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2016年3月15日 (火曜日)

倉本一宏『蘇我氏-古代豪族の興亡』

下記の書籍を読んだ。

 倉本一宏
 蘇我氏-古代豪族の興亡
 中公新書(2015/12/20)
 ISBN-13: 978-4121023537

ちょっと深みに欠け,主観的な感情移入が激しすぎるのではないかと思った。

読み物としては面白いし文章も巧みなので,ベストセラーになる理由は非常によくわかる。さすがだと思う。

しかし,学術書ではない。

(余談)

本書とは無関係な素人の感想に過ぎないが,蘇我氏の宗家ではなく分家のような氏族は別の氏族名を有していたかもしれない。

藤原氏については,葛城または葛井との関係を示唆する文献が既に多数ある。

さて,蘇我と葛城とは全く無関係なのだろうか?

『新撰姓氏録』の備考欄にある伝承を丁寧に読み,その伝承の真偽をひとまず置いて形式的な基準に従い名寄せをしていくと,様々な疑問が生じてくる。

仮に伝承それ自体が捏造だったとしても,少なくとも『新撰姓氏録』を編纂した時点ではそのように捏造することに大きな政治的・社会的な意味があったからこそそうしたので,そういう観点から分析し直してみる必要性は極めて大きいと考える。

歴史学から情報学への転換が求められているということなのだろう。

(余談2)

こちらのほうも読んでみた。

 吉村武彦
 蘇我氏の古代
 岩波新書(2015/12/18)
 ISBN-13: 978-4004315766

本書の著者が同じ大学の教授なので身びいきじゃないかと誤解されると困るのでちょっと躊躇してしまったのだけれども,事実として,こちらのほうはれっきとした学術書だと言える。

どちらか一方を読むというのなら,こちらのほうがお勧めと言える。

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