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2018年3月 5日 (月曜日)

「顧客ファーストAIロボ」?

下記の記事が出ている。

 ラーメン店に常連の顔を覚える“顧客ファーストAIロボ”
 Newsポストセブン:2018年3月4日
 https://www.news-postseven.com/archives/20180304_656098.html

現実の運用を考慮に入れると,最悪の応用例の1つだと考える。

顧客ファーストであるためには,個人情報保護法令及び消費者保護法令が完全に遵守されなければならない。個人情報保護方針を定め,それを完全に履行しなければならず,顧客から情報の削除を求められた場合には,関連データを速やかに消去するだけではなく,それ以降,当該顧客に関しては決してデータを記録しないように設定しなければならない。また,その店舗は,その機械装置による顔データまたは音声データの記録によるリスクを顧客に対してわかりやすく説明し,それがいやな場合には店舗から速やかに出ることを促進するために,店舗内に可能な限り大きなリスク警告の掲示をし,それを読んでないような顧客または読むことのできない顧客に対しては,店員が可能な限り丁寧に説明し,それを嫌がる顧客には可能な限り速やかにその店舗から退去することを促す努力を尽くすべきである。

しかし,顔認証または音声認証だけで個人を識別するタイプの機械装置の場合,情報を記録しない設定をするためには,拒否を明らかにした顧客の生体データをやはり記録して対照しなければならないという根本的な自己矛盾がある。それゆえ,このタイプの機械装置は,社会の中で応用してはならないという結論しか出てこない。それ以外の法解釈論は,相当頭の悪い法律家,または,ひどく不勉強な法律家,または,金に目がくらんで嘘をつくことが平気になっている法律家によるものであると断定して良い。

また,記録された情報が犯罪等に悪用され,または,違法に第三者に提供されないようにするため,完全な情報セキュリティが確保されなければならない。

たぶん,通常の店舗であれば,その作業だけで疲弊し,本来の商売が全く成立しなくなる。逆から言えば,本来の商売が成立している店舗においては,個人情報保護も情報セキュリティも全く無視されていると理解するのが正しいので,正しい顧客行動または行動選択としては,そのような店には立ち寄らないに越したことはない。

店舗の経営者の経営判断として最も効果的な方法は,そのような厄介な機械装置を導入しないと決定することだ。

もっとも,そういうものを喜ぶ馬鹿な層も一定数存在するので,そのような店舗は,そういう馬鹿な層をメインの客層(カモ)としてビジネスモデルを構築することになるだろう。

いずれにしても,最悪という意味で,下から第1番目であるという趣旨では「ファースト」な機械装置なのだが,英語の用例としては誤っているので,「顧客ファースト」というタイトルで記事を書くことも誤っていると考える。

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