渡辺貞幸『出雲王と四隅突出型墳丘墓 西谷墳墓群』
下記の書籍を読んだ。
渡辺貞幸『出雲王と四隅突出型墳丘墓 西谷墳墓群』
新泉社(2018)
ISBN-13: 978-4787718334
非常に良い本だと思う。
ずっと前に出雲に出張で出かけたことがあったのだが,もう1度だけ私的な旅行として行ってみたくなった。
この書籍には,一見すると普通のことしか書いていないように見える。
しかし,古代史を徹底的に研究している人々にとっては,「あっ!」と思うことを幾つも発見できることだろう。
特に,出雲建にちょっとだけ触れている部分は,この書籍の中でも最も注目すべき部分だろうと思う。
私見によれば,同じ出来事が,記紀(特に古事記)の中で別の時代の別の出来事であるかのようにバラバラにされて記述されているのではないかと考える。
これまでの日本史の通説とはかなり異なるけれども,たぶん,通説のほうが破れ去るべきなのだろうと思う。
(余談)
「出雲建」の「建」は、普通の学説上では,「たける」と読ませる。
しかし,本当は,どのように読むべきものなのかが明確ではない。
このような場合の学説上の見解というものは,それを主張する者の意見または感想のようなものなので,客観的な事実それ自体とは異なる。意見または感想の一種に過ぎないという点では,木簡等の客観的な史料によって誰が読んでもそのように読むしかないということが客観的に証明されるのではない限り,学者でない者の別の意見や感想と優劣を決することができない。特に,一定の政治的イデオロギーを必須の前提にしないとそもそも成立しないような見解については,注意を要する。
そこで,考えてみる。
「建」は,「たけ」かもしれない。この場合,他の「たけ」という名を含む国神等との何らかの関係(姻戚関係または同盟関係等)にある者という趣旨が含意されている可能性の有無を検討すべきだろう。
また,「建」が「たて」であるとすれば,「建国者(=王)」という趣旨が含意されている可能性の有無を検討すべきだろう。仮にそのように解する場合、「出雲建」とは「出雲王」という意味しかなく,個人の名を示すものではないということもあり得ることになる。
***
周辺の遺跡として,田和山遺跡と姫原西遺跡がある。特に注意して検討すべき遺跡ではないかと思う。
姫原西遺跡からは弩形木製品が出土している。
田和山遺跡からは大量の石鏃が発掘されている。この遺跡のある地には,かつて鉄鏃も存在していたかもしれない。しかし,地表に落ちた鉄鏃は腐食(酸化)されやすく,現代まで残る可能性がほとんどない。
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