恩赦
恩赦の要件及び効果は,各国の憲法及び法制によって異なる。
それゆえ,「恩赦」と耳にしただけで日本国における恩赦制度と同じものだと考えることはかなり危険なことだ。緻密な比較法的な法情報調査と検討と考察を要する。
以上を踏まえた上で,あくまでも一般論としては,恩赦制度の基本は,既に訴追された犯罪行為または有罪判決を受けた犯罪行為に対して行われる。
有罪判決のない者または訴追されていない者に対する恩赦はあり得ない。
仮に,有罪判決のない者または訴追されていない者に対して形式的に恩赦が実行されたとすれば,その意味は,「将来,何をやっても絶対に訴追されないし,有罪とされることもない」というとんでもない特権を与えるのと同じことになる。
そのような「対象のない恩赦」または「将来の全ての行為に対する不起訴特権の付与」のようなものが認められるかどうかは,(健全な頭脳をもっている限り)明らかなことだろうと思う。
当然のことながら,そのような恩赦は,無効だ。
[2021年1月18日]
あくまでも仮定の話なのだが,仮に大統領が自己恩赦を実施したとした場合,当該恩赦の対象となる行為が本当に訴追不能となるかどうかは別として,当該自己恩赦行為それ自体が職権濫用行為として新たな犯罪行為を構成することになり,しかも,当該自己恩赦行為それ自体は恩赦の対象とはなっていないという関係が成立し得ると考える。
もし自己恩赦行為それ自体を含む「全ての行為」に関して恩赦を実行可能であるとすれば,いかなる事柄についても法の適用外にある「超人」のようなものを自分自身でつくり出すことが可能であることになる。これは,「王になる」ということを意味するので,民主国家においては,内乱罪または反逆罪の一種を構成することになるとも考えられ得る。
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