乗客の個人情報を適正に取り扱わなければならず,もし違法行為があるときは,個人情報保護委員会及び関連当局は,法律に定める権限を行使する。

しかし,単なる一般人に過ぎないライドシェアの提供者の場合,現実には実態把握が極めて困難になると予想されるので,個人情報保護委員会及び関連当局が所定の権限を行使したくても行使できず,仮に行使できたとしても,(単なる一般人に過ぎないので)何の効果も生じないということになるだろうと予想される。

その結果,被害を受けた乗客は,弁償を受けたければ民事訴訟によるしかなくなるが,単なる一般人を相手に訴訟を提起することには実は様々な障害があり得る。逆恨みなどにより,ネットで叩かれるリスクも覚悟せざるを得ないし,当のライドシェア提供者が反社会関係の者だった場合,かなり深刻な事態が発生しないとも限らない。

しかも,既存の個人タクシー事業者の経営を露骨に圧迫する行為となるので,社会の中で様々なトラブルが発生することが避けられない。きっと,個人タクシー事業者のこれまでの投資が全て水の泡ということになるだろう。

***

蛇足だが,これまで「白タク」として処罰や行政処分を受けた人々に対する恩赦や遡及的な国家賠償も検討しなければならないかもしれない。

私自身はライドシェアを導入すべきではないと考えているが,仮に政府が「ライドシェア」という名称の「白タク」行為を適法行為であると判断しているのだとすれば,(現在の首相や国務大臣を含め)政府の全ての責任者は,関連する現行法令をそのように解釈・運用し,処罰等をしていることに関して「現時点では間違ったことをしている」,「現在の法令は間違っている」と明言した上で,関連する処罰や行政指導等を全て完全に停止し,恩赦や国家賠償のための財源を確保すべきだと考える。

加えて,一般人が運行供用者となるライドシェアにおいては,現行のタクシー事業者としての車両の適切な整備・点検が確実に実施されない可能性が高い。つまり,乗客の安全を確保できない可能性が十分にある制度を国が公認することと同視できる。しかも,ライドシェアの提供者が(自賠責保険以外に)十分な損害賠償保険契約を締結しており,およそ全てのタイプの事故等に対してその契約が適用されるようになっているかどうかは全く不明としか言いようがない。乗客になろうとする者がそのことを尋ねれば乗車拒否となるかもしれないが,ライドシェアの場合における正当な理由のない乗車拒否に関してどのような刑罰法令が適用されるのかも不明だ。
将来,国家賠償を求める集団訴訟の提起があり得ると考えられる。政府には,損害賠償金とするための財源を確保する責任がある。

あくまでも一般論として,まともな政治家であれば,以上のようなことを全て完全に理解した上で,新たな政策や方針を練るに違いないと考える。

関連官庁の上級行政官は,政府に失策がないようにするため,事前に上記のようなことを助言するのが当たり前だと考えるし,少なくとも私が若い頃の高級官僚はそのようにしていたのだが,現在ではそのような様子を感じ取れないところから察すると,組織全体が劣化しているのかもしれない。

 

 

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