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2022年2月13日 (日曜日)

お祝いをしたいのだが・・・

このところ,ひどい睡魔に襲われる日が増え,やむを得ず昼寝をするようになった。加齢による衰弱と思われる。

特に顕著な疾患があるわけではない。感染症の可能性もない。しかし,全身状態の判断としては,明らかに衰弱している。もうそんなに長くは生きられないのだろうと既に覚悟は決めている。

そのように覚悟を決めた上で,(いつお迎えがきても)恥ずかしくないように,勉強と研究にはベストを尽くしているのだが,そのために費やすことのできる(知能及び体力を良好に保ち,集中力を維持できる)時間は,1日に概ね3時間~5時間程度がせいぜいとなっている。

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ところで,だいぶ前になるが,司法試験受験を希望する学生に対し,大学の授業として,特別のゼミ(演習)を提供したことがある。その際,受講生に対しては,「合格したら連絡するように。ごちそうしてやる」と話すようにした。

実際,そのように連絡を受けてごちそうした元受講生が複数存在する。良い学生に恵まれたものだと天に感謝する。

卒業後,何年も連絡のない学生もあったが,何年か経た後,ときどき連絡を受けることがある。

何年経っても,連絡がつけば,会ってお祝いをしてきた。

その資金は,理論上も実務上も倫理上も(研究費等の)公費から支出できない性質のものなので,常に私費(個人所得)の一部を割いてきた。そのようにして私費を支出することは,公益にもかなうことだと理解している。

ところが,この数年,私自身が体力的に限界を過ぎてしまっており,しかも,このコロナによるパンデミックが追い打ちをかけているため,お祝いにごちそうしたいと思ってもできなくなってしまった。

年数がかかっても目的を達成した学生には特にお祝いをしてやりたいところなのだけれども,そのような事情の下で無理だと判断したので,お祝いのメールを返信するだけとなってしまった。

もし何年か経って,現在の状況下にある全ての問題が根本的に解決し,私自身が精神的・体力的に回復できたら,もしそれが可能な状態であれば,こちらから連絡して,それらの元受講生に対してお祝いのごちそうをしたいと思っている。

そのような日が来ることを夢見てこれからの日々を送ることにする。

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このように体力に問題が生じているけれども,電子技術の発展により,オンラインで講義を実施することが可能となっているため,電子的な板書を基礎とする講義を実施している。

真面目に受講し,通常の法学の教科書の何倍もの分量の電子板書と参考文献を読みこなし,理解した受講生は,上位の成績を獲得している。

ゼミだけは,できれば直接に会って実施したいところなのだが,同じ事情のために困難があるので,やはりオンラインを基本とせざるを得ない。

受講希望者には事前に連絡できるような手順を尽くしている。

それに応じて,電子メールにより連絡のやりとりをした上で,既に事前の勉強をかなり深いレベルまで進めている(2022年4月からの)ゼミ生予定者もあるようだ。心強い。もともと授業時間だけで私と同じレベルを達成することなど絶対に不可能なことなので,自力による努力の蓄積を高度に求められる。そのことは,私の過去の業績をちょっとでも読めば,誰でも容易に理解できることだろう。

連絡のつかない受講予定者もある。それなりに対応するしかない。自分の人生のチャンスは,自力で獲得し続けなければならないというのに,ちょっと不安が残るが,各人の個性の問題なので,それに合わせて授業を設計するしかない。

しかし,私は,講義においてもゼミにおいても,「自分の実力を自分自身の努力の継続によって高め続けるのでなければ,自分自身の生存確率を維持・向上させることなどできない」と常に述べている。

とはいえ,受講生がそれをどのように受け止めるかは各人の自由だ。

強要はできない。

そこに大学教育というものの本質的な限界がある。

 

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コメント

小笠原信吾さん

コメントありがとうございます。

弁護士としてご活躍とのこと。とても嬉しいです。

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私は,2026年3月で定年退職となります。これまで弁護士登録もしてきましたが,2025年3月末日で廃業することにし,所属弁護士会には退会の書類を提出してあります。

