« Razer Phone 2 | トップページ | JET vulnerability »

2018年10月14日 (日曜日)

リーチサイト規制

下記の記事が出ている。

 規制へ 海賊版誘導、運営者らに罰則 著作権法改正
 東京新聞:2018年10月14日
 https://mainichi.jp/articles/20181014/ddm/001/040/167000c

刑事罰もあるので,構成要件が明確で紛れのないものでなければならない。例えば,「専ら第三者の著作権を侵害する目的」のような要件が付される必要がある。

もしそのような要件が付加されるのでなければ,このCyberlawブログを含め,違法なサイトを指摘するためにリンクを設定する行為も「誘導」の行為に含めて解釈される危険性がある。

そのような場合,報道の自由,出版の自由,表現の自由及び学問の自由が根底から否定される危険性が極めて高い。

そのような一般的な危険性をもつ刑罰法令は,無論,日本国憲法に違反する無効なものであるのだが,現在の裁判所が意見判決をすることはないかもしれず,もしそうであれば,表現の自由が存在しない暗黒時代が到来することになる。

民事の条項としても,「みなす」条項には反対である。

「推定する」条項の場合にも様々な難点がある。

運用指針等において「一応の推定」が働く場合を明確に例示することにより,解釈・運用のレベルで対処すべきである。

今回の提案は,いわゆる「ブロッキング」の方法による場合と比較して1万倍以上危険なものだと認識するのが正しい。

(余談)

仮にそのまま可決されたと仮定した場合・・・

例えば,映画作品や音楽作品やゲーム作品等の中に違法サイトへの勧誘または誘導を示唆するような言動と解釈可能な文言や動作が含まれており,それがネット配信されれば,ハイパーリンクと同じように解釈される危険性は残るのではないかと思われる。つまり,映画関係や音楽関係等の事業者や関係者がどんどん犯罪人として処罰されることがあり得る。

特に,人工知能技術が発達し,映画作品や音楽作品の文言等を自動的に解析して自動的にハイパーリンクを設定するような時代がまもなく到来すると想定されることから,この点の考察は非常に重要である。

現時点でも,例えば,PDFファイルではハイパーリンクが自動設定されてしまうことがある。この場合,刑事学関係の論文は,全部ネット上から削除しておかないと「誘導罪」によって有罪とされてしまう危険性を払拭することができない。

一般に,PDFにそのような機能があることは周知のことなので,外形的事実に関して未必の故意を認定することは可能と思われる。

それゆえ,仮に報道されているような罪を制定するとしても,上述のような明確で紛れのない「目的要件」を付加することが必須となるのであり,もしそうでなければ憲法違反となるのである。

(余談2)

今回の件の波及効果は非常に大きい。

特に,高性能のカーナビや自動走行自動車を含め,IoTによってネットに接続された(connected)オブジェクトに関しては,何らかのかたちで当該法令の適用があり得ることを想定しておかなければならない。

その結果,今回の件に関しては,直接にインターネット上で活動している事業者だけではなく,たぶん,ほぼ全ての事業者が既に何らかのかかわりをもってしまっているということを理解する必要性がある。

加えて,通信キャリアと一般に呼ばれてきた接続事業者等にも大きな影響が及ぶことが考えられる。

|

« Razer Phone 2 | トップページ | JET vulnerability »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« Razer Phone 2 | トップページ | JET vulnerability »