原因不明
EUの最近の規則案を順に翻訳している。
e-CODEX規則案,人工知能規則案及びデータ統治規則案については,既に法と情報雑誌6巻5号に分冊で収録して公表した。
目下,別の規則案を精読中なのだが,これらの規則案に共通の問題点がある。
それは,ミスタイプ等が異常に多いということだ。
私自身もそうなのであまり他人のことを言えないのだが,個人が独力でやっていることではなく,EUの最大の機関が仕事としてやっていることなので,しっかりしてほしいと思う。
私が気づいたミスについては,参考訳の冒頭解説部分の中でできるだけ触れるようにしている。それを原文のミスと思わないでそのまま訳すと,誤訳になる。
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重要な検討事項に関し,その検討過程を示さない翻訳物は,基本的に,信頼性がないと評価したほうが身の安全のためだと考える。
(私の参考訳を含め)その検討過程が間違っていることもある。しかし,検討過程が示されていないと,リスク評価できない。
リスク評価が可能であれば価値判断が可能になる。しかし,リスク評価のための素材が何も提示されていない場合,リスク評価できない。
以上の結果として,翻訳に関する解説が何もない翻訳物は,基本的に,信頼性評価ができない文章だと判断するのが正しい。
そうである以上,出版物としても,また,日本国の国会で可決する条約案にしても,解説のない純然たる翻訳物を対象とする限り,実は,価値のわからないものを売り,価値のわからないものを議決していることになる。
現実には全く解説のない翻訳物のほうが圧倒的に多い。何も研究せずに機械的に翻訳したのか,あるいは,自分の翻訳に自信がないのか,そのどちらかだろうと思う。
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