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2020年9月15日 (火曜日)

国政調査

当然のことながら,国政調査にも「目的合理性の原則」が適用され,これまた当然のことながら,個々の事項の調査目的と調査事項の内容との間に「比例原則」が適用される。

しかしながら,日本国の憲法学において,この点に関する詳細な検討が行われたことはない。政府部内において「比例原則」に則った調査事項の見直しが行われたことも全くない。今後もないだろうと思う。

一定の傾向性をもつ憲法学者は,非常に明敏であり,目的合理性の原則と比例原則を認めてしまうと,その憲法理論全体が瓦解してしまうことを知っているため,あえて異を唱えることなく,黙認してきた。

そのように黙認することによって,結果的に,政府を陰から支えるという政治的作用を及ぼし続け,または,政治的機能を果たし続けてきたというのが戦後政治の一側面であることを理路整然と否定できる政治学者はいないだろうと思う。

今回の国政調査に関しては,目的合理性の観点からも比例原則によっても不必要と思われる調査事項が多数含まれており,しかも,個人番号制度が整った以上,必要があるときは,目的合理性の原則及び比例原則に従い,個々の政府機関が調査しようと思えばいつでも職権で調査可能な事項がかなり多い。
関係各省庁は,政府の政策決定上必要があるときは,所管事務において収集された個人データを統計処理し,個人識別不可能な統計データとして政府に提出することが可能であり,現実にそのようにしているので,国勢調査のデータがそれ自体として政策決定のために使用されることはない。
それゆえ,あくまでも机上の理屈の問題としては,「個々の国民において記入の努力の必要のない事項について記入の努力を強制するもの」という意味で「意に反する苦役」に該当するとして,違憲訴訟が提起される可能性が全くないとは言えないと考えられる。

ただし,最高裁の裁判官は,日本国憲法の定める仕組みの下において,違憲判決を書くことはないだろう。

この問題は,現行の統計法それ自体の合理性を全く疑うことなく,「法令による行為」として関連個人情報保護法令の適用除外を漫然と認めてきた個人情報保護法学者の重大な怠慢の問題の1つでもある。

ちなみに,国防という観点からは,現行の国政調査の実施方法(執行)には大いに問題がある。

 

 

[追記:2020年10月11日]

統計法に基づく国民の義務であり,統計法それ自体の有効性について違憲判決があるわけでもないので,必要事項を記入し,さっさと郵送して提出した。

ところが,本日,「8日(木)」の時点で提出が確認できない旨の通知が来ていた。郵送先である市役所には即日届いているはずなのに,郵送された事実を認識できていないということを意味している。ちなみに,郵便局本局は,市役所の隣地にある。

一般に,国民に対して面倒な義務を課すのである以上,提出された書類等を可能な限り迅速・正確に処理することは,事務処理を担当する自治体として当然の義務だと考える。

官公庁や自治体は,強制的に徴収した税によって運営されている。それゆえ,「良い行政の原則」に基づき,迅速性・適切性・効率性を重視した公務遂行を心掛けるべきである。

日本国憲法に明記されているとおり,公務員は,国民に奉仕するために存在している。かつての律令制における官吏とは全く異なる。

以上のような感じなのだが,この調子では,電子的な方式によって国勢調査を提出した場合であっても,私の場合(郵送による場合)と同じようなことが多数起きているのではないかと想像される。

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