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2016年6月 8日 (水曜日)

安田喜憲・西谷正編『対馬海峡と宗像の古墳文化』

下記の書籍を読んだ。

 安田喜憲・西谷正編
 対馬海峡と宗像の古墳文化
 雄山閣(2016/5/10)
 ISBN-13: 978-4639023982

非常に面白い。

講演録を論説としてまとめ直したもののようなのだが,収録されている論説の中で,鹿島薫「対馬海峡の成立と日本海の海面変動」(56~73頁)及び平井正則「宗像、沖ノ島を基点とする直線配置」(102~120頁)は特に興味深く読んだ。

「対馬海峡の成立と日本海の海面変動」では,氷河期において朝鮮半島と日本列島とが陸続きにはなっていなかった可能性が強く示唆されている。私もそうだろうと思う。従来,朝鮮半島経由で陸地づたいにやってきたと考えられている動植物の大半について,人為的な移入を考えなければならない。とりわけ,海峡部の水深は150メートル程度あるので,重くて重力に逆らえないタイプの種子の場合,150メートル転げ落ちることはあり得ても,150メートルころげ登ることなどあり得ない。人為的な移入しかないと考えられる。要するに,現在の環境省が「野生植物」と考えている植物の中には,人為的な移入(=園芸植物としての帰化)以外には考えられないものがかなり多数ある(幾つかの代表的な植物については,夏井高人「保久利(ホクリ)-伝統的な有用植物の特定と法的課題-」及び「植物の名称の不公正な使用と景品表示法の適用」で触れておいた。)。根本的な再評価が必要となるだろう。少なくとも,そのような疑いのあるものについては罰則を適用してはならない。

他方,「宗像、沖ノ島を基点とする直線配置」では,古代の天文学の凄さのようなものを思い知らされる。また,漢代の道鏡の中には,単なる祭器ではなく,実は軍用の天文儀のような機能をもっていた可能性が強く示唆されている。私見では,光通信にも用いたのではないかと考えているのだが,道鏡の実用具としての側面についてもっとつっこんだ研究が更になされることを大いに期待したいところだ。

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