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2016年9月17日 (土曜日)

一般個人データ保護規則第22条

一般個人データ保護規則の全訳を終え,目下,別の仕事をしている。

随分と勉強になった。

日本国政府が同規則に対応すべきであると判断した場合,問題となる条項が多数ある。

目下,着目しているのは第22条だ。

自動的なプロファイリングによって人格評価をすることを原則として禁止している。EUでは,規則違反があると,罰金で処罰されることとなり,悪質な場合には,別の刑事罰が科せられる。あり得る刑としては名誉毀損罪による処罰が考えられる。

仮に日本国政府がこの規則に対応しないという態度を決めたとしても,日本国の裁判所に対する影響はかなり大きなものがあるだろうと思う。例えば,名誉毀損罪の成否に関する判断には大きな影響を与え得る。

例えば,ネット上のネタ(2ちゃんねるネタなど)を自動収集して人物評価をするサイト等は,(公益目的、真実性等の立証は,それが自動処理であるがゆえに自縄自縛となって,基本的に不可能と思われるので)自動評価だというだけで,名誉毀損罪の概括的・未必的故意が認定されることになる可能性が高い。しかも,大規模に多数人に関して自動評価を実行しているサイトでは,個別の表現の自由に含まれる可能性が著しく低いまたは皆無である。他方で,特定の少数の者にターゲットを絞ると,それはそれで別の意味で名誉毀損罪の成立を認定しやすくする要素となる。

もっとも,裁判官の多くが海外の法制の変化を気にしないようであれば,あまり変化はないだろう。

今後,裁判所の判断に変化が発生するかどうか,注意深く判例の動向に着目し続けようと思う。

以上は,あくまでも一般論なので,特定のサイトのことではない。

なお,下記のような記事が出ている。

 Questions about your expense account? Check with the robot
 ZDNet: September 16, 2016
 http://www.zdnet.com/article/questions-about-your-expense-account-check-with-the-robot/

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