自動車のABS関連の法規制は謎だ
自動車の中にはABSを装備したものとそうでないものとがある。
もともとABSを装備していない車両に関しては,ABSの性能と関連する結構面倒くさい法令の適用がある。
では,ABSを装備した車両からABSの機能だけ削除した場合はどうなるのか?
もともとABSの装備は義務付けられていないので,ABSの後発的な削除を違法行為と解することはできない。
しかし・・・謎が多い。
おそらく,行政担当者は,要らない機能を利用者の意思でどんどん削除し,基本機能だけ残すというような行動を全く想定していないのではないかと思う。
しかし,当該車両の走行における安全性に全く影響を与えることがないことを当該車両の製造・販売会社が保証している場合には,削除することによって公共の安全に危険を及ぼすことがそもそもない。公共の安全に全く影響を及ぼすおそれがないのに何らかの(空虚な)義務を課すことは,無論,憲法違反となる。
とすれば,現行の法令の設計に問題があるということになりそうだ。
もっとも,当該機能を削除しても公共の安全に影響を与えることが全くないとの上記の企業の説明がそもそも虚偽であるか間違いであることはあり得る。
その場合,当該企業は,当該車両の新車価格全額+慰謝料等を賠償すべき義務があると解する。
当該企業がそのような賠償責任を免れたいと考えるときは,可能な限り迅速に,何でもかんでも積極的にリコールし,自社負担で修理または全交換するという選択肢しか残されていないように思う。
以上のように考えてくると,現状の販売価格を前提とする限り,自動車産業は,本来的に原子力産業と同様,本質的にペイしない業種(=永久に黒字転換することのない業種)であり,それが現実には黒字になっているのは,単に「なすべきことをしていないことによる」と解するのが妥当だと思う。
自動車は,現在の税制がそのように想定しているとおり,金持ちの道楽品ということでよいのではないだろうか?
そのほうが地域産業の復活のために大いに寄与する。
もし「そうではない」という見解を採用するのであれば,消費者庁は,自動車の問題についてもっと積極的に取り組むべきだと考える。
(余談)
EUの様々な法令を翻訳してきた。これからもそうすることだろう。
いろんなことを学んだのだが,EUの法令の中には,安全性の確保との関係で,「実装にかかるコストを考慮に入れ」というフレーズが結構頻繁に出てくる。
それ自体としては,そのとおりだと言うしかない。
しかし,言外において,「実装費用を考慮するとリスク回避の具体的な手段を選択することができない場合には,当該の仕事を断念しなさい」ということが述べられているのだと思う。
日本の裁判官は,そのように考えないかもしれない。
しかし,欧州各国の裁判官の中にはそのように考える裁判官が存在するかもしれない。
だから,学問は面白いのだ。
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