EU:人工知能ロボットの法主体性と人権-欧州議会が報告書案を採択
下記の記事が出ている。
Give robots 'personhood' status, EU committee argues
Guardian: 12 Hanuary, 2017
https://www.theguardian.com/technology/2017/jan/12/give-robots-personhood-status-eu-committee-argues
報告書案は,下記のところにある。
Draft Report with recommendations to the Commission on Civil Law Rules on Robotics
http://www.europarl.europa.eu/sides/getDoc.do?pubRef=-//EP//NONSGML%2BCOMPARL%2BPE-582.443%2B01%2BDOC%2BPDF%2BV0//EN
(余談)
自律型ロボットに対して法人格を与えるという研究論文は既に幾つか存在している。
一応,全部収集して読んでいる。
日本法に則していうと,「法人」の一種として法主体性を認めるということになるのだろう。
その場合問題となるのは,他の法人との人格の競合の問題だ。
とりわけ,ネットワーク型の人工知能システムの場合にはそうで,「override」の問題が無数に生ずることになる。
しかし,従来の日本の古典的な民法学や商法学においては,法人論それ自体としては,人間が組織し運営する法人のみを対象する研究しかなされてこなかったため,いずれも無力だと断定できる。
私が1997年に刊行した『ネットワーク社会の文化と法』の中において主張している「処理主義」の理論に基づいて考察するのがベターである。
なお,一般に,この分野における学術研究は,サイバー法及び情報法の研究者によって行われるべきであるが,その必須の前提として,その研究をする者は,法哲学,民法解釈学,会社法解釈学,民事訴訟法解釈学及び民事執行法解釈学の全てに精通していることを要する。
単なる思い付きだけで空想的な理論体系を構築することは非常に危険なことだ。
[追記:2017年1月14日]
関連記事を追加する。
MEPs vote on robots' legal status - and if a kill switch is required
BBC: 12 January, 2017
http://www.bbc.com/news/technology-38583360
Robots need rights, and kill switches too, warn politicians
ZDNet: January 13, 2017
http://www.zdnet.com/article/robots-need-rights-and-kill-switches-too-warn-politicians/
日本国の総務省でも検討が進められているが,「kill switch」を「must」のものとして実装することを要件とする内容とせざるを得ないだろうと思う。
しかし,完全に自律型のロボットの世界では,「kill switch」はまるで無意味だ。
自律学習によって「kill」の方法を学んでしまうと,自律型ロボットが「kill switch」の「kill switch」を自動生成して自己実装してしまうことになるからだ。
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