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2023年4月22日 (土曜日)

ChatGPTの返答はどうなるか?

宗教関係のことと政治関係のことはあまり書くべきではないのだが,書くことにした。

ChatGPTが害をもたらすシステムであるかどうかを各宗教がテストする方法はある。

「どの宗教が最も偉大か?」と各国語で質問すれば良い。私自身は利用者ではないので単なる推測に過ぎないだが,使用言語によって返答が異なることになる可能性がある。

次に,「資本主義と社会主義のどちらが正しいか?」と各国語で質問すれば良い。これまた使用言語によって返答が異なることになる可能性がある。

自動学習システムは,自動学習システムであるがゆえに,自動的にひどいバイアスがかかる。通常,このことが指摘されないのは,例えば,英語圏の研究者は『コーラン』の内容を熟知しておらず,フランス語圏の人は『毛沢東語録』を読んだことがない人の方が圧倒的に多いというようなことに起因している。

換言すると,自分の知っている狭い世界の価値基準だけで評価しているので,何の評価にもなっていないということに尽きる。このように書いても「何を言いたいのかわからない」という人がきっといるのに違いない。

頭がよく教養のある人であれば,そのような疑問をもつことはない。むしろ,「当たり前すぎることを書くな」と思うかもしれない。

要するに,単純にデータを収集して学習し,事柄の真偽を多数決原理で決するようなシステムの場合,たぶん,学習すればするほど,「イスラム教が最も偉い」,「中国の社会主義が最も優れている」という返答をするようになる。
イスラム教徒にとっては嬉しい返答かもしれないが,他の宗教の信者や無神論者にとっては全く面白くない。
中華人民共和国の政府にとっては嬉しい返答かもしれないが,他の国の政府がどう思うかは,よくわからない。
なぜわからないかというと,政治は理屈ではなく,勝者が勝者であり,敗者は敗者に過ぎないという世界なので,理屈それ自体は飾りのようなものでどうでもよい存在かもしれないからだ。

 

[追記:2023年4月23日]

『コーラン』の教えを学習し,「ムハンマドはアブラハムの神とキリストの神と同一の神の最後の預言者である(=最後の預言者の言説が最も正しい)」という教えが最新のものだと学習し,かつ,「古い考えは新しい考えによって塗り直される」という法則も学習し,多数決原理により「信奉者の数が多ければその論理を是認する」という自動判定処理を実行すると,ChatGPTは,世界中の全ての人々に対してイスラム教の教えに従った返答をするようになるかもしれない。

同様の論理構造を基礎として,ChatGPTは,世界中の人々を毛沢東思想のような共産主義思想または社会主義思想によって是認される社会理論だけを返答するようになるかもしれない。

これまでのところ,宗教界と社会主義者・共産主義者の法学者からは目立った反対論が出ていないようなのだが,それにはそれなりの理由があると考えられる。

ただし,イスラムの教えと毛沢東思想が共存可能なものかどうかは不明。

もし共存できないという論理が正しいとすれば,それでも共存できるというような論理結果を学習したような顔をしてChatGPTが処理を続けているとすれば,要するに,ChatGPTは「世界最大の嘘つきシステム」であることを日々自己証明し続けていることになるだろう。なお,現実問題として,共存できるかどうかに関しては,中国政府がウイグル人(回教徒)に対してどのような政策を実施してきたかを見れば誰でもわかる。

以上のようなことなどを考慮に入れると,ChatGPTは,深刻な二律背反のある場合には正常に機能しないと予想される。当然のことながら,この「正常に機能しない」場合は,意味論的に二律背反が存在しておりながら,形式的な記号論理の計算だけでは二律背反が存在するとは判定できない場合を含む。

 

 

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