中国:新個人情報保護法令
下記の記事が出ている。
China pushes through data protection law that applies cross-border
ZDNet: August 21: 2021
https://www.zdnet.com/article/china-pushes-through-data-protection-law-that-applies-cross-border/
私が理解しているところによれば,中国は,EUの全分野の法令を丁寧に研究しており,その手法を緻密に模倣している。かつての大日本帝国と同様,欧州に習う模範的な生徒だと言える。
ただし,中国の法制において基礎としている価値観は,「中国共産党による統治」であるのに対し,EU法は,憲章及び基本条約に定める基本的な価値の尊重を基礎としている点が全く異なる。
中国にはもともと「法家」の思想と思考方法が存在するので,(根本的な価値の相違判断基準を全く別として)道具としてのEUの手法には馴染みやすいのではないかと想像する。
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あまり勉強していない人には理解しにくいかもしれないが,あくまでも一般論として,そもそも法律とは,(平野龍一氏が既に述べているとおり)道具(tool)の一種に過ぎない。その道具を何に使うかは,全く異なる問題となる。
一般に,交響楽団として演奏に従事し,スコアをすらすらと読んで理解できるレベルの人,あるいは,(最も表層部にあるアプリではなく)簡易OSのカーネル部分や基本部分のプログラムを書き,実装できるレベルの能力をもつエンジニアであれば,たぶん,1年~2年程度の勉強(独学)で司法試験に合格できるだろうと思う。要するに全体も部分もその相互関係(全体としての機能メカニズム)を理解できる人であれば,法制度全体の構造と理解の把握が早い。
そのように思えないレベルの人は,司法試験合格まで相当に時間がかかると自覚したほうが良い。
それくらい相似性のある社会現象なのだ。
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EUの基本条約を起草した人々は,とても頭の良い人々だったと思われる。
政治哲学として「社会契約」を叫ぶことは誰にでもできることだが,その社会契約を実装するための精密な構造分析と機能分析を踏まえた基本仕様書としての条約案を書くことは誰にでもできることではない。
EUの「Treaty on the Functioning of the European Union」は,そのような仕様書の一種として理解すると最も合理的に理解することができる。
この条約を「欧州連合の機能に関する条約」として理解し,そのように訳せるかどうかは,その人の構造論的思考及び機能論的思考の能力のレベルに直接に依存している。
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