様々なタイプの自動翻訳が存在し,インターネット上で提供されている。
かなりでたらめなものが多い。しかも,人間が逐一考えながら訳出するという過程を省略させてしまう機能をもっているので,高等教育における学生や研究者の知能破壊効果はすさまじい。それでなくても世界規模で知性の低下が見られるが,今後,人類から知性が消滅してしまい,類人猿の一種だけのような状態に劣化することが必至と思われる。
それはさておき,自動翻訳の中にはAIと自称するものもある。そのアルゴリズムは多種多様なのだが,それらAI自動翻訳の中には,既出の翻訳物をかき集めてデジタル化したテキストを作成し,単純にそのマッチングをし,マッチする箇所の計算結果数値によって妥当性の自動評価をした上で,既存の訳文の一部を合成しているようなものがある。
しかし,一定分量(EU法であれば100本以上の法令)を訳出してみるとわかるのだが,原文の作成者の個性により原文の語彙や文法上の理解にゆらぎがあるので,そもそも原文がゆらぎのないものではないことを理解しなければならない。換言すると,例えば,英語の文法と語彙が既に確定されたものだという前提を完全に捨てるべきで,ケースバイケースで意味をとるようにしなければならない。
これに加え,訳出者自身も経験を積み,理解を深めると訳文の精度を高めるように成長するので,それらの原文と訳文を時間軸等と無関係に単純比較しても,そもそも無意味だ。相対的理論を引用するまでもなく,(常に)相互に絶対値を確定することが不可能なような状態にある。それゆえ,仮にどちらかを基準とする方針(policy)を宣言した上で,その方針に従って翻訳作業を進める以外に方法がない。
そのことを理解できない者が決して少なくないが,それは,もともとの能力に欠缺がある場合を除き,翻訳のための努力ということを継続的に尽くした経験がないから,成長したこともなく,したがって,健全に自己評価することもできない者だからだろうと考えている。そのような者が開発したAIもまた,その程度のものであり,要するにパクリとつぎはぎを自動生成するようなものしか構築できない。
恥ずべきシステムだと思う。
そのようなサイトの運営者も開発者も可能な限り重い法的制裁を受けるべきものだと理解している。
そのような法的制裁を避けるためには,自動生成される訳文のどの部分が既存のどの訳文のどの部分を利用したものであるかを特定した出典表示を自動的に付加すべきだと考える。
真にAIシステムを構築できると豪語するのであれば,そのような自動出典表示機能を付加することなど朝飯前のことだろう。朝飯前でないとすれば,そのシステムは,「なんちゃってAIシステム」だと判定することができる。
これが本物のエンジニアと偽物のエンジニアを識別するための真の判断基準だ。
なお,出典データがそもそも記録されていなかったとすれば,そのことそれ自体で,著作権法を理解し,遵守する能力と意志がないことを明確に自認する行為となっていると考える。そのような出典データを欠くデータ収集しかしていない開発者または運営者もまた,やはり,可能な限り重い法的制裁を加えられてしかるべきである。
このような条件を全てクリアした適法なシステムが存在すると仮定する。
人々は「適法だ」と理解し,ますますもってそのような自動翻訳システムを利用することだろう。
そして,人々の知性崩壊現象が更に加速して進行することになる。
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