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2019年2月12日 (火曜日)

運輸

昨日,会議の後,某先生と一緒に食事をしながら意見交換をした。

EUの運輸政策も話題に出た。私なりの意見を述べたが,その詳細は省略。

帰宅してから,関連資料をざっと読み,自分の考えを整理してみた。

幾つかメモしておこうと思う。私の残りの人生で研究し尽くせるものではないので,若い世代の研究者が取り組むことに期待する。

1)海上輸送,陸上輸送,航空輸送,宇宙輸送の区別なく,シームレスに輸送をとらえるべき時代が到来するので,現在では物理的な輸送手段や場所毎に分かれている法制を全部一元化する必要がある。

2)1のような状況は,貨物のインテリジェント化によって促進される。すなわち,現在では,人間または企業が個々の貨物(コンテナまたはユニット)を識別し,運送手段等を手配する。しかし,AIの応用技術が高度に発展した近未来においては,人間ではなく機械装置であるコンテナまたはユニットが,自律的に,最適な輸送手段と所要の人間を選択し,予約等の手配を自動実行し,輸送手段や所要の人間の交換等の処理を自動実行する。

3)2の結果,輸送手段を支配することによって成立している輸送業界の勢力図が変化し,インテリジェント化したコンテナまたはユニットを供給または維持管理できる企業が優勢となる。簡単に言えば,輸送手段を提供し運用する企業は下請け的な存在となり,そこで働く人間は,そのようなコンテナまたはユニットを供給または維持管理できる企業の孫請け的な存在または全体としてのシステムの付属品的な存在へと転落する。

4)以上の結果,どのタイミングをとらえて課税するかという基準点の根本的な発想及び基本理論それ自体の変更も必要となる。全ての政府は,全ての物流情報を共有することまでは不可能ではないが,それを前提にして一元的に定められた課税の基準点の奪い合いが発生し,混乱が生ずる結果,政府の地位は逆に大幅に低下し,インテリジェントなコンテナまたはユニットを供給または維持管理する企業だけが一方的に利益を得る状況が発生する。

5)4を避けるための方法は,全ての国が論理的な国境を越える時点で常に多重に課税できるという基本方針に同意することである。これにより物流コストは異常に高まると考えられるが,国家の存続を最優先とする場合には,そのような方策しかあり得ない。

6)5とは反対に,コストの最小化及び利益の最大化を最優先にすると,おそらく,ほとんど全ての国家が財政破綻して滅びる。その結果,治安の維持が不可能となってしまうことから,上記のようなインテリジェントな物流も成立しなくなり,結果的にそのような企業も滅びる。結局,当該企業だけが利益を得るという構図は,長期的には成立しない。それゆえ,企業の存続のための保険の一種として理解した上で,当該企業は,国を保険者として税方式により所定の金額を支払うという意味において,可能な限り多くの税金を可能な限り多くの国において支払い続けるべきである。

7)現在の経済学者の多くが上記のように考えないのは事実であるが,それは,「治安のコスト」をゼロと算定する(=「治安のコスト」を企業に負担させない)という暗黙の前提を必須的に採用しているからである。このことは,数理的な理論においても社会運動的な理論においても変わることがない。ケインズ流の理論でも,実際の応用においては,そのような側面が無視されてしまうのが普通である。それゆえ,そのようなタイプの経済理論は,全て,ほぼ虚構である。私は,そのようなタイプの理論を「キセル乗車型」と呼び,侮蔑している。

以上の諸点は、(経済的または社会的には)国際的な運輸に伴うグローバルな決済と同一の問題の一部であるので,近未来的には,決済と関連する法令も一元化され統合されなければならない。

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