米国:「政府における信頼できる人工知能の利用」と題する大統領令
下記の記事が出ている。
米国省庁へAI導入を指導する大統領令はべてが絵空事だ
Tech Crunch: 2020年12月5日
https://jp.techcrunch.com/2020/12/05/2020-12-03-whs-ai-eo-is-bs/
この大統領令なるものの評価及びこの記事に対する評価は一応措くとして,一般に,AIシステムなるものが適法なものでなければならないことは,日本国においても,民法の一般原則が明確に定めるとおりであるし,民法を度外視しても,法秩序というものは適法行為だけを法的に保護する社会システムの一種なので,適法でなければならない。
同様に,そのAIシステムの管理・運用だけではなく,アウトプットも適法なものでなければならない。
管理・運用に関しては,現在のところ,普通の情報セキュリティのマネジメントシステムしか存在しないように思う。当然のことながら,セマンティックな要素に対処できない。つまり,これだけではダメなので,現存のほぼ全てのAIシステムは,適法性の推定を受けることができない。
更に,AIシステムのアウトプットが適法なものであることを自動的に検査するための技術的手法は,現在のところ全く存在しない。それゆえ,AIシステムのアウトプットの適法性も推定されない。
EUにおいては,情報セキュリティに関して,バイデフォルトの原則及びバイデザインの原則が存在する。しかし,日本国の開発者の中でその意味を理解できている者がどれだけあるのか,かなり疑問だ。仮に理解していたとしても,バイデフォルト及びバイデザインで情報セキュリティを確立するための予算を組んでいる企業がどれだけあるのか,はなはだ疑わしい。大学の研究室の場合,これまでのところ,そのような予算は,皆無だろうと思われる。そもそも資金がないし,文科省等もそのような原則に従った設計・実装のための研究費目を認めてこなかったので,公的機関から資金提供を受けることもできない。
グローバルな企業の中で「金儲け主義」の巨大企業がこれらの原則を遵守しているとは全く信じられない。
人類は,そういうものだということを十分に理解した上で,AIシステムなるのものとつきあう必要性がある。
このような見解に対し,「そんなこと実装できるわけがない」との意見もあるが,そうだとすると,そのようなシステムを構想・設計・実装する行為それ自体が違法行為に該当すると言わざるを得ない。「そんなこと実装できるわけがない」と主張し,適法性を確保しないまま突っ走る行為は,法的評価としては,反社会的組織の行動と全く変わらないと言わざるを得ない。
もしそのような開発行為が人間の集団の行為であるとすれば,あくまでも机上の理屈としては,国民または人類全体に対するテロ行為の一種として,破壊活動防止法の適用も検討されるべきだろう。
なお,ここでいう適法性は,当然のことながら,プライバシー保護及び知的財産権保護を含む。
AIシステムの開発者がプライバシー保護や知的財産権保護に精通しているとは信じがたいし,事実,これまでそのような人材と出逢ったことはただの一度もない。専門家と自称する者が多数存在するが,それらの者は,自分自身の極めて狭い知識・経験を基礎として判断できる内容に基づき,自分にとって都合のよい理屈の一部をかじっているだけなので,「プライバシー保護及び知的財産権保護の専門家」と自称すること自体が欺瞞的または詐欺的または反社会的であると断言できる。
無論,私自身もそのような意味での専門家ではない。「ほぼ無知」だと自己評価している。
人間は,謙虚であるべきだ。
それゆえ,コツコツと地道に勉強を重ねている。
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