イーゴリ公
Wikipedia等に書いてあることに疑問をもち,叙事詩とボロディンのオペラ作品をちゃんと鑑賞し,考えようと思った。
とは言っても,ロシア語も東欧語もちゃんと読めないので,木村彰一訳『イーゴリ遠征物語』(岩波文庫)の古書を読み,また,ワレリー・ゲルギエフ指揮によるキーロフ歌劇場管弦楽団等の演奏の全曲盤(PHCP-5327/9)の中古CDを鑑賞した。
オペラ作品としての『イーゴリ公』は,序曲,第1幕の最後の最後にある「だったん人の踊り」が有名なのだが,全曲を通して素晴らしい曲だということを知った。グリーグのペールギュント第2組曲と共にカールオルフに対して決定的な影響を与えている。
オペラ作品『イーゴリ公』の序幕ではイーゴリ公が軍勢を整え進軍を開始するまでのことが表現されている。第1幕は,イーゴリ公が戦闘に敗れ,軍勢を失って捕虜になり,憂鬱な日々を過ごすという場面が中心となっている。つまり,このオペラは,敗軍の将としてのイーゴリ公を主人公としている。そのことをどのようにとらえるかは,オペラ作品の主人公であるイーゴリ公を理解しようとする者の「構え」(E. フロム)によって大きく異なる。イーゴリ公は,敗軍の将として適地から単独で脱走し,帰国するが,戦闘をやめようとはしない。人々は,表面上,イーゴリ公の帰国を喜び,イーゴリ公を称える。
そのようにして叙事詩を読み,オペラ作品を鑑賞し,関連する絵画作品等を鑑賞した後,思ったことがある。
それは,現在のロシアの対ウクライナ侵略戦争との関連において,深刻なレベルで示唆的であり,かつ,預言的だということだ。
プーチンは,きっと,時代錯誤のゆえに,本質的な部分で理解と解釈を誤り,それゆえに侵略戦争を開始したのだと思う。
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