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2016年10月10日 (月曜日)

越境移転

個人データが1個の主権国家内だけではなく,別の主権国家に移転されることを「越境移転」と訳すことがある。原文は,「cross-border flows of personal data」またはこれに類するものとなっている。

私がやっている翻訳では「国境を越えた」と訳すことが多い。

「越境」で間違いはないのだが,「越境」という語には「違法性のある行為」という語感が強すぎる。それゆえ,「越境」を用いることは避けている。

個人データ保護のための法制の学術研究という文脈においては,国境を越えた移転それ自体が問題なのではなく,それが適法に行われるための法律要件の吟味が重要なので,「cross-border」の訳語としては,違法でも適法でもない中性的な訳語を用いることが望ましいと考える。

もっとも,所詮,訳語は訳語に過ぎないし,訳を作成した者の理解を表現しているだけのことなので,きちんとした研究者であるならば常に原文を原語で読むようにすべきことは当然のことであり,訳語の適否といった問題がかなり些末な事柄に属することは否定しない。

(余談)

考えるのが面倒くさいときは,「クロスボーダー」とカタカナ表記するだけにしたほうが無難かもしれない(←ただし,私は,可能な限り,そのようなやり方を避けている。)。

このような英語そのままのカタカナ表記には批判もある。

特に,「日本語ではない」との批判はそのとおりだ。日本語ではない。

しかし,日本国民全員に読んでもらうことを最初から予定しておらず,一定の了解可能な範囲の人々だけを読者に想定している文書であれば,そのように非難されるいわれは全くない。平等主義をここで持ち出すことは間違っている。検定教科書のような特殊な場合を除いては,いかなる文書についても,「全ての人々に対して理解させるべき義務」など最初から誰も負っていない。理解できる人が理解すれば良いのだ。

問題なのは,字義をきちんと調べもせず,「格好良いかどうか」の判断だけで適当に英語風のカタカナの語句を並べるだけのインチキ***のような類の人々が現実に多数存在するということだ。

そのような類の人々に限って,「ないようがないよう(内容が無いよう)」的な頭脳構造をしている・・・というのも一定の発生確率(発生の蓋然性)を認めることのできる経験則の一種なのではないかと思う。

問題の本質をよく考えなければならない。

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