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2021年9月13日 (月曜日)

研究スキル売買

下記の記事が出ている。

 大学教授ら「研究スキル売買」 サイトに118人、能力偽装の恐れ
 毎日新聞:2021年9月13日
 https://mainichi.jp/graphs/20210913/mpj/00m/040/015000f/1

問題がかなり多数ある。

特に,特定の外国への違法な技術移転の温床となり得ること,それは,情報セキュリティ上及び国防上の脅威の一種でもあり得ること,守秘義務違反や営業秘密の漏洩となり得ること,兼業の禁止がある場合にその違反行為となり得ること,利益相反の問題が頻出し得ることを想定しなければならない。

また,このサービスを利用して得た文書が公的資金の成果物として提出される場合や,公的な調達の対象となる調査結果の成果物として提出される場合には,詐欺行為またはそれに類する不正行為を組成し得るというリスク,大学の場合には一般に学位認定不可能な事態が生じ得る(=全ての大学が機能不全に陥る)というリスクも考えなければならない。

著作権法に定める権利を含め,知的財産権侵害の問題は,当然に,常に発生し得る。

要するに,この種のビジネスモデルは,それ自体として違法なビジネスモデルであり得る。

そのような問題をクリアするためには,この業界を全て公安当局と財務当局の共同の厳格な監視の下に置くことを定め,可能な限り重い罰則を定めることが必要なことは言うまでもないことであるが,他に,利益相反その他の違法行為の防止のため,及び,クリアランス(経営者及び従業者だけではなく,コンテンツ提供者及び顧客の徹底した身辺調査を含む。)の実施のための第三者専門機関による審査を義務付けること,そして,可能であれば,資格要件を法定し,許可制とすることが相当と思われる。

代行して作成された論文や報告書等は,即時,無条件で一般公開とし,(剽窃を含め)何らかの権利侵害があるときには権利者が自動的に発見できるような仕組みを構築することも必要と思われる。

このようなビジネスモデルを野放しにすると,国家が滅びる。

***

個々の事業者によって具体的な事業形態が異なっていると思われるので,ケースバイケースになると予想されるが,プロバイダ責任制限法が適用されない場合には,通常の方法によって証拠開示を求めることになるので,事件を受任する可能性のある弁護士は,そのための具体的な手段・方法を今から検討しておく必要があると思われる。

そのような事件の依頼者としては,著作権や営業秘密等の知的財産権を侵害されたと主張する個人または企業だけではなく,匿名でコンテンツを提供している者の行為が内部規律違反または就業規則違反または公的研究資金における条件違反になると判断する大学その他の研究機関の人事担当者,あるいは,企業や官庁等の人事担当者という場合もあり得る。更に,レアケースかもしれないが,公的調達における入札条件違反があるとの疑いをもつ官庁からの依頼も(あくまでも理論的には)あり得る。

これに対し,警察当局は,従来の基本的な捜査手段を応用して考えれば,適切に対処可能と思われる。

 

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