IBMが,現行の暗号は量子コンピュータによって簡単に解読できるようになるとの警告
下記の記事が出ている。
IBM warns of instant breaking of encryption by quantum computers: 'Move your data today'
ZDNet: May 18, 2018
https://www.zdnet.com/article/ibm-warns-of-instant-breaking-of-encryption-by-quantum-computers-move-your-data-today/
関連する記事は何度か書いてきたが,このことの影響は極めて大きい。例えば,下記のような記事が出ている。
Does Quantum Computing Threaten Healthcare Data Security?
HealthIT Security: April 25, 2018
https://healthitsecurity.com/news/does-quantum-computing-threaten-healthcare-data-security
(余談)
量子コンピュータ技術によって現行の暗号技術のほぼ全部が無意味なものとなってしまうことに関しては,法制面における影響もある。
例えば,個人データの保護との関係においては,「暗号化されている」というだけでは何の保証も与えていないことになる。「暗号化している」というだけで他に何らの手段も講じない管理者(個人情報取扱事業者)は,安全管理義務を全く履行していない違法行為者であることになる。
また,国は,重要なデータについて,暗号化を励行することを法令によって義務付けることが許されなくなる。無意味な行為を強制すること(特に罰則を設けること)は,それ自体として憲法違反を構成し得る行為である。それゆえ,そのようなタイプの法令は,有効性・合理性の全くない無意味な行為を強制する法令であるという意味で,そもそも全部無効であると理解することになるであろう。
このような技術の変化を踏まえると,現時点において既に,基本的には,「個人情報をデジタルデータ化しない」及び「個人データを電子的な手段によって通信しない」という選択肢しか残らないのではないかと思う。
このような時代が到来することは早い段階から容易に予測可能であった。それゆえ,私は,『ネットワーク社会の文化と法』(1997)において,「デジタルデータ化されない権利」を基本的人権の一種としてとらえるべきだとの見解を明らかにした。
この見解に対しては,いまだに「何を間抜けなことを言っているか」といった類の批判はある。しかし,私は,簡易なリトマス紙のようなものとしてこの理論を使うことができるということを実証し続けてきた。私のことをよく知っている関係者は,そのこともよく知っている。
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