ニキタ・マガロフ:ショパン 24の前奏曲とピアノソナタ第3番
今日は別の予定があったのだけれども荒天のため中止し,自宅のPCに向かってひたすら仕事をしていた。
疲れたので,ニキタ・マガロフの1991年の江戸川区総合文化センターにおける演奏を収録したCD(DENON COCO-70531)を聴いた。
どの曲の演奏も納得度の高い名演だと思う。前奏曲集の中では,個人的には,前奏曲第15番変ニ長調「雨だれ」と第17番変イ長調の演奏が良いと思った。
ピアノソナタ第3番に関しては,著名な現代ピアニストのLPとCDをだいたい全部もっていたのだが,LPプレーヤーを廃棄してしまったし,事情があって場所的余裕が全くないので,LPプレーヤーを新たに買うこともできない。CDにしても同じで,現在使用しているものはとても小さなミニコンポだ。そもそも,同じ事情により,簡単に取り出せない場所にLPを収納してしまったので,そのジャケットを眺めることさえできない。
そういうわけでLPでもっているものの聞き比べができないのが残念なのだけれども,直観的な印象としては,このCDに収録されているニキタ・マガロフの弾くソナタ第3番は,聴き手の趣味によってかなり左右されることであるとは思うけれども,テンポの揺らし方が非常に自然で納得度が高く,全体として音の厚みのような印象を受ける名演だと思った。第3楽章は,すこぶる美しい。第4楽章は,エネルギーに満ちている。
ニキタ・マガロフの別のCDでも同じような音の厚みのような印象を受ける。フォルテのところでも全ての指の打鍵タイミングと打鍵力とが完全に斉一になっているためにそのように聴こえ,和音の重厚さが増しているのではないかと勝手に想像した。
あくまでも一般論だが,仮に演奏テクニックが完璧であっても,しっかりとした感性と構想力をもっているピアニストでなければこのような素晴らしい演奏を期待できない。ニキタ・マガロフの弾くショパンのピアノソナタに関しては別の機会に録音したCDがあるということを知り,探してみたところ安価でどうにか入手できそうだったので注文した。ただし,まだ届いていない。
ショパンの作品は,弾き手によってかなり異なる印象を受けることがある。そういうものなのだろうと思う。
どのピアニストの演奏を好むかは100%聴き手の自由なので,誰か偉そうな評論家が決めることではない。
私が一番好きな演奏スタイルは,アルトゥール・ルービンシュタインのものだ。人間というもの,そして,人生というものの様々な側面を知り尽くしているピアニストにしか表現できないものがある。それを「これみよがし」に誇張して表現するのではなく,さりげなく,とても自然な演奏の中に滲ませる極めて高度な感性と技法をもっている。
ためらいとあきらめと絶望と情熱と追憶が行ったり来たりするショパンの曲の演奏は,やはり,それに向いた人でないとダメなのかもしれない。
ちなみに,どうでも良いことかもしれないけれども,村下孝蔵さんの「ゆうこ」の歌詞を思い出すことがある。ショパンが好きだったのだろうか?
そのショパンの曲とは,例えば,前奏曲第8番嬰ヘ短調のような曲だったのだろうか?
| 固定リンク
コメント