Luc Laporte & Chris Scarre (eds.), The Megalithic Architectures of Europe
下記の新刊書が届いたので,早速読んだ。
Luc Laporte & Chris Scarre (eds.)
The Megalithic Architectures of Europe
Oxbow Books (2016)
ISBN-13: 978-1785700149
http://www.oxbowbooks.com/oxbow/the-megalithic-architectures-of-europe.html
素晴らしい労作だと思う。
欧州の古代巨石文化に関しては非常に多数の書籍が刊行されており,その中の主要なものは全て読破している。
本書は,従来のものと比較して,データの豊富さと緻密さにおいて群を抜いており,当然のことながら最新の情報が収録されている。現時点で最も詳しいものではないかと思う。
考察内容に関しても,近年の新たな論点に関する議論を深め検証するというだけではなく,かなり野心的な内容を含むものとなっている。
例えば,比較文化論または比較社会論との関連では,イースターの巨石文化との比較をしながら,誰がどのような目的で巨石建造物を構築したのかについて多角的な検討を試みており,まだ仮説の段階とはいえ非常に参考になった。
自分では可能な限り先入観を排除し,「素心」で学問に励みたいと思いつつもなかなかそういうわけにはいかず,既成の観念にとらわれ自我や欲望に惑わされることが多い。その分だけ洞察力がひどく濁る。先人が苦心して研究を積み重ねて世に送り出した優れた成果物を読むのには,そうした自分の心の中にあるバイアスを少しでも矯正するために大いに役立つ。本書は,その意味でも,自分の反省点のようなものを発見することのできる要素を多数含んでおり,助かったというような気持ちになる。
古代のことに関しては,タイムマシンがあるわけではないので,全て想像によらなければならない。その想像は各人各様それぞれ自由だ。権威なるものはほとんど意味をなさない。
しかし,恣意的であってはならないと思うし、欺瞞的であることは許されない。
今後も,可能な限り公平に考察を続けたいと思う。
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