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2017年7月13日 (木曜日)

DNA記憶素子へのGIF画像記録実験

下記の記事が出ている。

 Scientists Used CRISPR to Put a GIF Inside a Living Organism’s DNA
 MIT Technology Review: July 12m 2017
 https://www.technologyreview.com/s/608268/scientists-used-crispr-to-put-a-gif-inside-living-dna/

(余談)

未来において,人間の身体を構成する細胞の遺伝子に第三者によって何らかのデータが記録されるようになった場合,その人間の身体は,その人間だけのものではないものとなる。

共有物の一種となると考えることが可能で,その時点で,人間の権利主体性はかなり希薄化すると考えられる。

「権利主体の存在しない社会」では,権利・義務関係というロジックによって社会を統御することができない。

また,そのような人間の生体遺伝子に何らかの外部データを記録する行為は,EUの基本権憲章に定める「完全性の権利」と抵触することになるのではないかと考えられる。

このような問題は,人間の皮膚に,本人の意思に反して刺青をし,それによって当該個人に対して何らかの属性があることを明示するような場合や個人識別のために用いるような場合と類似しているとも考えられる。ただ,それが遺伝子レベルで行われるため,そのデータが子々孫々に伝えられることとなり得るという点が大きく異なる。

(余談2)

日本聖書協会による『旧約聖書』の「創世記」の日本語訳は,下記のところにある。

 http://www.yoyoue.jpn.org/bible/gen1_10.htm

その中のカインの物語には「04:15主はカインに言われた。「いや、それゆえカインを殺す者は、だれであれ七倍の復讐を受けるであろう。」主はカインに出会う者がだれも彼を撃つことのないように、カインにしるしを付けられた」,「04:24カインのための復讐が七倍ならレメクのためには七十七倍。」」との部分があり,示唆的である。

その少し前の部分にあるカインが地面に頭を伏せたとの部分は,「低頭傾首」を連想させるものがある。これは,古代中国において発生したものとされるが,遊牧民と農耕民との非常に長い期間にわたる抗争が続いてきたことを正しく理解すると,これまた何やら示唆的である。

更に,同訳の創世記には「04:20アダはヤバルを産んだ。ヤバルは、家畜を飼い天幕に住む者の先祖となった」,「04:21その弟はユバルといい、竪琴や笛を奏でる者すべての先祖となった」,「04:22ツィラもまた、トバル・カインを産んだ。彼は青銅や鉄でさまざまの道具を作る者となった。トバル・カインの妹はナアマといった」とある。これらの者がノアの洪水の際に死なずに生き残ったと解釈すべきか否かについては見解が分かれるところであろうが,旧約聖書という非常に古い文献の中にこれらの職業分化についての記述があること,そして,それらはの者は全て(神によって印をつけられた)カインの子孫であることは,すこぶる示唆的なことである。

[追記:2017年7月14日]

関連記事を追加する。

 Who Needs Hard Drives? Scientists Store Film Clip in DNA
 New York Times: July 12, 2017
 https://www.nytimes.com/2017/07/12/science/film-clip-stored-in-dna.html

 Scientists Upload a Galloping Horse GIF Into Bacteria With Crispr
 WIRED: 2017/07/12
 https://www.wired.com/story/scientists-upload-a-galloping-horse-gif-into-bacteria-with-crispr/

 科学者たちが馬のGIFを生きている細菌に書き込んだーーえっ、何の話をしているの?
 Tech Crunch Japan: 2017年7月13日
 http://jp.techcrunch.com/2017/07/13/20170712harvard-nature-crispr-cas1-cas2-horse-gif/

(余談3)

こういうことがあるということは以前から知ってたし,私の論文の中でも触れてきた。それゆえ,「ロボット」の概念を考える際に,人間とそれ以外の存在を区別しなかったし,無機質の機械装置,有機質の生命体及びそれらの混合物を区別してこなかった。

そして,制御可能なものを「産業用ロボット(Robotics)」と定義して限定した上で,制御不可能なものも含めて全体像としての「ロボット(Robot)」を考えなければ全く無意味であることを述べてきた。

統一的な概念としては,ウィーナーの「サイバネティクス(Cybernetics)」しかない。

ここでプラトンやアリストテレスを持ち出すのは,明らかに誤りだと考える。

それは,あくまでも人間の「観念」を大前提としているからだ。

しかし,人間の「観念」を要素として考察する必要性は全くない。

フィードバックの機能の有無だけで全て説明可能である。

そのことから,ヒューマノイドのようなものだけを「人工知能(AI)」と考えるような考え方が完全に誤りであることが自動的に導出されることになる。

すなわち,チューリングテストは廃棄される。

[このブログ内の関連記事]

 『史記』の「夏本紀」にある「禹」の時代の大洪水は史実か?
 http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-98a4.html

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