2026年4月以降は,これまで公表してきたEU法等の参考訳の中で不満足なものを再検討し,できるだけ完成度の高いものにするための見直しをし,必要に応じて改訂版を作成できればいいなと思っております。ただし,体力と精神力がもつかどうかは不明です。

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生成AIは,既に存在するものをパクることにかけては最強で,世界最悪の犯罪システムだと理解していますが,犯罪システムとして破壊せよという声が多数派になることはないでしょう。
スパイそのものである情報収集パケットが飽和状態になり,インターネット全体が瞬時にスクラップ化する日までそのようなことが続くと思われます。

Microsoft製品(特にOffice)では,同社のAI製品に自動学習させるため,リアルタイムで利用者の入力がスパイされ続けます。
実は,X(旧Twitter)やMeta(旧Facebook)等でも同じです。それらに限らず,クラウドは全てスパイシステムの一種だと理解しておいたほうが身のためです。
これまでそのような危険が顕在化しなかったのは,多くの場合においては,サービス提供者が法定の義務を遵守し,利用者のデータ等を横領的に二次利用してこなかったからです。

しかし,生成AIのために世界中の情報を先に収集した企業が決定的に勝利するという信念が支配的となってしまった現時点では,全く異なる状況の下に置かれています。

ちなみに,Twitterに関しては,現時点では,イーロンマスクは,これまでTwitterが秘密裏に記録してきた利用者のやりとり全部をAIシステムで二次利用するということを明らかにしています。裏切り行為そのものなのですが,同氏と大統領は,「約束を守る」及び「法令を遵守する」及び「憲法に定められた権限だけを行使する」という基本原則を全く知らないようです。知る気もなさそうなので,(正規の手続を経ることなく)憲法を廃止してしまう気なのだろうと考えられます。

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一般に,弁護士業務では,秘密事項を取扱うことが多いので,生成AIの自動学習のためにリアルタイムで利用者の入力をどんどん吸収してしまうような製品やサービスの使用は厳禁としてください。
そのような製品やサービスを使用しているということだけで弁護士法に定めている秘密義務に違反していることになります。

実は,そのことは大学でも同じで,そのような製品やサービスやクラウドシステムを利用しているということだけで,自動的に,個人情報保護法違反行為,著作権法等の知的財産法違反行為をリアルタイムで実行し続けているサービス提供者(加害者)のための間接正犯の道具のような状態になっていることになります。そのことを知りながらそのようなシステムを導入・運営している場合,(事案により)共同正犯またはそれと同視できる加害者であることになるでしょう。

説明されれば誰でもわかることなのですが,政府担当者や企業経営者は,無知・無能なために全く理解できない,または,理解しているけれども無知・無能のために他に選択肢がないと判断し,やむを得ず使用している,または,実は加害者の一員となっている・・・等のいずれかなのだろうと推察されます。

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大変な時代になってしまっています。

しかし,リアルに爆弾や銃弾に晒されている状況よりは少しはマシかもしれません。

自分自身の頭で冷静によく考え(=多数派の意見が間違っているときには表面的には従ったフリをせざるを得なくても実質的には無視し),自分にできる自衛策を自分自身で構築・具備し,自分の仕事を正しく遂行できるように自分の環境を整えることも人間の知性の一部というものです。

投稿: 夏井高人 | 2025年3月29日 (土曜日) 20時15分

先生のゼミの一期生です。平成11年卒になります。司法試験に合格したのはかなり前になりますが、山形修習を経て、現在、山形県で弁護士をしております。AIと教育について検索していたところ、先生のブログにたどり着き、この投稿を拝見する機会をえました。今更、と思われるかもしれませんが、先生のご体調を記載した文面を拝見し、黙ってはいられないと思い、恥ずかしながら合格報告をいたします。あらためてこのブログを拝見して先生のお考えに接して、知的な刺激を受けることができるのが、先生の元ゼミ生として何よりのごちそうと考えます。乱文ご容赦ください。

投稿: 小笠原信吾 | 2025年3月29日 (土曜日) 10時31分

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