松木武彦『縄文とケルト-辺境の比較考古学』
通勤途中の電車の中で下記の書籍を読んだ。
松木武彦
縄文とケルト-辺境の比較考古学
ちくま新書(2017/5/10)
ISBN-13: 978-4480069610
古代の巨石文化に対する著者の情念のようなものがよく伝わってくる良い書籍であると思う。
古代ケルトの文化とユーラシア東部の文化の共通点については,私も何度か書いたことがある。
ケルトは,現在普通に用いられている用語だが,本当は,「ケー」,「ゲー」または「カー」のような音で示される人々のことを指し,「ゲルマン」と呼ばれるのが通例となっている「ゲー」の人々の古音や「夏」の古音もそのようなものであったかもしれない。
その文化の類似性は,ケルトの遺跡から出土する金属製品と周~戦国時代の中国の遺跡から出土する金属製品との間にも見られるもので,人の物理的な移動の可能性を否定する立場であっても,文化の伝播可能性を否定することは無理ではないかと思われる。古代人骨のDNA調査結果を参考にすると,おそらく,人の物理的な移動もかなり頻繁にあったと理解するほうが妥当である。そのようにして伝播した文化の中には墓制も含まれる。この墓制は,スキタイの文化を記述したヘロドトスの『歴史』の記述とも類似性をもつもので,日本国では,組み合わされた巨石を覆土する円墳の墓制につながるものを含む。前方部を接合するという思想は,漢の方墳文化と北方円墳文化との接合を意味するものである可能性がある。漢の方墳文化は,中央アジアを経由したヘレニズムの文化または更に古いピラミッドもしくはジッグラトの文化そのものである可能性がある。
なにしろ現代とは異なるので,伝播と言っても瞬時に伝播することはなく,何十年もかけて次第に形成されたものかもしれない。しかし,相互の影響が全くなかったと考えるのは無理だと解する。
その分野に属する考古学者は,今後,金属器の成文分析を丁寧に進めるべきだろう。そうすれば,後世の贋作を発見して除去する助けともなるであろうし,そのようにして選別された真作のみを用いて比較検討することが可能となる。
ここでもまた,唯物史観及びそれに基づく政治的イデオロギーを完全に否定することから全てが始まる。それは,本体(本家本元)であるロシアと中国では既に過去のものとしてほぼ全面的に葬り去られており,世界の中では日本国の大学等の一部の中の伝統文化のようなものの一種として残存するのみであるが・・・
そんなことを考えながら読み終えた。
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