未知なることは未知なること
下記の記事が出ている。
ゲノム編集トマト、市場流通へ…GABAを増量
読売新聞:2020年12月7日
https://www.yomiuri.co.jp/science/20201207-OYT1T50147/
一般に,トマトを含め,全ての生物は非常に長い年月をかけて進化してきた。その進化の過程で,何らかの欠陥のある生物は滅び,自然淘汰されてきた。
生体内において特定の種類の化学物質を生成する遺伝子を抑制する遺伝子をもつ生物は,そうであることが必要だからそうなっているのであるのだし,もしそうでなければ何らかのリスクを発生させる可能性が十分にあり得る。
長い進化の過程で,そのような抑制遺伝子をもたない個体も発生したのだろうが生き残れなかったからこそ,そのような抑制遺伝子をもつ個体群だけが生き残ったのだとの推測は十分になりたつ。
そして,そのような抑制遺伝子を破壊することによってもたらされるかもしれないリスクは未知のリスクだ。そのような未知のリスクは,人類の生活にとって負の影響を及ぼすものであり得る。
ところが,壊すだけなら影響評価をしないというのは,根本思想において完全に間違っている。
遺伝子の一部を壊した場合に関する一般的な知見が全く存在しないし,全ての生物に通有する知見が成立するはずもないのに,影響評価をしないということは,国が「将来の国家賠償請求を全て無条件で認諾する」と声高に宣言していることになると理解すべきだろう。
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トマトとはあまり関係がないが,政府は婚活においてAIの活用を推進するらしい。
政府がAI婚活を後押し、希望合わなくても「自分に好意抱く可能性ある人」提案
読売新聞:2020年12月7日
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20201207-OYT1T50151/
AIでないからこそ,婚活の結果として良い人生が得られなかったとしても「自分のせいかもしれない」と思う余地が出てくる。「なんちゃってAI」のようなものに過ぎないのに,AIだと宣伝してしまうと,「全てAIのせいだ」と他者のみを責める傾向をもつ者が増えるだろうと予測される。
そのことは,やはり,将来における国家賠償請求訴訟の多発を準備するものともなる。
だから,個人の人格的側面を評価するためのプロファイリング技術の営利企業活動への応用に対して,国家は積極的ではないほうが賢明と言うべきなのだ。
ここでもまた,国が「将来の国家賠償請求を全て無条件で認諾する」と声高に宣言していることになると理解すべきだろう。
女性を子ども生産装置としてだけ扱い,(AIに責任をなすりつけることによって)誰もよいから結婚させようとする意図があるようにしか思えない。
世間には好きな人と結婚したくても経済的理由により結婚をあきらめている人たちが多数存在する。そのようなタイプの問題は,経済政策によって解決されるべき問題であり,AI婚活によって解決できる問題ではない。
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