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2016年10月12日 (水曜日)

田中重久『日本に遺る印度系文物の研究』

しばらく前に神田の古書店でみつけ,半分くらいまでで読んでそのままにしていた下記の書籍の残りの部分を読んだ。

 田中重久
 日本に遺る印度系文物の研究 
 東光堂(1943)

既に統制経済が厳しくなっていた時代だろうと思うのだが立派なつくりの本で,現在でもしっかりとしている。収録されている写真から得られる情報も多い。

素晴らしい業績だと思うし,非常に勉強になった。

今日議論されている渡来系文化に関する論点の大部分についてこの書籍の中で既に論じられている。敗戦があったとはいえ,このままこの学術成果が活かされるように戦後の歴史学が発展すれば別の歴史学の体系ができあがったことは間違いないと考えるのだが,おそらくGHQによって禁止された部分があり,その後は唯物史観の人々によって黙殺されてしまった結果,長らく埋もれてしまったということなのだろうと思う。

唯物史観が理論的にも現実にも成立しないことは既に明らかだ。従来唯物史観の立場だった歴史学者の中からどんどん転向者が出ているという事実がそのことを明瞭に証明している。

私の主観的な希望としては,若い歴史学研究者には,こうした古い業績にも目を通した上で,自分なりの哲学を自分自身で形成してもらいたいものだと思う。たとえどんなに時間がかかっても,そうしてもらいたいものだと思う。

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