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2016年5月28日 (土曜日)

米国:私有地上空を飛行するドローン(無人航空機)を射撃・撃墜することは違法行為かに関する議論

下記の記事が出ている。

 Man takes drone out for maiden voyage, other man shoots at it
 ars technica: May 28, 2016
 http://arstechnica.com/tech-policy/2016/05/tennessee-trucker-fires-three-shotgun-blasts-at-overhead-drone/

(余談)

人間がパラシュートを使って他人の敷地内に無断で降下する行為は,刑法上の建造物侵入罪に該当し得る。しかし,降下中の者を猟銃を用いて射殺する行為は過剰防衛になるだろう。しかし,現行犯逮捕するために猟銃を発射して威嚇する行為は過剰防衛とはならないかもしれない。

では,ドローンはどうだろうか?

空中でも他人の所有物である以上は侵害することは許されない。ただ,物理的に管理可能性のない空間については土地所有者の支配が及ばないと考えるのが日本の通説だろうと思う(宇宙空間を含め,上空に無限に及ぶという学説もかつてはあった。)。

問題は,この物理的な管理可能性の理解に尽きると思う。電磁波によるジャミング装置は相当上空まで有効だろうと思われるので,それを用いて制御不能とし墜落させる行為は,正当防衛の範囲内にあると考えることもできる。要するに,電磁的手段の登場により,物理的な支配可能性のある空間的範囲がかなり拡大したと考えることができる。

このことは国有地や公有地でも基本的には変わらない。

ところで,民法を読めばすぐに理解できるとおり,日本の国土には無主の土地が存在しないことになっている。

その結果,玩具のドローンを飛行させようとする者は,自己の所有地(所有地がない場合には自己の居住する家屋内)においてのみ,それを飛行させる自由があるということになりそうだ。

ただ,物理的な支配可能性の意義及びその対象に関しては,議論すべき課題が山積している。

民法学者は明治時代以来,そのような基本的な部分に関する理論的検討をずっと怠り続けてきたので,現在の日本の民法学の中には全く使い物にならない法理論しかない。

たぶん,民法学者は,物体としての土地や空間や生物の本質を理解しようという努力を一切せず,世間話レベルでの幼稚な観念だけを所与の前提として民法理論を構築してきたのだと思う。しかし,そのような所与の前提なるものは空想の一種に過ぎないので,理論の大前提が空疎であり,理論体系全体が実は無意味なものとなってしまっていると言わざるを得ない。

民法の財産権に関する通説は根本部分から一旦廃棄して,全部つくりなおしたほうが良いと考えている。

民法学の中には適切な学説が全くない。ないものはない。仕方がないので,そういうことについても研究することにし,「艸-財産権としての植物」というタイトルで論文を執筆し,法律論叢誌上で連載を続けている。

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