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2017年11月23日 (木曜日)

青い菊?

下記の記事が出ている。

 青いキクの花公開=遺伝子導入で開発-農研機構など
 時事通信:2017年11月22日
 https://www.jiji.com/jc/article?k=2017112201200

一般に,遺伝子組換え技術等によりA種の生物の遺伝子とB種の生物の遺伝子の両方をもつ新種細胞Xを作成し,それを増殖させた場合,新種細胞Xは生物種Aと生物種Bの雑種である全く別系統の細胞塊である。

このことについて異論は全くなく,いかなる反論も成立しない。

それゆえ,新種細胞XをAの品種として品種登録することもBの品種として品種登録することも許されない。間違って登録されたとしても,全て無効である。

仮に「Aの遺伝子をもっている」という理由でAの品種としての品種登録が可能であるとすれば,上記のXについて,「Bの遺伝子をもっている」という理由でBの品種としての品種登録も可能でなければならない。つまり,上記のXでは,Aの品種としての登録とBの品種としての2重登録が常に可能でなければならない。このことは,品種登録制度それ自体の自滅を意味する。

同様に,新種細胞XをAとして販売し,または,Bとして販売する行為は,景品表示法違反行為または刑法の詐欺罪に該当する行為なることを避けられない。

よって,Xを商品として販売しようとする者は,XがAとBの合成物であり,Aの品種でもBの品種でもないことを明示し,消費者が誤認しないようなわかりやすく明確な説明表示を付さなければならない。

なお,一般に,キク科植物は,葉,茎,根等の組織から容易に栄養繁殖する能力をもっているので,仮に上記のAがキク科植物である場合,環境汚染の可能性は絶大であり,決して流通に置いてはならないものであることになる。一般に,マメ科植物の大半も同様の性質をもっている。

この点に関する環境省の影響評価基準に致命的かつ決定的な欠陥があることは既に夏井高人「遺伝子洗浄-消費者保護法及び薬物関連法の無力化-」で詳細に論じたとおりである。現行の方式に従う限り,この分野における環境省の影響評価は,ほぼ全て無意味という意味で無効である。

(余談)

従来の遺伝子組換え等の技術によるのではなく,完全な遺伝子編集が実行された場合において,生物分類学上ではどのような扱いにすべきかは1つの問題であると考えられる。

私見としては,遺伝子編集前の生物とは全く別系統の新種の細胞塊が新たに作成させたと考えるのが妥当であると考えている。

無論,従来の生物分類学それ自体を全部ご破産にしてつくり直すことも考えられる。

しかし,その場合,世界中のほぼ全ての関連特許及び関連品種登録が無効化することを避けることができない。

なぜなら,それらの特許等は,「従来の生物分類学が正しい」ということを必須・不可欠の前提としているからである。

だから,遺伝子を操作して作成した生物は,操作前の生物とは無関係の新種の細胞塊であるとして法的に扱うことが,学術上の整合性という点においても,産業界の利益にとっても,消費者保護という点においても,最も適切な解なのであり,これ以外の解は考えられない。

(追記)

現在のところ,環境省においても農林水産省においても,ある生物種と別の生物種を合成して作出された新種細胞塊の育成物について身体・健康に対する長期影響評価は実施されていない。

しかし,あくまでも一般論として,例えば,菊と豆の合成物を菊の一種だと誤認して食用に供する人は多数存在し得る。もし豆の何らかの遺伝子の作用により生体内で生成する化学物質によるアレルギーをもつ人が豆ではなく菊だと思って食用に供し,ひどいアレルギー障害を発生させた場合,理論的には,身体・健康に対する長期影響評価を義務付けていない農林水産省及び環境省は,その法的責任を免れることができないと考える。

同様に,消費者庁は,そのような合成物について,新種細胞塊の育成物であり,身体・健康に対する長期影響評価を経ていない商品であることの明確な表示がないのに流通に置かれている物品の監視を怠ったという点において,やはり法的責任を免れることができないと考える。

(余談2)

大丈夫なはずのものが全然大丈夫ではないというのが普通になってきている。全て経営者及び当該企業の法務部の責任だと考える。

 素材不正、神鋼に続き三菱マテ系も 「トクサイ」悪用
 日本経済新聞:2017年11月23日
 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23843020T21C17A1TJC000/

遺伝子組換えの場合を含め,異なる生物種の遺伝子を合成して作成される新種細胞塊お及びその育成物についても同じことが言える。データ改竄等のおそれは常にある。

また,意図的な操作だけではなく,理論値とは異なる結果の発生を防止する措置が行われることはほとんどない。

例えば,花の色に関係する遺伝子だけを組み替えたつもりでいても,過失により,別の遺伝子も組み込まれてしまっているということが十分にあり得る。そのような問題を解決するためには,関連する全ての生物種の全遺伝子を完全に解析した上で,データマッチングの方法によりエラーの発生の有無を常に検証しなければならないと考える。

例えば,アレルゲンを含まないとして法的に扱われている植物種Aの遺伝子にアレルゲンを含むものとして法的に扱われている植物種Bの遺伝子を組み込む操作を実施した場合,ターゲットとする遺伝子だけではなくアレルゲンとなる化学物質を生成する遺伝子も混入して組み込まれていないことが完全に証明されなければならないと考える。その証明のためには,生成された新種細胞塊及びその育成物(←成長の過程で生体内で様々な化学変化が生じるため)のいずれについても,全遺伝子の完全な解析が実施されなければならない。

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