ある会合
昨晩,ある会合があった。
中山信弘先生のお弟子さんを中心にした会だった。
私は,中山先生の弟子ではないが,科研費等の関係でお世話になっていることなどもあって,参加することにした。
当日参加しなかった方も含め,著作権法や特許権法等の分野における非常に優秀な方々を育てたという意味で,中山先生は大学の教員としても非常に優れていたのだろうと思う。
中山先生は,現実には既にかなり高齢になっているのだが,相変わらずお元気で,しかも,すこぶる頭脳明敏。私には到底真似できないと思った。
私は,裁判官当時から実際にコンピュータソフトウェア関連の著作権法がらみの事件を担当することがあったし,著作権関連の論文を書いたこともある。裁判官をやめて大学教授になってからも著作権関連の論文を書き,また,弁護士としてもその関連の事件に何度か関与したことがある。
現時点では,更に複合的で集合的な権利義務の束として,民法上または商法上の権利義務等と一括して取り扱うための方法論を模索し,理論上でも実務上でも研究と実践を重ねている。
サイバー空間の知的財産権及びコンピュータがらみの知的財産権に関しては,そのような総合的な考察が必要となることが実際に非常に多い。
そのような難しい複合的な問題の一部分を個別の権利として切り離し,個別に研究することは素人でもできる。しかし,それだけではプロの研究者または実務家であるとは言えない。
事実としての実体それ自体を冷静に観察し,必要に応じて最も合理的な法律構成ができるようにならなければならないし,全体を一括処理すべき場合にはそのような処理を可能とするような法律構成を考え出さなければならない。
そのためには,理論面においては,在来のやや硬直化した要件事実論をいったん離れ,手段としての権利を主張(claim)としてとらえる英米風の発想も試みた上で,もう一度要件事実論に戻って正しい法律要件の確定を行うという論理的な作業も実践しなければならない。その検討結果は,現実の実務において,その攻撃防御方法としての有効性が確かめられることになる。
加えて,実務家としては,最も効果的かつ効率的な執行方法または権利実現手段を検討しなければならない。
いずれ,これまで長い年月をかけて重ねてきた研究成果をまとめて発表する日が来ることだろう。
若い世代の研究者の中には,これから先,何を解決するために研究を続けるべきかという肝心な部分で迷いを生じている人もあるようなので,少なくとも,これからの時代においてはどのような検討課題が存在することになるのか,そして,その解決のためにはどのような過程を履み,どのような手順を経る必要があるのかを提示することが,私のような者に課された社会的な責務の1つなのではないかと思う。
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