昨年,GDPR参考訳の改訂版を出した。その前文の部分はKDDI総研で公開されている版に反映されている。
その後,更に発見されたミスタイプ等を修正し,勉強不足のために誤解のあった部分等を改め,加えて,個人情報保護委員会で使用されている訳語を尊重して訳語の一部を一括修正した再訂版を法と情報雑誌3巻5号で公表した。
2018年5月25日のGDPRの適用(施行)にどうにか間に合わせることができた。
この雑誌は,同人誌として,ごく少ない部数だけ発行しているものだ。通巻23号となったので,2年間続いたことになる。
明治大学の図書館の納本方針を尊重して納本していないので,明治大学の図書館にはバックナンバーがそろっていない。しかし,国会図書館の担当課に相談したところ,受け入れてもらえることになったので,ISSN番号を取得し,納本を続けており,国会図書館にはバックナンバーがそろっている。
この雑誌で提供している参考訳は,速報性を重視していることもあって,誤記や誤訳を含み得るという前提で,関連研究者の参考のために少数部だけ提供しているものだ。それゆえ,「仮訳」ではなく「参考訳」という名称を用いている。
その分野の専門家であれば,誤訳や誤記等があっても,原文を参照して自分でそのように理解することができるであろう。
なお,これまで発見された誤記等については正誤表を公開している。ただし,改訂版により一括修正したものについては,正誤表に反映されていないことがある。
http://cyberlaw.la.coocan.jp/index2.html
法と情報雑誌は,紙媒体のみで発行しており,特に依頼を受け合意を得た場合を除き,公衆送信を認めていない。
そして,引用の体裁をとっているようであっても実質的にみて単なる流用に過ぎないものを公衆送信している場合には,サイトブロッキングの問題で話題となっている漫画サイトと同様,違法行為に該当し得ると考えている。
そのような実質的な流用物を公衆送信する行為が著作権法違反行為になるかどうかについて議論が分かれるところだろう。
けれども,もしそのような実質的には無断流用ばかりで構成されている成果物に対して公費からの支出がある場合,会計検査院は,厳重な検査を実施すべきだと考える。また,発注者である官庁は,少なくとも3年程度の間,当該事業者を出入り禁止とすべきである。
個別に相談を受けて合意をした上でファイルを提供しているところに対しては,公衆送信を含め,自由に改変・編集等をすることを認めているだけではなく,アフターサービスの趣旨も含め,その後に判明した誤記等を修正した版や説明資料等を提供し,また,改訂版を出したときには(改訂1回に限り)その改訂版のファイルを提供するようにしている。
また,ちょっと相談してくれれば,個別の事情と状況に応じて合理的な対応をしてきたつもりだ。
ただし,法と情報雑誌で公表している「参考訳」は,上記のような趣旨のものであるので,「その利用は,基本的に,利用者自身の責任において行われるべきものだ」という原則は,崩していない。
それにしても,さすが,それなりの評判のあるところは,それなりのことをし続けるものだと感心することがある。そのような情報は,研究仲間の間では実名で情報共有している。
さて,2018年5月25日を経過したので,速報性の要素をやや重視しなくてもよい状況となった。
今後は,見直し回数を増やして誤記・誤訳等を可能な限りゼロに近似させる努力を重ねるとともに,この分野における網羅性を重視した選択基準に従って更に参考訳を提供し続けようと思う。
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