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2020年5月21日 (木曜日)

特定商取引に関する法律59条1項

マスク等の商品を一方的に送りつける行為に関し,消費者庁は,特定商取引に関する法律59条1項の場合に該当するとの見解を公表しているようだ。

しかし,このような行為は,見本品付の契約の申込みの誘因に該当すると解するのが正しく,契約の申込がない。それゆえ,特定商取引に関する法律59条1項の適用もない。

したがって,同法同条同項に定める14日または7日の期間経過の要件も適用されない。

そして,全く接触のない者に対して事前の連絡も何もなく一方的に送りつけられた見本品については,所有権放棄と解する(または,そのように合理的な意思表示解釈をする)のが正当なので,その見本品を送りつけられた者は,直ちにその見本品を処分可能と解するべきだろう。

仮に所有権放棄にはならないとの見解を採る場合であっても,そのような物品が存在することにより,送りつけられた者の生活の円満な遂行が脅威にさらされているときは,(妨害排除請求権の自力救済的な行使として)その物品を処分しても,緊急避難行為として違法性がないと解することもできよう。

なお,物品が頻回または大量に送りつけられる場合には,事案により,強要罪,業務妨害罪,脅迫罪等の成立を考えるべきだ。

送りつけられた物品が粗悪品や不良品等の場合には,ゴミの不法投棄と同じになるので,関連法規による処罰を検討すべきだ。

要するに,まともではない手口について馬鹿真面目に「契約の申込」を論ずるから全体としておかしくなる。

そもそも「契約の申込」すらない身勝手な行為だと素直に理解すれば,民法の普通の解釈とも整合性のある解釈が可能となる。

特定商取引に関する法律59条1項を適用してはならない。適用すれば,却って,何の責任もない消費者を一方的に不利な立場に追いやることになる。

「木を見て森を見ず」

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