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2017年1月29日 (日曜日)

日々更新

人工知能技術それ自体については,私なりの考えはある。特に,社会全体の安全性確保という点では,かなり高い危険度を伴うものなので,あくまでも学術研究レベルまたは研究室内でのみ開発・運用されるべきものだと思っている。

それはそれとして,事実の問題としては,機械的な処理が可能な分野がどんどん機械によって置き換えられてしまうような時代になってしまったことは否定しようがない。そのような事実を踏まえて,ものごとを考えなければならない。

一般に,自分の欲望や願望といったようなものは,事実と反するものであればあるほど強まるものだからだ。

さて,かつては,若い頃に頑張って勉強をし,博士学位を取得すれば,それだけで飯を食っていくことができた。学問研究の速度が緩慢だったので,それが可能だったのだろうと思う。

しかし,現在は違う。

かつては一所懸命勉強しないと解明できなかったことが,現在では,数秒で、人工知能が正しい答えを出してしまうというようなことがある。何年も苦労して書きあげた博士論文が,現在では,陳腐な機械装置が数秒で処理できる程度のものとなってしまうことがあるのだ。

比較法の分野に限定すると,かつては,外国の著名な理論書の単純な翻訳みたいなものでも立派に博士学位を得ることができた時代がある。高名な「偉い先生」の中にもその類がいくらでもあるが,明確に指摘すると名誉毀損で訴えられそうなのでやめておく。知っている人は知悉し,内心では心の底から馬鹿にし,軽蔑しているにもかかわらず,そのことを知らないのは本人だけというのが通例なので,別に私が指摘する必要もないだろうと思う。

しかし,現代では,そんな程度では通用しない。

人工知能技術の応用を含め,自動翻訳の組みあわせにより,原語を理解しなくても大意を得るくらいのことはできるまでになってきている。情報の収集と伝達にしてもそうだ。海外の著名書籍を独占し,自分だけが先行的に翻訳して地位を得るという「ボトルネックを用いた商売」が成立し難くなっていることは否定しようがない。少なくとも,「日本語の独自論文」なるものが実は「単なる翻訳のようなもの」に過ぎないということを自動的に検出するレベルの仕組みは,既にできてしまっている。

「横のものを縦にしただけ」で名誉と地位を得ることができたのは,遠い過去のことだ。

単純な法令の翻訳を翻訳として作成する場合でさえも,翻訳対象である条文等の中から一定の法則性や問題点を見出し,それに対する考察結果を明確に示すような脚注をふんだんに盛り込んだようなものとして当該翻訳物を作成し,または,それと関連する詳細な論文を書いて自分の見解を明らかにするのでないと,学術研究とは到底言えない。

そのような法則性や問題点の発見は,条文だけからは得られない。

可能な限り広大かつ深淵な教養の層のようなものを何十年かかけて構築し,それを縦横無尽に使いこなせるような能力が求められる。

それゆえ,自分の能力が日々更新されることが求められる。

何歳になっても学者をめざす学生のような刻苦勉励の日々を継続することが求められる。

そのように努力を重ねても失敗するときは失敗する。その失敗もまた,自分のための栄養源の1つとなる。

私はそのように考え,失敗をし,後悔することがあっても,それだけでは勉強を断念することなく,更に別の視野を開拓しながら勉強を続けてきた。

そのように努力するのもしないのも個人の自由なのだが,努力を重ねて日々自己を更新しなければ,いずれ屑カゴに捨てられることになるということを自覚した上でそうすべきだろう。

自分の定年までにそのような時代が来なければ「怠けること」に賭けた自分の賭けに勝ったことになるし,そうでなければ賭けに負けたことになる。ただ,それだけのことかもしれない。しかし,後者になる確率が著しく高くなってきているということには留意すべきだろう。

私の場合には,とにかく勉強することが好きなので,今後も更に勉強を続けようと思う。

世間が必要または有用と評価すれば何らかのかたちで社会に役立ったことになるし,世間がゴミだと評価すれば社会に何も役立たなかったことになるのだが,「いずれ前者になるだろう」と自分を信じて学問を続けている。

それが私の人生の賭けのようなものかもしれない。

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