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2016年8月14日 (日曜日)

人工知能の自然言語処理問題

下記の記事が出ている。

 AI’s Language Problem
 MIT Technology Review: August 9, 2016
 https://www.technologyreview.com/s/602094/ais-language-problem/?set=602166

この問題は,かつて私が関与したことのある第5世代コンピュータの開発の際にも常につきまとっていた問題の1つだ。結局,解決する方法はないというこで結論が出た。

正確に言うと,構文解析はある程度までできる。しかし,語彙(意味論)となるとお手上げ状態になってしまうのが普通だ。

私見によると,これまでの言語理論が根本から誤っている。

基本的に,文法なるものは存在せず,名詞しか存在しないと考える前提でやってみると,幾つかの課題については打開策を見出すことができる。レガシーな文法理論に固執するようなタイプの言語学者は全てお払い箱にした上で人工知能開発を進めればよいのだ。文法は存在しない。存在するように見えるのは,例えば,現代のフランス語や現代の日本語のように,人工的な文法体系をまず構築し,それに基づいて徹底的な国民教育によりそれを普及させてしまった国では,もともと人工的なものなので,その文法体系によって言語の世界ができあがっているように見えるからだ。しかし,実は逆転している。

古代を考えてみると良い。おそらく,名詞しか存在しない。

同じ名詞が,あるタイミングではまさに名詞として機能し,あるタイミングでは動詞として機能する。しかし,それがそのように機能するのは,相手がそのように認識・理解しているときだけなので,結局は,言語による理解(共感)は存在しないということになる。

そのような根本的な諦念をしっかりと確保した上で,全く異なる理論体系を構築すれば,更に打開策はある。

しかし,どこまでいっても意味論は相手の解釈の任意性に依拠せざるを得ないので,かなり大きな限界がある。

そこで考えるべきことは,もし言語による共感を得ることのできる知的能力を理性と呼ぶとするのであれば,そもそもそのような理性なるものは存在しないということを正しく理解することだ。このような理解を前提にすると,理性的なものとして人工知能を構築することは,最初から不能なことだという誰でも理解することのできる極めて簡単な道理を納得することができるだろう。

(余談)

このブログは,自分の研究用のメモを一般公開しているだけなので,誰かに対して自分のメッセージを伝達することを目的としていない。

(余談2)

文法のような構造を示す論理体系を考えることそれ自体は,文字を記載した書面が普及するにつれ,そこに記載された単語の処理方法を統一するという国家目的のために,プロトコルの一種として人工的に形成されたきたものとだと推定される。すなわち,もともと自然言語それ自体ではない。

書面が普及する前の時代,とりわけ長老や神官等がそれを独占していた時代には,基本的には単語の羅列しか存在しなかったものと推定される(それを現代の学者が,文脈に基づく解釈により,現代の文法に従って現代の言語で翻訳することは,全く別問題である。)。そのような単語の羅列的な文書は,その時々の必要に応じ,長老や神官によって自由に翻訳され,その口から発せされる音声によって王や人々に伝達されたものだろう。甲骨文書なるものを細かく考察すると,このような知見を得ることができる。

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