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2017年11月18日 (土曜日)

画餅

この時期,大学の教員は結構忙しい。

10月~11月は,秋の学会シーズンなので,研究のために忙しい。

しかし,それよりも何よりも,勤務先である大学における翌年度の授業シラバスの作成にかなりの時間を食われるという本末転倒的な状況が恒常化し,更に悪化し続けている。

大学に対する評価機関がそのような劣悪な状況を作り出す諸悪の根源である。

頭でっかちで現実を無視している。

理論的には,目標,手段,所期の結果等を詳細に示すことが望ましいことは否定しない。

しかし,実際には,シラバスが非常に簡素な教員でも授業内容がピカイチという教員はいくらでもいる。

それに対し、シラバスが完璧でも現実の授業内容が最悪という教員もいる。

シラバスのためのシラバスになってしまっているのだ。

私見としては,授業のテーマを示すだけで良いと思う。

それが所期の結果を達成できるかどうかは,教員の側だけの課題なのではなく,受講生との相関関係によって決定される動的なものであり,(評価要素が常に定性的に変化し続けるという意味で)特定の手法の適否を評価することが不可能な事柄に属する。それゆえ,この点に関する自己評価及び外部評価も一切無意味である。

それを無意味ではないと強弁する者の多くは,単なる理論かぶれに過ぎない。

実際問題として,専門の補助スタッフが各教員に数名ずつ常に配属されていれば問題を解決することができるかもしれない。しかし,そのような財政的な余力のある大学は,国立及び公立を含め,どこにも存在しない。

現実を直視しない政策論は,常に,簡単に破綻する。

理論かぶれの者がどのような理論をもとうと,それは各人の自由だ。しかし,それを他人に押し付ける自由はない。

当該評価機関は,速やかに解散すべきだと思う。

(余談)

世に秀才は多い。

私自身は秀才でも天才でもなく,凡庸な人間の一員だ。

ところで,秀才にもいろいろあるが,単なる秀才の中には重大な欠陥をもつ者がある。

自分の頭で考えることができないという欠陥だ。

誰かが考えた理論や知識を覚えているだけ。

それゆえ,それらの理論や知識が正しいものであるかどうかを自分自身で検証したり,検証のために必要な資料を自分自身で調査・検討したり,それらの理論や知識に誤りがある場合にそれに気づいたりすることが全くできない。

まして,誤った理論や知識を改め,新たな理論や知識を構築することなど絶対にできない。なぜなら,生れ出た時に既にその者の遺伝子がそのように脳の構造を決定してしまっているからだ。

無論,そのような人々であっても生存権はある。それぞれの特質に適した人生を歩むことができる。

しかし,そのような人々に対して何らかの権限をもたせてはならない。社会にとって有害である。

他方で,本来は優れた能力をもっているはずであるのに,予備校や受験勉強によって歪められ,硬直した思考しかできなくされてしまっている者も多数存在する。

大学の教員の重要な仕事の1つに,そのような本来は優れた能力をもつ者を見出し,過去の桎梏から解き放ち,自力で勉強し,自分の頭で思考できるようにする機会を与えることがある。

これは,機会を与えるだけのものとすべきであり,決して,教育したり指導したり訓練したりしようとは意欲しないことが大事だ。そうでなければ,教育したり指導したり訓練したりしようする大学教員は,単なる予備校講師と同じになってしまい,結局,その若者が本来もっている能力を自分で発揮できるようにさせないという惨い結果を産んでしまうからだ。

若者には,自分の生きている環境の中で,自分自身で判断し,合理的に適応し,生き続ける権利がある。そして,生まれながらにして優れた能力をもつ若者には,いつかその能力を社会の中で発揮できるように,その能力を更に養い,その能力を合理的に使用するための方法論を知る機会が与えられるべきだと思う。

(追記)

ある学生から,「夏井先生のシラバスは厳しそうな印象を受ける」との意見があったので,どうしてそう思うのか何点か質問してみて合点したことがある。

私自身は普通のことを書いている。

「真面目に勉強する気のない学生は認めない」

ただ,それだけのことに過ぎない。

しかし,それが厳しすぎるというのであれば,誰も来なくて良い。

大学は,勉強するための場であり,それを意欲するための学生を受け入れている。

就職のための通過点に過ぎないと考える学生は存在するかもしれない。それでも構わない。なぜなら,体裁だけでも「真剣に勉強しました」と言えるような学生でなければ,ちゃんとした企業が受け入れるはずがないからだ。

企業は,常に修羅場の中で生きているので,学生が考えるほど愚かであるはずがない。人事担当者は,ちゃんと見抜いている。

そういうわけで,真面目に勉強しようとする学生にはその学生の資質・能力に応じて,必要なものを提供してきたし,これまでのゼミの学生は,それぞれの道を自分なりに歩んでいると思っている。

人生には起伏があるので,おごることなく,しかし,落胆することもなく,事実を踏まえて合理的な対応策を考えながら生きていれば,そうそうひどいことにはならないはずだ。

・・・と考えながらも,結局,私は,古い世代の人間なのかもしれないと考えることがある。

現代の若者の大多数には通用しないかもしれない。

しかし,それでもなお,自分のやり方を貫こうと思う。

少しでも勉強したいと思っている学生には勉強の本質を教える。

勉強が嫌いでも自分なりに理想をもっている学生には,シビアな社会の中で生き延びる方法を教える。

そのいずれでもない学生は,悪いけれども相手にしない。

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