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2018年2月 1日 (木曜日)

Management of Cyber Physical Objects in the Future Internet of Things: Methods, Architectures and Applications

過日,SOFTICで講演を依頼され,EUのロボット法提案について,その要点を述べてきた。この提案の中で具体的に想定されているシステムまたは技術の1つとして,EUが強力に推進しているサイバーフィジカルシステム(Cyber Physical System (CPS))またはサイバーフィジカルオブジェクト(Cyber Physical Objects (CPO))がある。このCPS及びCPOに関しては,EUのサイトに詳細な解説があるので,それを読めば凡そのことはわかる。しかし,関連書籍は乏しい。2016年の2月に刊行された書籍なので約2年前に刊行されたものだが,下記の書籍がある。

 Antonio Guerrieri,‎ Valeria Loscri,‎ Anna Rovella & Giancarlo Fortino (Eds.)
 Management of Cyber Physical Objects in the Future Internet of Things: Methods, Architectures and Applications
 Springer (2016)
 ISBN-13: 978-3319268675

この書籍が想定している未来のIoTは,クラウドのような集中管理プラットフォームによって様々な無線デバイスが協調的に管理され,それらが集合的に機能するサイバースマートシティのようだ。

まるで星新一のショートショートに出てくる未来都市のような感じで,停電があると一挙に都市全体が死んでしまうので,電力供給源の破壊を目的とするState Sponsored Attackには極めて脆いと言えるのだが,それはそれとしてさて措くことにして,その実現可能性について考えてみると,このブログでもサイバーシティ批判またはスマートシティ批判として既に述べてきたとおり,仮にサイバー攻撃がないという前提にたったとしても,かなり難しいと考える。

その最大の理由は,無線で通信するスマートIoTデバイスが増えれば増えるほど,輻輳がひどくなり,デバイスの管理不能状態が増悪するということにある。

無線の帯域はかなり狭隘な有限のリソースなのでそうなる。

そして,家屋に固定されたデバイス等の移動性のないデバイスはともかくとして,自動車や航空機のような比較的高速で移動する移動体の場合,0.1秒でも通信の遅延が発生すると,かなり深刻な大事故が発生する危険性がある。要するに,クラウドをプラットフォームとする構想は,そもそも大きな限界があり,都市全体で実用化することは無理なことなのだ。

それゆえ,現時点におけるCPSやCPOの研究の主流は,プラットフォームによって集中管理されず,自律的に分散・協調する群体型のロボットの集合のようなものへと既に移行してしまっている。

2年前の本と言えば,出たばかりの本なのかもしれないが,既にその使命を終えてしまっていると言える。

日本国においては,現時点においても,ネットワーク上のプラットフォームで集中管理するタイプのモデルが主流かもしれないが,今回もまた,置いてきぼり状態なのではないかと思う。

諸外国の誰かが考えた既存のモデルをコピペ的に借りることしか考えないからそうなる。

学問の要は,「自分の頭で考えること」に尽きる。

既に存在しているものを覚えるだけなら機械装置でもできる。

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